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コラム

「 未来から逆算した女子のライフデザイン教育を 」漆紫穂子 (2018.6.1)

漆紫穂子 品川女子学院 中等部・高等部 理事長

品川女子学院中等部・高等部理事長 漆紫穂子氏の写真

 日本には、第一子出産年齢前後で女性の労働力率が下がり、その後復職して折れ線グラフに谷間が出来るM字カーブ現象があります。最近この凹みが浅くなってきたことが報じられていますが、問題は中味です。平成28年国民生活基礎調査のデータでは、子どもの年齢が上がるにつれて働いている母親の割合は増えていますが、正規雇用は2割台のままです。また、世界経済フォーラムが発表しているジェンダーギャップ指数では、世界144カ国中114位と、過去最低を更新してしまいました。

 私は28歳で実家が運営している当校に赴任しました。副校長だった母を亡くし、学校改革を引き継ぎ、44歳で校長になりました。その上で「後悔していることがあるか」と聞かれれば、「自分の子を持つことを選択肢のひとつとして考えてもみなかった」ということです。
 結婚をしたのは24歳。まだ他校に勤務していた時のことです。3人姉弟で育ちましたので、当時は「子どもは3人ほしい」などと気軽に口にしていました。しかし、日々の仕事に取り組む中、「産む」というイメージを持つ時間はなく、産休や育休で学校を不在にするという想像すらできませんでした。
「自分はどうしたいのか?」と考えて選んだならいいのです。しかし、私達の世代にはどちらかをあきらめた人、また、考える間もなかった人が多くいました。私は、生徒たち世代にそのような後悔をさせたくありません。

人口減少社会の日本では、まだ水面に出ていない「女性の力」は、「含み資産」と言えるでしょう。
私達の学校では大学へ進学する生徒がほとんどですが、人生のターニングポイントを「28歳」と設定、イメージし、そこから逆算した女子教育を行っています。出産や育児などでキャリアが中断しても、望めば元の立場に戻れるように早いうちから準備をし、資格や専門性、起業など「復職力」をつけておきたい。女子には「キャリア教育」だけではなく、出産・育児も視野に入れた「ライフデザイン教育」が必要だと考えています。

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