国際連携

国際協力機構との連携

実施報告

令和3年度 課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」

開催期間:令和3年11月4日(木)、5日(金)、17日(水)、12月7日(火)、令和4年1月20日(木)、1月27日(木)


 国立女性教育会館は、令和3年11月4日から令和4年1月27日まで、国際協力機構(JICA)からの委託事業として課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」を開催しました。
 今年度も、コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、本セミナーはオンラインで開催されました。アセアン6か国(カンボジア、ラオス、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の主に人身取引被害の予防・保護・社会復帰の分野におけるプロジェクトのカウンターパート及びアセアン地域の人身取引対策に携わる関係者を対象とし、13名が参加しました。

令和3年度 課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」実施要項

1.趣 旨
 国際協力機構(JICA)がアセアン諸国において実施する、人身取引被害者保護・社会復帰・被害の予防の分野でのプロジェクトのカウンターパートおよびアセアン地域の人身取引対策に携わる関係者を対象としたワークショップ型研修を実施する。3年計画の1年目*。
 人身取引撲滅と被害者保護は一国のみで対応できる課題ではなく、国境を越えた広域的課題として対応するためにも、アセアン地域におけるネットワーク形成が重要である。参加者が日本を含め、互いの国の人身取引対策に関する取り組みについて相互理解を深め、特に予防、被害者の保護と自立支援に携わる関係機関の役割や協力体制等について把握し、参加者間で人身取引対策に取り組む機関の機能強化や連携、国を越えたネットワークの強化に資する方策を検討することを目的として行われる。

2.主  催    独立行政法人国際協力機構(JICA)

3.実施機関    独立行政法人国立女性教育会館

4.期  間    各国接続テスト:令和3年11月4日(木)、5日(金)
          オリエンテーション:令和3年11月17日(水)
          カントリーレポート発表:令和3年12月7日(火)
          発表セッション:令和4年1月20日(木)
          最終報告会と評価会:令和4年1月27日(木)

5.対  象    13名(男女)
 カンボジア、ラオス、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの人身取引対策の予防と保護の分野に携わっている者(中央・地方政府機関等)。

6.研修項目
(1)各国政府の人身取引対策及びコロナ感染症の拡大が、特に女性や女児を含む移住労働者や脆弱な立場の人々に与えた影響について理解する
(2)各国の市民組織団体による人身取引被害者支援策について理解する
(3)各国の人身取引被害・加害者訴追、被害者保護・帰還・社会復帰の一連のプロセス及び関係団体の役割及び好事例について検討する
(4)上記(1)~(3)を通して、国内及び国を超えたネットワークの強化に資する情報をまとめる

7.使用言語  英語(部分的に各国言語通訳あり)

8.日  程

*本研修の前身として、「人身取引に関する日タイ合同ワークショップ」(平成21~24年度)、「国別研修ミャンマー」(平成24~25年度)、「国別研修ベトナム」(平成24~25年度)、地域別研修「アジア諸国における人身取引対策協力促進セミナー」(平成24年~26年度)、課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」(平成27年~29年度)(平成30年~令和2年度)が、国立女性教育会館を実施機関として開催された。
 また、「メコン地域人身取引被害者支援能力向上プロジェクト」タイ関係者を対象にした国別研修が、JICA関西で平成29年度から31年度まで開催されている。

 オンラインで開催された本研修は、互いの国の人身取引対策に関する取り組みについて相互理解を深め、特に予防、被害者の保護と自立支援に携わる関係機関の役割や協力体制等について把握し、研修員間で人身取引対策に取り組む機関の機能強化や連携、国を越えたネットワークの強化に資する方策を検討することを目的としています。
 研修は、接続テスト(11月4日・5日)、ライブオリエンテーション(11月17日)、カントリーレポート発表(12月7日)、発表セッション(1月20日)、最終報告会と評価会(1月27日)で構成されました。研修員は通常業務と並行しながらの研修となりましたが、各国の被害者保護や職業訓練制度、コロナ禍がもたらした女性に対する影響や法的課題等について活発な議論が交わされました。

11月17日(水) オリエンテーション

 NWEC大会議室からZoomのオンラインライブオリエンテーションとして、6か国13名の研修員を繋ぎました。
 日本は11時開始ですが、時差のためカンボジア・タイ・ベトナム・ラオスは9時開始、フィリピン・マレーシアは10時開始となります。自己紹介、JICAの取組紹介、3か月にわたるセミナーの日程や学習管理システム(LMS)の使用方法、課題について説明を行い、国別・小グループ別に分かれブレイクアウトルームセッションを行いました。

学習管理システム(LMS)画面

12月7日(火) カントリーレポート発表

 カントリーレポート発表は、「パート1:各国の人身取引に関する政策と体制を含む基本的な情報」「パート2:各国の人身取引問題にCOVID-19が与えた影響」で構成され、研修員は事前に資料を作成し、報告を行いました。研修員からは被害者認定を行う機関や手続き、若年層や子どもに対する支援、異なる民族間や外国籍の被害者に対応する際の言語の障壁等について、多くの質問が出されました。

12月16日(木)~1月27日(木) オンデマンド学習

 LMS上に「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国際協力機構(JICA)の取組」と題した動画を掲載し、オンデマンド学習を実施しました。研修員は各自の都合に合わせ、JICAが実施しているジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための取組やメコン3か国(タイ、ミャンマー、ベトナム)で取り組んでいる人身取引対策プロジェクトについて学習しました。

JICAジェンダー平等・貧困削減推進室提供のオンデマンド動画

1月20日(木) 好事例と詳細報告発表

 好事例・詳細報告発表は、各国事前にテーマを設定して報告を行いました。当日の発表資料はあらかじめLMSに掲載し、研修員が事前に予習できるよう配慮しました。JICAのカウンターパートであるカンボジアのCambodian Women’s Crisis Center(CWCC)とタイ社会開発人間安全保障省人身取引対策部 (DATIP)から、マレーシアとフィリピンもGlobal ShepherdsとBatis Center for Womenからゲストスピーカーを招いて報告を行いました。コロナ禍で見えにくくなる人身取引被害、特に移住女性が直面した課題が共有されるとともに、効果的な職業訓練や相談のあり方、政府と市民セクターが連携した好事例や法的課題について活発な議論が交わされました。
 好事例・詳細報告発表には、ゲストスピーカーやJICA在外事務所のスタッフに加え、JICAのカウンターパートであるASEANの福祉関係の研修センター関係者も傍聴しました。参加者からはZoomのチャット機能も使用して活発な意見交換が行われました。

1月27日(木) 最終報告・評価会

 最終報告・評価会は、本研修の成果物となるアウトカムレポート(KCCP Final Report)の確認を行いました。本レポートは研修員リスト、アジェンダ、カントリーレポートと一部詳細報告で構成されます。研修の習熟度や応用度を測るため、研修で学んだことや今後の業務にどのように活かしていくか一人ずつ発表を行いました。評価会やアンケートでは「発表や討論の時間を増やしてほしい」というコメントが多く寄せられ、来年度以降のプログラムデザインに反映される予定です。

 人身取引は国境を越えて行われている深刻な犯罪であり、研修員からは今後の更なるネットワーク強化を望む声が多く聞かれました。本研修の成果は、今後JICAがASEAN地域で展開される人身取引プロジェクト等で活用される予定です。

記念撮影(研修員、JICA、NWEC)

 最後に、本セミナーの実施にあたり多大なるご協力をいただきました関係者の皆様に心よりお礼を申し上げます。

国際連携