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コラム

「女性にやさしいまちは、誰にとっても優しい」萩原 なつ子(2018.12.1)

萩原 なつ子 立教大学教授

 2014年5月、「日本創生会議」は「ストップ少子化・地方元気戦略」として「消滅可能性都市」を発表した。全国1799市区町村のうち896の自治体が消滅するというものだったが、東京23区 で唯一豊島区が指定された。
 高野区長は「消滅可能性 都市緊急対策本部」を立ち上げ、重点目標に「女性に優しい,女性が住みたくなる,来たくなるまちにする」を掲げて、F1世代(20代、30代)女性たちの声をまちづくりに取り入れるために「としまF1会議」を設置した。

 私は座長として「としまF1会議」が区の施策として実行可能な企画提案をすることを意識し、会議全体を次のようにデザインした。

 ①メンバーは当事者意識を持って積極的に取組む女性を募る
 ②テーマはメンバーが選定
 ③行政の作成した素案を修正し、報告書にするという方法をとらない
 ④調査・研究に基づいた裏づけのある提案をする
 ⑤行政職員もメンバーとして議論に加わる
 ⑥提案を、年度の豊島区の事業予算に反映させ、具体的な施策として事業化する

 区長への最終プレゼンテ—ションを経て、最終的に11事業8800万円が予算化され、事業が展開された。
「F1世代の意見が直接、区の予算に反映されたのは区制始まって以来の画期的なことだ」(高野区長談)。
 メンバーは、地域づくりの主体は“自分でしょ!”という意識を持ち、自らが何かを変える主体として行動すること、調査研究に基づいた提案の意義、政策立案過程に女性の視点を反映させること、女性の意思決定過程への参画の重要性を学んだ。
 豊島区は「女性にやさしいまちは誰にとっても優しい」という「としまF1会議」の提言にもとづき、2016年4月に 「女性に優しいまちづくり課」を設置。2017年からは「わたしらしく暮らせるまち」を目指して、「としま暮らし会議」がスタート。
 老若男女が参加、参画するユニバーサルな地域づくりが着実に進められている。

※参考図書
『としまF1会議-消滅可能性都市 270日間の挑戦』萩原なつ子編著、 2016年、生産性出版

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