開館45周年記念理事長インタビュー(第4回)

開館45周年記念理事長インタビュー(第4回)

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 開館45周年記念理事長インタビューの第4回は、2020年の市長選挙で全国史上最年少の女性市長として就任した徳島市長の内藤佐和子さんです。
 徳島市は徳島県の北部に位置し、阿波おどりでも有名です。自然豊かな都市で、市の中心部には市の象徴ともいえる眉山(標高290m)があります。
 東京の大学に進学後、帰郷し、まちづくり団体「徳島活性化委員会」の活動に力を入れていた内藤さん。「若い人や女性の思いをもっと出せるような政治、行政にしたい」という気持ちに突き動かされ、市長選挙へ臨みました。
 市長就任後は、ジェンダー平等、待機児童ゼロなどの子育て世帯の支援、「パートナーシップ宣誓制度」の拡充などの政策を次々と打ち出しています。2021年3月には、在日米国大使館と在駐大阪・神戸米国総領事館から「勇気ある女性賞」を授与されました。同年11月には、大学、経済団体、市民団体などの多種多様な団体で構成する「徳島市男女共同参画推進ネットワーク会議」を設立しました。
 今回は、ジェンダーギャップの解消を目指した取組や、首長として男女共同参画社会の実現を進める上での工夫をお聞きしました。

— 男女共同参画社会を実現するということ、その重要性を職員・市民の方に伝えていく際に工夫されたことを教えていただけますか。

内藤:選挙の時からジェンダーギャップの解消を訴えてきました。市長に就任してからは、DE&I(Diversity Equity & Inclusion:ダイバーシティ・エクイティ・アンド・インクルージョン)という、あまり耳慣れない言葉も市職員に伝えています。
 特に、市職員に伝えたり、共有するためには、人事や制度の見直しが一番分かりやすい部分だと思います。私が就任するまで市の職員は旧姓の使用が認められていなかったんですね。だから、そこはかなり早い段階で見直しました。できることは早く取り組むということを、態度で示していくことは重要だと思っています。市長就任の翌月には、市役所で初となる女性部長を誕生させました。また、それから毎年、順次、教育次長や消防・防災の担当課の管理職に女性を登用してきました。特に消防や防災といった分野は、あまり女性が登用されなかった分野ですが、こうした分野でも女性を登用するんだということを担当部局にはっきりと伝え、その結果、職員にも男女共同参画のマインドが徐々に醸成され、女性の登用も進んできています。
 市民に対しても姿勢は同じです。徳島市男女共同参画推進ネットワーク会議と連携し、男女共同参画の推進やジェンダーギャップの解消に向け、大学生と徳島で働くロールモデルとの意見交換を実施しましたが、私自身も参加し、徳島市の現状やジェンダーギャップの状況についての講演を行ったり、学生の皆さんと直接話をしたりしました。男女共同参画社会の実現には、ネットワーク会議に参加している大学や経済団体、市民団体など多種多様な方々に関わってもらってやっていくということがすごく大事だと思っています。

内藤佐和子 徳島市長

— DE&IのE(Equity)を重視していらっしゃる理由を教えてください。

内藤:そうですね。市役所は「平等」を重んじて、本当の意味での「公平」がなされていないことが多いと感じています。例えば、女子中高生向けのプログラミング教育のプログラムを無料で開催したときに、「市長はいつもダイバーシティとか、男女平等とか言っているくせに、なぜ女性だけ無料なんですか」という声が出ました。そのような逆差別という意見、多少、波風が立ったとしても、それを逆に使ってきっかけにしていく。普通に考えたら、男性も女性も参加できるようにしたほうが絶対に批判は来ないじゃないですか。でも、そうすると男性のほうが多くなったりするんだよとか、そういうことを説明することによって、理解が深まる人もいます。議論が発生したら、敢えてきちんと向かい合って論理だてて話をすると納得してもらえる。そのようなやりとりをしていくことが必要だと思っています。首長は、選挙や有権者の反応などを考えて無難にやろうと思ったら、エクイティは入れない方がいいと思います。でも、それでは何も変わらないので、むしろ私自身は積極的にやっていくべきだと思っています。

— あまり関心のない層に男女共同参画の重要性を伝えなければいけないというのが首長のお立場だと思うのですが、市長として必要な態度とか取組はどのようなものでしょうか。

内藤:態度や取組としては、「言い続けること」が大事だと思っています。そうすると、「あっ、気にしなければいけないんだな」と思って人の意識が変わってくる。例えば新しく市の審議会を作るとき、もしくは委員の入れ替えをするときは、できるだけ女性や若者を登用しようとしていますが、今、4割近くは女性委員になっています。この前も、「市長、3割で良くないですか」と言われたんですけど、「できるだけ女性を出すようにする方針でしたよね」と伝えることなどにより、繰り返しマインドセットを行い、割合が上がってきました。例えば、都市計画とか、水道とか、普通にしていたらなかなか女性が登用されないので、そこも意識的にしていくことによって、ちゃんと変えていく。意識を変えていくことが一番大切だと思っています。
 あとは、批判されても倒れない、その覚悟が必要だと思います。女性だから、男女共同参画のこととか子育てのことばかり言っているといわれることももちろんあります。就任当初も、保育現場の実態から、待機児童解消に向けて、今本当に取り組むべきことは保育士不測の問題と捉え、保育園の建設補助を見直したことで批判があがったのですが、かわりに保育士の人材確保に取り組むことなどで、令和4年4月の待機児童数はゼロになりました。もちろん、男女共同参画や子育て支援以外にも、市政の課題解決に一つずつ片づけているところです。
 自分が何をすべきか、社会にどういうインパクトを与えられるかということを考えると、批判されても私は自分が正しいと思ったことをやり、理解を求めていくのみです。

萩原なつ子と内藤佐和子氏の写真

内藤 佐和子(ないとう さわこ)

1984年徳島市生まれ。2009年まちづくりグループ「徳島活性化委員会」代表。2010年東京大学法学部政治コース卒業。2011年に徳島市きらめく女性大賞受賞。2020年より現職。2021年に在日米国大使館及び在駐大阪・神戸米国総領事館から「勇気ある女性賞」を授与された。同年より内閣府「男女共同参画会議」の議員に就任。