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CSW

第61回 国連女性の地位委員会出席

開催期間:平成29年3月13日(月)~24日(金)

開催場所:国連本部(ニューヨーク)


開会式でスピーチするヌクカUN Women事務局長

「第61回国連女性の地位委員会(Commission on the Status of Women, 以下CSW)」が2017年3月13日(月)から3月24日(金)まで、国連本部(ニューヨーク)で開催され、会館からは研究国際室と事業課より計2名が日本政府代表団の一員として参加しました。第61回CSWは「変化する仕事の世界での女性の経済的エンパワーメント」を優先テーマとして、各国代表や国連の関係機関、NGO代表らによるステートメントの実施、ボランタリー・プレゼンテーションや閣僚級ラウンドテーブル、対話型専門家パネルがおこなわれました。過去のCSWの議題の進捗状況をはかるレビューテーマは、「女性・女児のミレニアム開発目標の履行における挑戦と達成」で、2015年に実施期限を迎えたミレニアム開発目標に対する各国の成果と残された課題が共有されました。

連日多数の参加者でにぎわう国連本部ビル

日本政府を代表して滝沢求外務大臣政務官が閣僚級ラウンドテーブルで議長を務め、非正規やパートタイムの仕事に関連して、女性の経済的エンパワーメントを促進するためどのような政策が取れるか、また、技術の進歩やイノベーションと女性の経済参画について、各国代表との意見交換に参加し、日本の取組につき発信しました。3月15日におこなわれた日本のステートメントでは、橋本ヒロ子日本代表が、長時間労働を規制しワーク・ライフ・バランスに配慮した働き方を目指す日本の取組みについて言及しました。また国際協力の分野では、日本は開発途上国に住む女性と女児の権利擁護に資する事業に、2018年までに30億ドル拠出する予定であり、ジェンダーに配慮した学習環境の整備や女性の生涯学習を重視している旨、強調されました。

橋本ヒロ子日本代表

3月14日午後には、大臣級会合を3分間中断して男女間の賃金格差を訴えるアピール行動がとられました。女性は平均して男性の賃金1ドルに対して77セントしか支払われていません。この数値を1日あたり8時間労働にあてはめると、6時間10分後の女性の仕事は無報酬と算出されます。『グローバル・ジェンダー・ギャップレポート』によれば、男女間賃金格差は世界のすべての国に存在し、(現行のままのペースでは)この格差を埋めるためには70年かかる予定です。こうした事実をふまえ議長が趣旨を説明し、デモンストレーションとして女性は他の雑誌を読む、ツイートするなど業務後を想定した行動をとり、男性は女性のために”Equal Pay NOW!#CSW61”とスローガン書かれた紙コップに、飲み物をサーブする演技をします。その後UN Womenが作成したビデオを上映し、このアピール行動は終了しました。

男女間賃金格差解消アピールのため配布されたグッズ

男女間賃金格差解消アピール(独政府代表団)

CSWの会期中には本会議と並行して多数のイベントが開催されます。3月17日午後3時からは、国連日本政府代表部と日本のNGO三団体が「女性の経済的エンパワーメントへの鍵(The keys to the economic empowerment of women)」をテーマとしてサイド・イベントを実施しました。連合、国際協力機構等の日本人有識者による報告に加え、フランス、オーストラリア政府からの報告がおこなわれました。会場は立ち見が出るほどの盛況で、日本の女性をとりまく現状に関する発信への関心の高さがうかがわれました。

活発な質疑応答がおこなわれた日本のサイドイベント

若者の参加も目立った

3月20日(月)からは後半の一週間が始まりました。先週火曜日に降った雪は道路端に積まれ、気温も0度と寒いニューヨークでしたが、天気に恵まれ快晴の日が続いた週でした。
3月20日は10時から13時まで「北京行動綱領及び持続可能な2030アジェンダの履行加速を支援するためのデータ及びジェンダー統計の利用可能性と使用の拡大(Enhancing availability and use of data and gender statistics to support accelerated implementation of the Beijing Platform for Action and the 2030 Agenda for Sustainable Development)」に関するインタラクティブ専門家パネルが開かれました。Andreas Glossner副議長の司会のもと4人のパネリストが登壇、持続可能な2030年アジェンダの実行を加速するには、ジェンダー統計の利用可能性と使用の拡大が必須であるとし、政府にデータ収集方法のアップデートや、協働や連携を強めていくことを強調しました。

晴天、でも気温は0度と寒いニューヨーク

3月20日専門家パネル

午後は、雪のために延期になった一般討論(General Discussion)が開かれ、カメルーン、バングラデシュ、シンガポール、そして各NGO団体が、今年のテーマについて各々の取組みを発表しました。
翌21日(火)からは、先週金曜日から始まった合意結論(Agreed conclusion) が連日行われました。「変化する仕事の世界での経済的エンパワーメント "Women's economic empowerment in the changing world of work")という今年のテーマは、議論の多い問題を含み、草案では6ページでしたが、各国からの修正や加筆などで20日(月)の時点ですでに30ページに膨らんでいました。また、合意文書を作るにあたり、グループ内でのディスカッションや、小グループでのディスカッションなど、いくつかのステップを踏みながら、各国のコンセンサスを得ていかねばならず、3月24日の決議まで連日連夜(時には朝まで)会議が続きました。無償労働や家事労働、職場でのハラスメントや暴力、同一労働同一賃金、経済政策での女性のリーダーシップなど、様々な角度から女性の経済的エンパワーメントを捉え、最終的には19ページのものとなりました。

合意結論に向けて白熱した討論が続いています

その後、Antonio de Aguiar Patoriota(ブラジル)議長は、62回・63回の議長にアイルランドのDavid Donoghue氏と、コロンビアとケニアから副議長を選出し、2週間にわたるCSW61は幕を閉じました。なお、CSW62回テーマは「農村女性と女児のジェンダー平等とエンパワーメントに係る課題と展望(Challenges and opportunities in achieving gender equality and the empowerment of rural women and girls)」です。

CSW61 閉会挨拶をする議長

また、期間中、会場の内外では、NGOによるサイドイベントや団体によるパラレルイベントが数多く開かれ、今回の優先テーマである女性の経済的エンパワーメントや、その中核であるSDGsの17の目標をキーワードに取組みの報告、パネルディスカッション、ワークショップなどが行われ、各会場とも立ち見、すわり見が出るほど賑わっており、世界中の人々のジェンダー平等への熱い意志と想いを感じた2週間でした。

JICAサイドイベント
JICA(国際協力機構)とOECD(経済協力開発機構)との共催サイドイベント「2030に向けて女性の経済的エンパワーメントへの壁を越える(Overcoming the barriers to women's economic empowerment for 2030)」

第61回CSWの詳細や合意結論については、下記UN Womenのウェブサイトに資料や動画が掲載されています。
(英語を含む国連の公用語での掲載)

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