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コラム

「 勇気をもって 」映画「 ドーバーばばぁ 」中島久枝(2017.7.1)

中島久枝 監督 

映画「 ドーバーばばぁ 」のチラシを持つ中島久枝氏の写真

 あるボランティア活動での昼休憩。
 どこからか、「還暦前にドーバー海峡を泳ぎたいのよ!」という声が
私の耳に飛び込んできました。早速その声のもとへ近づくと当時面識のなかった大河内さんがいたのです。
 思い切って「話を聞かせてください!」と、雑談の輪に割って入ったのでした。

 それがきっかけで、約3年間におよぶドキュメンタリー映画「ドーバーばばぁ」の撮影が始まりました。
 何のお付き合いもない人たちが、私の持つカメラの前で“水着姿をさらけ出すことができるのだろうか?”“本音で語ってもらえるのだろうか?”と最初は不安で一杯でした。しかし、そんな不安も数回撮影をするうちに払拭されたのです。ただ、織姫たちの家庭内にカメラが入り込むことには、みなさん抵抗があったようです。
 あるご主人は挑戦に反対しておられ、インタビューに応じていただけない状態でもありました。やっと説得をして機会を頂いたときは、まずご主人の趣味を長々と撮影し(あまり映画の中では使えませんが)、最後に奥様のチャレンジについて聞くといった手法をとってみました。
 ドーバーを泳ぎ切った直後にメンバーがご主人へ電話をすると、優しい労いの言葉をかけてくれたそうです。
 映像の裏には織姫たち家族の目に見えない協力が数多くあったことを、私はカメラを通して感じていました。
 私自身、家族や周りの方たちの協力や助けがあったからこそ、最後まで心がとぎれることなく映画を仕上げることができたのです。

 2011年、東北地方は大災害に見舞われました。私は映画の最終仕上げ中でした。
 大きな津波の映像がテレビに流されるたび、果たしてこの映画を上映してよいのだろうか、と悩んでいました。しかし上映してみると、多くのお客様が
会場に足を運んでいただき、織姫たちのパワーをもらって帰ってゆく姿を知りました。

 ドーバー海峡遠泳協会のモットーは、
「どれだけ早く泳いだかの記録ではなく、泳ぎつく対岸まで自然に身を任せ、伴走する船頭の指示に従い、ひとかきひとかき前のみを見据えて泳ぐ」

 私たちの人生そのものではありませんか。

「人生の最後まで、自然に身を任せ、周りの人々の助けをかりながら、確実に一歩一歩前を向いて歩く。」

 私はこの織姫たちから並々ならぬ勇気と希望をもらいました。

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