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コラム
「 おばさんたちのドーバー海峡リレー横断 」大河内二三子(2017.6.1)
大河内二三子 チーム織り姫代表
2010年9月 ドーバー海峡横断のスタート地点、早朝のシェイクスピアビーチは穏やかな海ときらきらした朝日で私を歓迎してくれました。
沖で待つ伴走船バイキングプリンセス号の船上ではチームの仲間が見守る中、船長からの指笛の合図で水温14度の冷たい海へ飛び込み、フランスへ向けて泳ぎだすのです。
直線で約34kmの海をクロールでひとかき、ひとかき進んで行きます。
スタートから暫くはドーバー港の岸壁に守られ波の無い静かな海が続きますが、外海に出た途端に大きなうねりが襲って来ます、ドーバー流の歓迎の挨拶です。
この先14時間程の海との格闘は辛くて厳しいものですが、反面わくわくするほど楽しいものでもあります。
チーム織り姫は立川市近郊に住む主婦6人で構成されています、水泳選手の経験者はいません。年齢は54歳~67歳どこから見ても立派なおばちゃんチームです。
こんな私たちに決まって「どうしてドーバー海峡を泳ごうと思ったのですか?」という質問が来ます。これは、主婦であり、働く女性であり、介護を必要とする家族を抱える、海峡チャレンジとは程遠いところで生活するおばちゃん達がなぜ?と言う意味です。
なぜでしょうか?
私の場合、介護が必要な父と母、脳梗塞の後遺症で半身麻痺の夫を抱え、日常の世話や病院の付き添いで自分の時間が中々取れない状況が長い間続いていました。
ドーバー挑戦の話をすると、家族が協力をして毎週木曜日を練習時間とすることができ、自分の目的のためだけに使える時間を得ることができました。自分のために時間を使い、自分の目標に向かう時間を満喫すると、介護や日常の雑事にも「よし!やるか」と新たな気持ちで向き合えるのです。
ドーバーの海岸で世界中から集まってくるスイマー達と共に練習し語り合うと、自分の知らなかった世界に触れることもできます、そしていつもと違う自分を発見することもあります。
メンバー達は、様々な葛藤の中で「自分」を持ち続けるためにドーバー海峡に挑戦しているのだと思います。
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