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第69回 国連女性の地位委員会報告

開催期間:2025年3月10日(月)~21日(金)


 第69回 国連女性の地位委員会(CSW69)が2025年3月10日~21日の日程で開催されました。

第69回国連女性の地位委員会(CSW69)の概要

 CSW69は国連本部(ニューヨーク)にて対面で開催されました(一部、登壇者のオンライン参加有)。今期は、1995年に北京で開催された第4回世界女性会議(北京会議)から30年の節目の年(「北京+30」)で、副大統領(1人)、副首相(3人)、閣僚(97人)を含む世界の指導者と市民社会団体代表の約13,000人が集まりました。

ニューヨーク国連本部 ニューヨーク国連本部

 議長はサウジアラビアのアルワシル国連代表部大使が務め、開会式は、CSW69 開会式のために作曲された伝統音楽の演奏で始まりました。まず初めに、3人のユースによる発言があり、女児のSTEM教育、先住民女性の意思決定過程への参画、慈善ではない正義としての女性支援団体への資金供与について訴えました。続いて、国連事務総長、UNウィメン事務局長、ECOSOC議長らの代表が北京会議からの30年でジェンダー平等と女性のエンパワーメントの推進には前進がみられるものの、そのスピードが遅く、地域間の格差や差別の交差性とジェンダーの多様性にも取り組む必要があること、世界各地でみられるジェンダー平等と女性のエンパワーメントの成果に対する攻撃(バックラッシュ)に対して歩みを止めるのではなく、政府、市民社会、ユース、障がい者、先住民が連帯してジェンダー平等を押し進めていかねばならないとの強い意志が表明されました。
 開会式に続く一般討論、閣僚級円卓会合、対話型討論では、ジェンダー平等と女性と女児のエンパワーメントに向けて各国・地域で法改正や制度改革が行われているものの、政策の実施が遅れており、家父長制やスティグマの撲滅、女性の経済的自立、暴力の撤廃、政治や意思決定過程への女性の参画、紛争や気候変動、経済危機の影響を不釣り合いに大きく受けている女性と女児のエンパワーメント、変化の担い手としてユース、障がい者、先住民、男性と男児の重要な役割に対して投資をしていくべきという発言がありました。
 前期に引き続き、ユース(若い世代)との対話型パネルが本会議に組み込まれており、日本からもユース代表が参加しました。

国連本部に展示されていたCSW69のバナー 国連本部に展示されていたCSW69のバナー

日本の情報発信

 日本からは英利アルフィヤ外務大臣政務官が参加し、12日に行われた一般討論及び閣僚級円卓会合で、男女共同参画基本計画に基づき、女性の経済的自立を推進するための支援や民間企業に対する男女間賃金格差や男性の育休取得についての情報開示の義務化、女性・平和・安全保障(WPS)やオンライン上のハラスメントと及び虐待に対するグローバルネットワークに対する日本の取組について発言しました。

 ユースとの対話型パネル(14日)において、日本代表(ユース)横井桃子さんが発言し、北京会議から30年が経過した現在でも、性的暴力は根絶されておらず、日本では性的暴行やハラスメントの被害者の半数が19歳以下であること、被害を訴えることをせずに保護されていない若者がいること、CSWでの議論を現実的で永続的な変化に結びつけるための行動が必要であると訴えました。包括的性教育による「自分の境界(バウンダリー)」、尊厳、権利についての理解を促すこと、ワンストップセンターや安全な空間への予算配分、被害者へ実質的で構造的な支援や北京行動綱領に基づく政策や政策策定へのユースの参画を訴えました。
 最終日の21日には、初日に採択された政治宣言に対して、「ジェンダー」を「男女」に限定して解釈する、性と生殖に関する健康と権利についての言及がないことへの遺憾の意の表明、ジェンダー平等に対する攻撃に対する連帯の呼びかけ等、各国が意見を述べました。大崎麻子日本政府代表は、採択された政治宣言が各国の国家政策に組込まれていくことに期待を寄せつつ、安保理決議第1325号(女性と平和・安全保障の問題を明確に関連づけた初の安保理決議)及び北京会議において全会一致で合意された性と生殖に関する健康について盛り込まれなかったことは遺憾であると発言しました。
 13日には国連日本政府代表部と国内女性NGO三団体 (日本女性監視機構/国連NGO国内女性委員会/国際婦人年連絡会)の共催で行われたサイド・イベント「グローバルな聴衆に対して「女性・平和・安全保障」の構想を推進するためにNGOは何ができるのか?(What can NGOs do to promote the concept of “Women, Peace and Security” to our global audience?)」が開催され、長崎出身の被爆三世の大学生が平和教育の重要性を訴えるとともに、外務省からは、日本では災害への対策もWPSに包摂して取り組んでいることが紹介され、国際協力機構(JICA)からも、WPSは紛争下のみを対象とするのではなく、暴力によって権利を侵害されることがない社会を作るという観点が重要であることから、スーダンにおける女性を対象とした職業訓練による生計向上やパキスタンでの暴力被害者の社会復帰支援への取組が共有されました。

政治宣言

 北京会議から5年毎の節目の年には、例年最終日に締結される合意結論(agreed conclusion)の代わりに政治宣言(political declaration)が採択されてきました。CSW69でも、会議開催に先立って、各国が作成した進捗報告書について5つの地域ごとに(アフリカ、ヨーロッパ、ラテン・アメリカ・カリブ諸国、アジア・太平洋、西アジア)まとめた報告をもとに議論された政治宣言が、初日の10日に採択されました。
 政治宣言では「第4回世界女性会議」(北京会議)から30年を経過し、一定の進捗が見られるものの、現在においてもジェンダー平等を達成した国は存在せず、男女格差は縮小していないことが強調されています。
 「北京宣言」及び「行動綱領」、「第23回国連特別総会成果文書」、「女子差別撤廃条約」と「選択的議定書」の批准、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の進捗には課題が残っています。構造的障壁、差別的な慣習、女性と女児に対する暴力、武装紛争、貧困の女性化等のため、大幅な遅れが生じています。また、意思決定分野への女性の参画が進まず、女性が生涯にわたって受ける複合的かつ交差的な形態の差別、女性の脆弱性と周縁化等の課題があり、進捗は最小限にとどまっていると指摘されました。
 リーダーとして、開発、平和と安全保障の文脈における変革の担い手としての女性と女児の役割、政策や意思決定の場におけるユースの参画と世代間の対話、変化の担い手としての男性と男児の参画の重要性、透明性が高く影響力のある資源配分(累進課税、公共投資の増加、開発援助の公約実現、財政金融政策の改革、ジェンダーに対応した予算の採用)、課題に取り組む政治的意思、個人情報の保護に配慮したジェンダー統計の整備、オープンで包摂的な市民社会の関与の重要性が強調されました。
 更なるジェンダー平等推進のために、未来サミットにおけるジェンダー平等の公約とCSW再生を含む 「未来のための約束(Pact for the Future)」への取組や、「北京宣言」と「行動綱領」の実施と加速化についての各国政府と地域レベルで行われた進捗確認、及び、同プロセスへの市民社会、ユース、あらゆる関係者による貢献が歓迎され、第80回国連総会で「北京+30」についてのハイレベル会合の開催へも期待が寄せられました。

閉会式でスピーチするバフースUNウィメン事務局長 閉会式でスピーチするバフースUNウィメン事務局長


NWECの情報発信

 CSW会期中は、市民社会組織による女性の地位向上に向けた取組の報告やより一層ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを推進していくための方策について、毎年活発に議論が行われています。今年は日本の団体も含め、世界各国から集まった5,845団体にもおよぶ市民社会組織やNGO等の代表が参加したとの発表がありました。
 CSWへの市民社会組織の参画を支援してきたNGO CSW/NYは、国連ビルの内外及びオンラインプラットフォームの会場を準備し、市民社会組織による多数のパラレル・イベントが実施されました。
 国立女性教育会館もこのオンラインプラットフォーム上に展示ブースを開設し、理事長挨拶や統計リーフレットをはじめとした国立女性教育会館の事業を紹介する資料を掲載し、会館の取組について情報発信を行いました。

NGO CSW69 Forum・NWECブース

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