&NWEC 国立女性教育会館を上手に活用するためのWebマガジン[アンド・ヌエック]

男女共同参画推進中!(全国の活動・取組紹介) 

男女共同参画推進中!(全国の活動・取組紹介)

デートDVやレイプドラッグについて、学びながら主体的な情報発信を行っている堀口ゼミ。 その一環として作成したレイプドラッグ啓発パンフレットについて、堀口准教授とゼミ学生の皆さんへ、作成の意図や目標について伺いました。

NWECでも発信しました

NWEC職員(以下、N):明治大学堀口ゼミでは学びの実践的活動として、デートDVやレイプドラッグに関する
様々な情報発信を行っていますね。

堀口先生(以下、先生):はい。私のゼミではここ数年NWEC男女共同参画推進フォーラムでのワークショップ
出展・ワールドカフェでの発表の他、デートDVをテーマとしたオリジナルドラマの制作など、積極的な発信を
しています。

N:毎年夏に開催されるNWECフォーラムは3日間の会期で千名以上が参加する大規模なイベントですが、大勢を
前にしての発表はいかがでしたか。

ゼミ学生(以下、学生):3年生が中心となって運営をしたのですが、発表との両立は大変でした。
フォーラムで特に印象的だったのは、最終日の「多世代ワールドカフェ」です。親のような年上世代の方が大
勢集まっている会場に圧倒される中で、若い学生の自分が何を話せばよいのかと始めは心細く感じましたが、
私たちのデートDVやレイプドラッグに関する発表に対し、皆さん真剣に耳を傾け関心を持ち、多くの質問をし
てくださいました。

学生:同時に感じたのが、このワールドカフェは多様な背景や事情を抱え行き場のない人たちが話をできる場
所としての役割も果たしているということ。今回そういう場所に参加し、ジェンダー問題に関心を持つ多くの
方と議論できたのはとても貴重な経験でしたし、一瞬の出会いからいろいろなことを教わった気がします。

先生:さらに今年度は、4年生が卒業制作としてレイプドラッグに関する啓発パンフレットを作成しました。
1000部印刷し、学内外の関係各所にもお配りする予定です。

ワールドカフェ発表の様子(4年生)

参加者の世代や地域は様々

ワールドカフェ発表の様子(3年生)

私たちがパンフレットを作った理由

N:パンフレットの原稿を拝見しましたが、被害の当事者だけでなくあらゆる人に対して必要な情報や知って
おきたい知識がコンパクトにまとまっています。これだけの内容のパンフレットを就職活動などと並行して
作成するのは大変だったかと思いますが、なぜ啓発パンフレットという発信方法を選んだのでしょうか。

学生:ちょうど卒業制作のテーマを決めるころに、レイプドラッグに関する圧倒的な情報格差が被害者に不
利な状況を生み出している現状を知ったのがきっかけです。
レイプドラッグとは加害者により計画的に服用させられ、かつその作用が周囲にも被害者自身さえも気づか
れにくいという特徴があるにも拘わらず被害者側が責められがちですが、レイプドラッグの情報を知ってい
れば、断じてそうではないことがわかってもらえるでしょう。
この状況を打破したいという思いからパンフレットの作成を決め、間に就職活動を挟みながら、開始から完
成まで4年生6名で約1年かけて作成しました。

N:レイプドラッグに関する報道が日本ではほとんどされていない中、情報収集はどのように行ったのでしょ
うか。

学生:堀口先生からゼミで配布される資料やインターネット上の情報の他、専門家の先生方にお話を伺いま
した。

先生:今の日本には報道は少ししかなく、レイプドラッグの情報もあまりありません。医薬系の論文がいくつ
かある程度です。大学のある都内から大阪の専門の医師を訪ねるなど、学生たちも私も大変な苦労をして資料
をかき集めました。それでも誰かが調べ、広め、声を上げていかないと、潜在的な被害者は増える一方です。
レイプドラッグは無味無臭で、さきほど学生がお話ししたように被害者自身でさえ被害にあったことに気づか
ないケースも少なくないのです。「レイプドラッグによる被害者をこれ以上生まない」。そういう信念で学生
達は、多忙な学生生活の合間を縫って完成にこぎつけました。

みんなに知ってほしい、レイプドラッグ・デートDVのこと

学生:レイプドラッグなんて自分には無縁、と考えている方たちにこそ、このパンフレットを手に取ってほし
いと思っています。
レイプドラッグ、そしてこの問題の根源であるデートDVは誰にとっても他人事ではありません。自分の生活で
起こりうる問題であること、自分の子供が被害者となる可能性があることを知ってもらいたいです。
とはいえ、自分がほしい情報だけを選んで得る現代で、興味のない方へ情報を届けるのは難しく、広く発信で
きているとはまだまだ言えない状況です。より広く発信できる方法をさらに考えていくのが、このゼミの今後
の課題かと思います。

N:レイプドラッグを学ぶ側から発信する側になって、感じたことはありますか。

学生:元々ジェンダー問題への関心があってこのゼミで学んでいるので、レイプドラッグやデートDVには理解
のある方だと思っていました。けれど、いざ伝える側になると自分にもたくさんのアンコンシャス・バイアス
(=無意識の偏見)があったことに気づかされました。まずはこういった先入観を自分も持っているのだと、
意識することを心掛けるようになりました。

先生:大事な視点だと思います。悪気がなくても自分の話が相手を傷つけているかもしれないと常に意識して、
多様性が重視されるこれからの社会で自らも多様性に対応できる考え方を身に付けていってほしいですね。

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その後、無事完成したパンフレットのお披露目を兼ねたゼミ報告会へお邪魔しました。

マスコミの取材記者も何名か出席しており、レイプドラッグへの関心の高さがうかがえました。
ゼミ生の皆さんは早くも発信に向けての「次の一手」を考えはじめています。彼ら彼女らの努力が実を結び、
デートDV・レイプドラッグの知識が社会に広まることを願ってやみません。(N)

完成したパンフレット

ゼミ報告会の様子