国際連携

国際協力機構との連携

実施報告

平成22年度 JICA国別研修タイ「人身取引に関する日タイ合同ワークショップ」

開催期間:平成22年11月8日(月)~22日(月)


平成22年11月8日(月)から11月22日(月)まで、平成22年度 国別研修タイ「人身取引に関する日タイ合同ワークショップ」が開催されました。

タイでは、人身取引の被害者保護と自立支援のために関係機関の連携協働を促進するプロジェクトを、国際協力機構(JICA)が実施しています。このプロジェクトの本邦研修を、昨年から国立女性教育会館が委託を受けて実施しています。本研修は、タイの人身取引被害者保護対策に携わる関係者を招へいし、両国の相互理解を深め、タイにおける多分野協働チーム(MDT)の連携機能・活動の強化に資する方策を検討することを目的としています。タイからはMDTに関する関係機関のメンバー15名が来日しました。

研修の前半では、人身取引対策行動計画2009に基づき、内閣官房、内閣府男女共同参画局、外務省、警察庁、法務省、厚生労働省、国際移住機関(IOM)の各機関の取り組みについての講義や自治体レベルの取り組みの視察、女性や子どもを対象にした公的・民間女性保護施設等の被害者保護支援活動や在日タイ人による支援活動の取組の見学、関係者との意見交換が行われました。11月9日から12日にかけては会館に滞在し、国立女性教育会館の人身取引に関する取り組みや、日本における女性関連施設の役割、専門職員による女性情報や相談員研修に関する講義を受けました。

1. 内閣府での講義1. 内閣府での講義

2. NWECの取組に関する講義2. NWECの取組に関する講義

3. 女性団体との国際交流3. 女性団体との国際交流

4. 会館職員とNWECボランティアとの交流4. 会館職員とNWECボランティアとの交流

5. 埼玉県警を訪問5. 埼玉県警を訪問

6. 厚生労働省の取組に関する講義6. 厚生労働省の取組に関する講義

7. 婦人相談所の視察7. 婦人相談所の視察

11月17日には、日本の関係省庁機関等の担当者、国際移住機関(IOM)、人身売買禁止ネットワーク(JNATIP)、研究者を迎えて、成果発表と意見交換会を開催しました。タイ側は、�代表団長スワン・プロンポン パトムタニ男性用保護職業支援センター所長によるタイにおけるMDTの取り組み、�シリソパー・テエンサムルアイ クレッタカーン女性用保護職業支援センターソーシャルワーカーによるタイのシェルター活動、�シリワン・ウォングキエットパイサンSR 法律事務所代表弁護士による法的救済について、それぞれ発表されました。出席者からはタイと日本の法的支援の違いやタイにおける労働搾取の実態についてさまざまな質問が出ました。

8. 成果発表を行う研修参加者8. 成果発表を行う研修参加者

9. 省庁関係者との意見交換会9. 省庁関係者との意見交換会

11月18日からは福岡に移動し、九州の民間団体の取り組みやタイ人ボランティアの活動にいついて話を聞いた後、11月20-21日は、久留米で開催された全国シェルターシンポジウムに出席しました。分科会ではタイの取り組みについて報告を行い、行政や民間シェルター関係者の方々から多くの質問や感想をいただきました。タイの参加者は、日本の民間団体が行政と協力し、対等な立場でDVに関する施策を進めていることに大変関心を示していました。

10.九州の民間団体の見学・講義10.九州の民間団体の見学・講義

11.全国シェルターシンポジウム11.全国シェルターシンポジウム

12.シンポジウム分科会での報告12.シンポジウム分科会での報告

11月21日には、九州のJICAセンターで評価会を行い、研修全体を振り返りました。参加者からは、
「日本の取り組みを理解することができ、関係者とのネットワークも深まった。」、「日本では、保護の現場で被害者の守秘義務を非常に大事にしていることを見習いたい。」、「保護の現場の方には、被害者の慰謝料・損害賠償請求等についても関心を持ってほしい」、「DVを社会問題として国民に認知させる日本の取り組みは、人身取引にも応用できると思う」、「日本の労働基準監督署や労働基準法について学んだことは大変有用であった。タイと日本の経験をお互い付き合わせることで被害者の役に立てると感じた。」、「日本のNGOのボランティアの質の高さや、タイ人ボランティアが参加し、在日タイ人とのネットワークも強化されていると感じた」、「技術、データ収集、自治体の仕組みは学ぶことが多い」、「日本で被害者がどのような経験を経て帰国するか学んだことは、タイの県職員としても仕事にいかせると思う。」、「日本の保護は、安全対策や心のケアに力を入れていると感じた」、「来年は日本のMDTと今年以上に意見交換する機会を得られるとよい」、「関係機関がNGOとも連携して、同じ基準を持って保護支援すべきだと感じた」など、さまざまな意見や感想が出されました。

今回の研修を通じて、参加者は、日本の人身取引対策行動計画に基づいた施策を中心に、被害者の保護と帰国支援に関わる両国関係機関の役割や協力関係、法制度の違い等について理解を深めました。今後は、帰国報告会も開催し、日本での研修の成果をタイのMDTにいかしていくことになります。両国の関係機関の連携を深めていくことは、人身取引の防止・被害者保護・加害者の起訴に貢献していくことになると思います。

本セミナーの実施にあたり講義や意見交換、見学受け入れでご協力をいただきました関係省庁、自治体関係機関、福祉施設および民間団体およびネットワークの皆様には、心よりお礼申し上げます。

※国立女性教育会館の人身取引に関する調査研究についてはこちらをご覧ください。

国際連携