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コラム

「 男女共同参画をめぐる私点、視点、始点 」町田智子(2016.5.13)

町田智子 朝日新聞社取締役西部本社代表

 2013年6月、西部本社代表として福岡に赴任以来、「男女共同参画」について考えさせられる機会が増えた。もちろん新聞社の代表が女性という例は全国でも珍しい。その上「土俵問題」ならぬ「福岡ロータリークラブ入会問題」が、赴任前から地元でかなり話題になっていた。歴代の男性本社代表が会員とはいえ、80年の歴史を持つ同クラブに女性の入会例はない。「紳士の社交場」という拘りから抵抗感を持つ方もおられたようだ。着任早々挨拶回りや会食の席で「本当に申し込むんですか?」と問われることもしばしば。戸惑いつつ淡々と申し込んだが、想像以上に多くの方々のご尽力を得て、晴れて?入会できた。翌朝の西部読売新聞には目立つ囲み記事が載り、あらためて関心の高さに驚かされた。
「案ずるより産むが易し」。難産だったにも関わらず、入会後は気持ちよく迎えていただき、たくさんの良縁を得た。「総論賛成、各論反対」も突破してみると、案外その先は拓けていくと実感した。奇しくも5月のロータリー会報誌で、国際ロータリー会長が女性の入会が始まって30年、十分進まぬ現状に、「女性の才能、能力、人脈を見逃すことの損失」と門戸開放をあらためて訴えている。その意味では口火のひとつにはなったかもしれない。
最近話題の保育所問題や男性の意識、働き方など、女性の参画を阻むハードルは数多ある。2014年7月アンスティテュ・フランセの依頼で、福岡で日仏討論会「労働市場における女性の社会進出」の司会を引き受けた。歴史学者エマニュエル・トッド氏をはじめ、内外のパネリストとやりとりしながら、とくに印象深かったのは欧州の育児・教育支援の手厚さや男性の家事や育児への関わり方。彼我の差に愕然としてしまった。
「女性のロールモデルとして話を」と大学や様々な会で頼まれることも多い。出張や深夜帰宅が多く、30年以上家事・育児の大半を夫が引き受けてくれたおかげで、何とか歩んできた稀な例だけに参考になるのか、いつも不安になる。6月末からは単身赴任を終え東京に異動、また古巣の企画事業と女性プロジェクトを担当することになった。
「女性を元気にして社会を元気に」との観点から、同プロジェクトは外部ともコラボしながら様々な展開を検討していく。家庭内の「家事参画」促進も自らの課題だ。私にとって、「男女共同参画」との関わりも新たなスタートとなる。

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