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令和5年度課題別研修「ジェンダーに基づく暴力の撤廃」
開催期間:令和5年9月4日(月)~令和5年10月11日(水)
国立女性教育会館は、令和5年9月4日から10月11日まで、国際協力機構(JICA)からの委託事業として、課題別研修「ジェンダーに基づく暴力(SGBV)の撤廃」を開催しました。
参加者はバングラデシュ人民共和国、ブータン王国、ボツワナ共和国、コンゴ民主共和国、キルギス共和国、マーシャル諸島共和国、メキシコ合衆国、モンゴル国、ナイジェリア連邦共和国、ネパール、パキスタン・イスラム共和国、ソロモン諸島、南スーダン共和国、スリランカ民主社会主義共和国の女性省などの省庁、自治体、NGO/NPOなどの市民社会組織においてSGBV対策に携わる関係者14名です。
本研修は、来日前のオンライン・オリエンテーションと、来日対面プログラムの組み合わせで開催されました。参加者は、SGBV対策に関する講義や関連施設の訪問により、国際的なスタンダードとなっている被害者中心アプローチに基づく支援のあり方や、日本を含む各国のSGBV対策の関連施策や行動計画、行政および民間の取組について相互理解を深めました。プログラム後半では、自国における取組強化に向けたアクションプランを作成し、最終報告会で発表しました。
1. 研修ハイライト
来日までのオンラインプログラム
9月4日(月)から9月6日(水)まで、ZOOMを使用したオンライン・オリエンテーションを実施し、各国参加者が自国のSGBVの状況、SGBV政策、被害者支援等の取組や好事例をまとめたインセプションレポートを発表しました。
来日後のプログラム
■9月26日(火)~28日(木)
プログラム・オリエンテーション、有識者によるジェンダーに基づく暴力の国際潮流についての基調講演に続き、内閣府や警察庁、並びに自治体の講師の方から、日本政府や地方自治体の取組についてご説明いただきました。
参加者からは、女子差別撤廃条約等の国際法を国内の人権保護に関連付ける必要性やイスタンブール条約で被害者中心アプローチが掲げられていることを再確認した等の意見が聞かれました。
基調講演講師との集合写真
SGBVの原因を議論するグループワークでは、貧困、失業、家父長制などの社会規範、ステレオタイプ、SGBVに関する知識/教育の欠如、武力紛争、アルコールや薬物依存、ジェンダー不平等など、各国に共通する課題があげられました。
日本政府の取組として、内閣府からは、日本政府の男女共同参画の施策について、警察庁からは、性犯罪・性被害および女性に対する暴力に対する警察の取組の紹介がありました。
また、自治体での取組を知るために、東京ウィメンズプラザを訪問しました。東京ウィメンズプラザでは、所長から東京都の男女共同参画施策や女性に対する暴力への取組など、地方自治体の取組について説明を受けました。
自治体での取組の講義で被害者保護について質問する参加者
意見交換をする参加者
■9月29日(金)~10月2日(月)
主に被害者支援に取り組む民間団体から、性暴力被害者支援、電話相談とSNS相談、シェルターや自立支援の取組についてご説明いただきました。
NPO法人千葉性暴力被害支援センターちさとへの訪問では、病院、千葉県、千葉市、千葉県警、弁護士会という関連機関が一堂に会し、それぞれの連携機関による取組についてお話を伺いました。参加者からは、自治体による支援活動への予算措置、緊急対応だけではなく中・長期的なフォローアップ支援で精神的ケアや社会復帰に向けた支援の提供があることなどについて、強い関心が寄せられました。
訪問先での集合写真
一般社団法人社会的包摂サポートセンター訪問では、民間団体によるホットラインによる被害者の伴走支援についてお話を伺いました。自国のホットラインの紹介や事例を交えたディスカッションを通して各国の状況が随時共有され、活発な意見交換がありました。
講師との集合写真
NPO法人女性ネットSaya-Sayaでは、民間団体による女性と児童の保護、自立支援の取組についてご紹介いただきました。行政との連携や、中・長期にわたって被害者を支援する取組、DV被害者の子どもたちへの影響についての質問に加えて、トラウマ回復のためのケアや感情を表現するワーク等の手法について、自国でも実践したいという声が聞かれました。
■10月3日(火)~5日(木)
参加者はNWECに滞在し、NWEC理事長の挨拶後、文部科学省から「生命(いのち)の安全教育」についての説明を受けました。
専門家らの多様な機関と連携して持続的な女性支援を提供している日本国内の事例や、ミャンマーにおける被害者中心アプローチ実践のためのプロジェクト、JOICEFのザンビアにおけるSGBV対策プロジェクトの事例に対しては、ワンストップ支援の運営、他組織との連携維持へ多数の関心が寄せられました。
NWEC滞在中に、個々人が帰国後に取組むアクションプランについて、意見交換を行いました。
国立女性教育会館理事長と講師との集合写真
NWECのお茶室で日本文化体験
体をほぐすためにCOCONUT体操をする参加者
Maya's Storyという啓発アクティヴィティで女性に対する社会的な抑圧を考える
■10月5日(木)~6日(金)
民間団体による性的マイノリティーへの働きかけ、デジタル空間におけるSGBV被害への取組、居場所のない若年女性支援、加害者プログラムについて、複数の民間団体からご説明がありました。
NPO法人共生社会をつくる性的マイノリティー支援全国ネットの講師から、日本におけるLGBTQI+の現状と国際的な動向についてお話いただき、参加者も自国の事例を紹介するなど、オンラインでの意見交換が活発に行われました。
国際人権NGOヒューマン・ライツ・ナウよりオンライン空間における暴力について、特に法律の観点から現状と課題についてご説明いただき、NPO法人ぱっぷすからは民間団体によるオンライン性的搾取被害者支援の取組についてお話を伺いました。オンライン性的搾取の被害については、新しい課題ではあるものの、児童ポルノやオンライン搾取の問題など、参加国の中でも対策が必要である状況が共有されました。
また、一般社団法人AWAREの講師による、性別に基づく特権に気がつくためのワークを行いました。
若年女性の支援をしているNPO法人BONDプロジェクトを訪問し、生きづらさを抱える若年女性へのアウトリーチを中心とした活動についてお話を伺いました。
見学後に講師と集合写真
■10月9日(月)~10日(火)
最後の2日間は、プラン・インターナショナルの取組や全国シェルターネットの取組についての情報提供と、参加者のアクションプラン発表が行われました。参加者はそれぞれ自国の課題に対して、自らの職務に鑑みた具体的なアクションと実施スケジュールを盛り込んだ計画を発表しました。
最終日の閉講式では、修了証書が一人ひとりに授与されました。
修了証書を持って集合写真
2. 参加者のコメント
・さまざまなセンターや組織を訪問することは非常に有益でした。私は多くのことを学び、これらのセンターでは地元住民だけでなく外国人にもサービスを提供していることに驚き、感動しました。このプログラムから得られるものはたくさんあり、母国でもいくつか実施してみることを楽しみにしています。
・このSGBV撤廃に関するプログラムを通して、日本政府がさまざまなアプローチで、行政やNGOによる家庭内暴力の被害者支援を行っていることがわかりました。日本には被害者のためのワンストップセンターがたくさんあり、これらのセンターは他の連携機関ととても機能的に連携しています。私の国と日本を比較すると、私の国の対応は遅れています。しかし、だからこそ私は日本の取組について学び、自国に持ち帰って実行する必要があるのです。家庭内暴力の被害者のために働いている私たちコーディネーターにとって、とても印象的で内容の濃い研修でした。
・世界各地の同僚の素晴らしい経験と、ジェンダーに基づく暴力に立ち向かう日本の経験を知ることができたので、このプログラムに選ばれたことをとてもうれしく思います。実践的な知識とスキルを200%得ることができました。他の国際プログラムと比較しても、このプログラムでは、本当に新しいアイディアや行動計画を得ることができました。
・この研修により、日本がジェンダーに基づく暴力の被害者に対してどのような援助や支援を提供しているのかについてより深い洞察が得られました。
本セミナーの実施にあたり講義や意見交換、訪問へのご対応で多大なるご協力をいただきました関係省庁(内閣府、警察庁)、都道府県(東京都、千葉県)、国際機関、民間支援団体、有識者および支援活動に携わるネットワークの皆様に心よりお礼を申し上げます。
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