NWECについて

コラム

「 開館40周年記念メッセージ 」大日向雅美(2017.9.1)

大日向雅美 恵泉女学園大学学長 

恵泉女学園大学学長 大日向雅美氏

 開館40周年、おめでとうございます。
 NWECが開館された当時、保育専門学校の講師をしていた私は新入生のフェローシップやゼミ合宿に何度か使わせていただきました。学生と一緒にさまざまな経験を重ねた楽しい思い出の場所です。
 それに加え、NWECは男女共同参画をテーマとした全国規模のシンポジウムや講演会などが開催される胸躍る場所でした。檀上の先輩諸姉のお姿を遠く見つめながら、その一言一句を漏らさず聞こうと全身を耳のようにしていました。日本でジェンダー問題が大きなうねりを起こしていた時、私にとっては博士論文の執筆に打ち込んでいた時でもありました。やがてそれが『母性の研究』として刊行されましたが、その最初のお披露目の場所がNWECでした。催事の時に参加者に提供された出展コーナーの片隅で、私は上梓して間もない拙著を積んで「私が初めて出した本です。読んでください」と大きな声で叫んでいたとか。だいぶ時を経て、私にも講演の機会が与えられるようになった頃、その時購入してくださった方が本を携えて私のもとを訪ねてくださいました。「あの時のあなたの必死な声が忘れられないわ」と言われました。NWECは若き日の私の憧れの場であり、ささやかな、しかし、とても大切なデビューの場所でした。
 あれから40年!日本社会もずいぶんと変わりました。男女共同参画や女性活躍に向けて法律や制度は整備されつつあります。 
 NWECに集った方々の尽力の賜物に他なりません。しかし、社会の現実はというと、課題が山積していることも看過できません。社会に蔓延している平等幻想のもと、問題が見えにくくなっているという危機感を感じることも少なくありません。これまでの私たち世代のジェンダー問題との闘い方を精査しつつ、いかに若い世代にバトンをつなぐか、その大切さを痛感する日々です。NWECの変わらぬ存在意義と新たな役割に向けた発展を心から願っております。

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