国際連携

国際協力機構との連携

実施報告

平成23年度 JICA国別研修タイ「人身取引被害者支援に関する日タイ合同ワークショップ」

開催期間:平成23年11月7日(月)~18日(金)


平成23年11月7日(月)から11月18(金)まで、平成23年度 国別研修タイ「人身取引被害者支援に関する日・タイ合同ワークショップ」が開催されました。

タイでは人身取引の被害者保護と自立支援のために、関係機関の連携協働を促進するプロジェクト*を国際協力機構(JICA)が実施しています。このプロジェクトの本邦研修を2009年から国立女性教育会館が委託を受けて実施しており、今年で3年目になります。
 
本研修は、タイの人身取引被害者保護対策に携わる関係者を招へいし、両国の相互理解を深め、タイにおける多分野協働チーム(MDT)の連携機能・活動の強化に資する方策を検討することを目的としています。タイでは水害被害が拡大して大変な時期でしたが、MDTに関わる関係機関のメンバー14名が来日しました。

【研修日程】
11月8日には国連大学で開催された国際シンポジウム「変化を遂げる現代の人身取引対策-世界の成功と課題から」で、研修団長のアーティット氏がタイの人身取引対策について発表しました。この日は厚生労働省の婦人保護について話を聞くとともに、東京都女性相談所を見学し、駐日タイ王国大使館を表敬訪問しました。

1.内閣府での講義1.内閣府での講義

2.タイの人身取引対策の取組について講演(国連大学)2.タイの人身取引対策の取組について講演(国連大学)

3.国際シンポジウム3.国際シンポジウム

4.国立女性教育会館の取組について講義と意見交換4.国立女性教育会館の取組について講義と意見交換

9日から11日は国立女性教育会館において、講義と意見交換が行われました。外務省、警察庁と労働省労働基準監督課の担当官や国際移住機関による日本の人身取引対策の取組み、在日タイ人ネットワークのDVや震災時における取組みや支援活動、会館の調査研究、女性関連施設の役割や相談員研修等に関して専門職員による講義が行われました。このほか、女性団体との交流会やお茶室見学を通じた文化交流も行われました。
12日は二つのグループに分かれて、神奈川県と千葉県の民間シェルターを視察し、職員の方たちと両国の取組みについて意見交換を行いました。
14日は明治学院大学 斉藤百合子准教授によるワークショップで、1週間の学習成果の振り返りを行いました。午後は法務省を訪問し、入国管理局と刑事局の担当官から日本の人身取引に関わる法や制度について話がありました。

5.情報センター見学5.情報センター見学

6.女性に対する暴力と研修について講義6.女性に対する暴力と研修について講義

7.在日タイ人ネットワークのメンバーとの意見交換7.在日タイ人ネットワークのメンバーとの意見交換

8.国立女性教育会館理事長と研修員8.国立女性教育会館理事長と研修員

9.東日本大震災についての講義と意見交換9.東日本大震災についての講義と意見交換

10.お茶室見学10.お茶室見学

15日は愛知県国際交流協会が行う在住外国人に対する支援・国際交流活動について話を伺いました。また、外国人女性の支援活動を行っている、かけこみ女性センターあいち、タイ女性友の会に在住女性の抱える問題や支援活動の内容について話を聞き、意見交換を行いました。
16日は岐阜県県民ふれあい会館にて、岐阜県警および岐阜婦人相談所の人身取引対策について講義を聞くとともに、意見交換が行われました。
17日には日本の関係省庁機関等の担当者、タイ王国大使館、国際移住機関(IOM)、有識者、在日タイ人ネットワーク、人身売買禁止ネットワーク(JNATIP)の方々にご出席いただき、成果発表と意見交換会を開催しました。プログラム
参加者からはタイの人身取引事件における被害者の取り扱いやシェルターの取組みについて話がありました。

11.民間シェルターの見学11.民間シェルターの見学

12.中間ワークショップ12.中間ワークショップ

13.国際交流協会の取組について講義13.国際交流協会の取組について講義

14.岐阜県関係機関の取組について講義と意見交換14.岐阜県関係機関の取組について講義と意見交換

15.意見交換と成果発表15.意見交換と成果発表

【評価会における研修員の意見・感想】
11月18日はJICA東京(TIC)研修センターで評価会を行い、研修全体を振り返りました。研修員からは「日本の人身取引対策について幅広く理解することができた」「両国の違いを理解しつつ、帰国して職務で活かせる知見を得た」との報告がされました。
意見の一部を紹介すると、
「日本の対策について、政策レベルの話から実務レベルまで触れることができた」
「研修を通じて、タイの将来像を垣間見ることができた」
「日本が直面している言語の問題は、そのままタイにも当てはまる」
「日本の啓発グッズは彩りもよく魅力的。脂取り紙やソーイングセットなど身の回り品という特徴もある」
「日本では情報が非常に実施され、すべてがシステマティック、検索も容易、タイでも参照可能な体制を整備したい」
「外国への渡航者の多いパヤオ県から来ているので、帰国後は県レベルのMDT体制強化・啓発のために研修の知見を活かしたい」
「労働に来た人の労働・生活環境を理解することができ、とてもよかった。(洪水対策のため)来日する労働者は大幅に増加する見込みであり、労働者向けの情報提供にも役立つ」
「法律面、業務システムなど理解でき、大変有意義だった。帰国後は、被害者の帰国後の支援等に役立てたい」
「在住タイ人のネットワークが困っているタイ人に対する支援を協力しながら行っていることに感動した」
「今回得た知識を各地域のセンターや事務所の同僚とも情報共有し、被害者の帰国後の支援等に役立てていきたい」
「被害者を出さないため、空港等においての対策について上司に提案したい」
「以前は、だまされて働きに来る例が多かったが、現在では偽装結婚等ケースが多様化していることがわかった。日本人との結婚生活においても、言語や文化、DVや家庭内暴力等の問題が複雑に絡み合って生じることも学んだ。チェンライに戻り、だまされないようにしようという啓発活動等を行うこと、ミャンマーやラオスへ送還するケースにおいて、送出し国警察との情報交換等に、今回得られた知識・経験を活かしたい」など。

今回の研修を通じて参加者は、日本の人身取引対策行動計画に基づいた施策を中心に、被害者の保護と帰国支援に関わる両国関係機関の役割や協力関係、法制度の違い、被害者の来日前後の状況や困難等について理解を深めました。今後は帰国報告会も開催し、日本での研修の成果をタイのMDTやメコン地域に広げ、活かしていくことになります。両国の関係機関相互の理解を深めることが、人身取引の防止・被害者保護・加害者の起訴に貢献していくことになることを期待します。

本セミナーの実施にあたり講義や意見交換、見学受け入れでご協力をいただきました関係省庁、自治体関係機関、大使館、国際機関、民間団体およびネットワークの皆様には、心よりお礼を申し上げます。

※タイの人身取引及びプロジェクトに関するDVD(日、英、タイ語)を、情報センターで貸し出しています。

※国立女性教育会館の人身取引に関する調査研究についてはこちらをご覧ください。

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