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NWECグローバルセミナー

実施報告

平成28年度 NWECグローバルセミナー 女性の活躍促進に向けた取組み~ヨーロッパの経験から考える~

開催期間:平成28年12月2日(金)

開催場所:主婦会館プラザエフ(東京都千代田区)


 国立女性教育会館は、平成28年12月2日(金)に「女性の活躍促進に向けた取組み— ヨーロッパの経験から考える」をテーマとした平成28年度NWECグローバルセミナーを、主婦会館プラザエフ(東京都千代田区)において開催し、内外からの100名を超える申し込みがあり、活発な議論が行われました。

 第Ⅰ部基調講演は、デンマーク王国子供・教育・男女共同参画省大臣付チーフアドバイザー キーラ・アペル氏による「デンマークにおけるジェンダー平等—長く価値のある道のり」と題するデンマークの歴史的、法的、制度的取組みについての詳細な報告と、北欧諸国で機会均等を確保するために必要な、政治的原動力と社会の発展についての説明です。

第I部基調講演 第I部基調講演

 アペル氏は、政府の行動計画・男女共同参画政策の立案や策定に従事されてきた立場から、まず歴史的な動きを概観したあと、デンマークの現状を詳しく解説し、今後の課題を挙げて明確な結論としています。現在のような状況ができたのは、歴史的な取組みが基礎にあったこと、男女平等を推進する制度的な仕組みが強い機能を果たしたことが、詳しく説明されました。また、今後前進するための必要条件としては、①法律に規定されたジェンダー平等・社会福祉機関の存在、②経済的・個人的独立、③多様性およびジェンダー平等の利益について率直な議論を交わすことが不可欠であると結論づけています。
 特に印象深かったのは、今日のデンマークのジェンダー平等は、長い歴史を踏まえて達成されたものである、という指摘です。1915年の女性参政権に始まり、1924年の初の女性大臣の就任、60年代からの女性労働の活発化、70年代の制度整備、と小さな達成を積み重ねてきた女性運動や権利獲得のたたかいが、社会を変え、今日を築いたのだ、と。平等は、自然に生まれたものではなく、むずかしい道のりを経てようやく達成された主体的な取組みの結果である、という解説は、参加者に力強いメッセージと深い感銘を届けるものとなりました。

キーラ・アペル氏 キーラ・アペル氏

 第Ⅱ部のパネルディスカッションは、「女性の活躍促進にむけた取組み—EUと日本の課題」をメインテーマにした熱気あふれる報告と論議です。男女平等を牽引してきたEU諸国の先進的な取組みは、日本社会にとって、多くの示唆に富んでおり、デンマーク・ポーランド・日本の状況が、当事者によって明解に解説されました。

第II部パネルディスカッション 第II部パネルディスカッション

 チェニウィックス氏はポーランド政府に10年間勤務し、男女共同参画を担当。その後来日し日本における男女共同参画に関する研究を積み、現在、神戸女学院大学でグローバル教育に携わっている立場から「EU諸国におけるジェンダー主流化の課題」について説明されました。ローマ条約、アムステルダム条約、リスボン条約などを経てジェンダー主流化が達成されていく経緯とポーランドの事例紹介、ジェンダー平等に向けた欧州連合プロジェクトの概要が詳しく述べられます。

モニカ・チュニウイックス氏 モニカ・チュニウイックス氏

 池田氏は、仕事と家庭の両立、特に、男性の働き方・育児・労働環境についての専門家として「日本における女性労働の課題—男性の働き方改革に向けて」日本の概況を詳細なデータを駆使して明確にします。男女の働き方をめぐる日本の法政策は、80年代から仕事と家庭の両立をめざしていたにもかかわらず、現在もなお長時間労働のままである実態・女性パート労働者の問題点・介護離職者の増加など、具体的な事例を詳細に解説。男女の働き方改革に向けて、①すべての女性に開かれた就業機会を、②男性の働き方:魅力あるキャリアモデルの再構築、を提言し、「男性は家庭へ、女性は仕事へ」と結びました。

池田心豪氏 池田心豪氏

 ファシリテーターの大崎氏は、国連開発計画で、途上国のジェンダー平等と女性のエンパワーメントの推進を担当し、世界各地で女子教育、雇用・起業支援、災害復興などのプロジェクトを手がけた立場から、女性躍進のために何が求められているかの複雑なテーマを手際よくリードして、議論がいっそう深まりました。ディスカッションには、基調講演のアペル氏も参加し、熱い議論が続きました。

大崎麻子氏 大崎麻子氏

 質疑応答では、フロアから多数の質問が寄せられ、活発な議論がかわされました。アペル氏に対しては、デンマークでは97パーセント以上の子供が保育園に入っているという子育ての実情、保育士の男女比率・賃金、シングルマザーへのサポートの実態などについての質問です。いくつかの質問に対して、ジェンダー平等のためには、教育が最も大切であることを強調し、自分のキャリアと経済力を持つ独立した女性になることが重要だと、若い女性へ適切なアドバイスも加えました。池田さんには、男性の働き方を変えるには何が必要かという根本的な質問があり、正社員をふやすこと、誰にとっても働きやすい職場・会社にしていく不断の努力が求められるとの回答です。
 講演と議論を通して、男女平等を牽引してきたEU諸国の先進的な取組みが、日本社会にとって、多くの示唆に富んでいることがよく理解でき、日本のこれからの方向性が見えてきたと言える有意義なセミナーになりました。

<過去の国際シンポジウム>

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