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コラム

「 ボスニア・ヘルツェゴビナと男女共同参画 」山崎日出男(2016.1.15)

山崎日出男 前在ボスニア・ヘルツェゴビナ日本国大使 

 旧ユーゴスラビアが分裂してできたボスニア・ヘルツェゴビナというと、日本ではまだ紛争のイメージが残っていますが、1995年の停戦から既に20年以上が経過し、現在では普通に街を歩ける平和な国になっています。

 この地域はローマ帝国の分裂以来、文明の接点だったところで、4世紀以上にわたるオスマン帝国の支配の後オーストリア帝国の一部になるなど複雑な歴史を経て現在に至っています。そのため国民の民族構成をみるとモスレム系、セルビア系、クロアチア系の3民族が中心になっていますが、時には民族間の緊張が高まり、紛争が生じてきました。また、停戦から20年以上経過したにもかかわらず、いまだに「平和履行委員会・上級代表部」という国際組織(戦後日本のGHQに似た組織)が監視し、数百名のEU軍が駐留しています。

 男女共同参画の状況を見ると、バルカン諸国では、大家族制の伝統から父権的な傾向が残っているため、一般的にまだ男性優位の考えが残っています。しかしながら、最近では男女共同参画への努力も見られ、「ジェンダー平等法」が定められ、「ジェンダー行動計画2013~2017」が閣議で決定されています。この計画は、1995年の「北京行動計画」、2007年のEC(Council of Europe)勧告「ジェンダー平等のための基準とメカニズムに関する勧告」を踏まえて定められたものです。ただ、その内容を見ると、総合的ではありますが日本のような緻密なものではなく、①政府機関において男女共同参画に向けての計画及び行動(雇用、保険・福祉、教育、DV防止など)、②男女共同参画実現に向けてのシステム作り(監視、モニタリング、啓発)、③様々なレベルでのパートナーシップ(地域レベル・国際的レベルでの協力、NGOやアカデミック・レベルでの協力など)の3 章立てとなっています。

 ボスニアは、一人当たりGDPは5000米ドル弱の中進国とされていますが、他のバルカン諸国とともにヨーロッパ地域の最貧国で、手取りの平均月収が400ユーロ、失業率30%弱(若年層は50%以上)という厳しい状況にあります。このような中で、UN WOMENの事務所が再開されるなど国際的な協力体制もできつつあり、日本政府もUN WOMEN本部に拠出したり、ODAの草の根支援のスキームを使って積極的に支援するなど国際貢献に努めているところです。

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