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コラム

「フードスペシャリスト—新旧交代」五明 紀春(2019.11.15)

五明 紀春 女子栄養大学副学長 

女子栄養大学副学長 五明紀春氏の写真 

 フ-ドスペシャリスト資格(1998)は、食物栄養学専攻(栄養士コース)の女子学生たちの多くが取得する。試験範囲は食品官能評価・鑑別、食物学、食品衛生学、調理学・調理科学、栄養・健康学、食品流通科目など。製造、流通、販売、飲食サ-ビスなど、食産業の幅広い業務に関わる。

 食費に占める[加工食品+調理食品+外食]の割合(外部化率)は、20~40歳代単身者で60%に達している(総務省)。食も衣・住のように、やがて100%外部化する時代が来るかもしれない。女性の「社会進出」が最大の要因とされている。

 農畜水産業(川上)→食品製造・卸売・小売・外食(川中)→消費者(川下)の流れをフードシステムという。このシステムの川下に陣取っていた「専業主婦」こそ、食品情報の収集、鮮度・熟度の吟味、品質の鑑別、保存・衛生管理、献立・レシピ作成に精通した古き時代のフ-ドスペシャリストだった。それが、近年、この「専業主婦」たちが急速に消滅しつつある。しかし、人は毎日食べることに変わりない。そのための「専業主婦」の仕事を、社会が引き受けなければならない、というわけで、「専業主婦」の社会化が起こって来た。
 
 今、進行していることは、オ-ルド・フ-ドスペシャリストから、ニュ-・フ-ドスペシャリストへの「新旧交代」である。「食の外部化」とは、無償の行為が経済行為に吸収されていくことでもある。家事労働は、今や社会的に正当な労働対価を手にすることになった。
 今日、多くの女子学生が、ニュ-・フ-ドスペシャリストとして、「社会の台所」に「参画」していく道を選んだと言えるだろう。

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