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男女共同参画推進中!(全国の取組・活動紹介)埼玉県立春日部女子高等学校

2020年03月15日

「国立女性教育会館」でのフィールドワーク~SDGsゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」~

埼玉県立春日部女子高等学校 教諭 佐久間 隆
1.はじめに

 2019年12月20日(金)、埼玉県立春日部女子高等学校第2学年生徒13名と引率教諭1名は、本校の「総合的な探求の時間」の一環として国立女性教育会館を訪問し、アーカイブセンターにおける「女性と医学展」を見学した。その後、館内各所のパネル展示で、ジェンダー平等の現状等について、懇切丁寧な解説を拝聴し、男女共同参画社会の実現に向けての理解を深めることができた。
 以下は、本校がなぜこのような教育実践を行っているかを簡潔に述べたものである。

2.埼玉県立春日部女子高等学校の概要

(1)生徒の現状
 本校は1911年、全国で3番目の実科女学校として開校した。現在までに卒業生は27,000人を越え、政治、経済、芸術、教育、医療等、様々な分野で活躍している。目指す学校像は「高い志を持ち、夢をあきらめない生徒の育成を目指す伝統ある女子の進学校」である。生徒は、樹木に囲まれた環境の中、のびのびと自分らしさを発揮しながら充実した高校生活を送っている。ほとんどの生徒が進学希望で、真摯な態度で毎日の授業に取り組んでおり、卒業後は国公立・私立の有名大学に多数進学している。また、学校行事や部活動にも意欲的に参加しており、正に、「文武両道」が貫かれた堅実な進学校と言える。しかし、現状に満足することなく、「真の進学校」を目指し、土曜公開授業を実施し、早朝・放課後・長期休業中に進学補習を多数開講し学習環境を充実させている。

(2)「総合的な探究の時間」の取組
 本校では2018年度から「総合的な探究の時間」を実施している。この時間は、教科や科目の枠組みを超え生徒が主体的に課題を設定し、情報の収集や整理、分析を進め、課題を解決していくことを目標としている。
 1年次ではクラス単位で地元の企業と連携し、「地域振興」を中心に課題解決に取り組み、ポスターによる発表を行い、最終的には各自で論文を作成した。
 2年次である今年度は、より広い視野に立ちグローバルな課題であるSDGsに取り組むこととした。

(3)春日部女子高校第2学年のSDGs
 2015年、国連持続可能な開発サミットでSDGs(持続可能な開発のための2030年アジェンダ)が採択され、世界中で2030年までに貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平等、平和的社会などに取り組まなければならず、日本も政府が中心となり、企業、地方公共団体、大学、高校など幅広い団体がすでに行動を起こしている。春日部女子高校も2学年の「探究」のテーマとして極めて的確であると考え、また、1学年次のノウハウを生かし、海外の高校や地方公共団体、NPO法人や民間企業、法律事務所など幅広い25の団体と連携し、次の通り年間計画を立案し実施した。

【1学期:情報収集】
 ①講演会「SDGsとは」講師、一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト
 ②SDGs17のゴールについての動画視聴
 ③SDGs理解促進ツール「ひとこと多い張り紙」17枚の作成
 ④希望調査によるグループ分け(自分がどのゴールに興味があるか)
【夏期休業:課題分析】
 1学期の希望調査をもとに、2学年320名を25のグループに分け、SDGsに取り組んでいる各企業、団体とディスカッションを実施。
 *国立女性教育会館を訪問した13名は、ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」について探求することとなり、法律事務所と連携し8月19日に弁護士(女性)から、ハラスメントとDVについて、判例に基づいた講義を2時間30分ほど実施。
【2学期:課題分析、仮説構築、検証】
 ①夏期休業中のディスカッションを基に各グループで研究・課題解決の提案を行う(必要に応じて外部講師と連絡を取り合う)
 ②11月28日 探究の成果をポスターにまとめて校内外に発表
 ③12月20日 探究を深めるためのフィールドワークの実施
 *ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」13名、国立女性教育会館を訪問
【3学期:アウトプット】
 各自が最終論文を作成

3.むすびに

 SDGsゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」を選択した13名が探究を深め、最終論文を作成するに当たり、男女共同参画社会の形成を目指す国立女性教育会館で行ったフィールドワークは、たいへん参考になった。館内パネル展示の統計資料で目の当たりにした日本社会が、ジェンダー平等の実現とはほど遠い現状であることを理解した生徒たちは、意欲的にハラスメントやDV等、各自が設定した課題について、その解決策を論文にまとめた。今回の国立女性教育会館での学習は、短時間ではあったがたいへん有意義で貴重な体験であった。
 最後に、お忙しい中、今回のフィールドワークを快く受け入れていただき、懇切丁寧な解説までしていただいた国立女性教育会館の教職員の皆様に心より謝意を表したい。

《資料:生徒の感想》
 今回、国立女性教育会館を訪れて、全国には未知の女性問題が山積していることに改めて驚かされました。たくさんのパネルや資料で特に印象深かったのは、教育現場での女性校長の少なさです。また、政治分野での女性の立場が低かったり、いまだに女性総理大臣が出ていないこともおどろきました。教育現場や政治の世界で女性の存在が少ないことが、女性の意見が尊重されず、男尊女卑になってしまうのかと考えました。女性活躍社会と言われていますが、女性問題は数え切れないほどあります。それらを一つ一つ確実に解決していくことが女性が暮らしやすい社会を作る一番の近道だと思います。