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第68回 国連女性の地位委員会報告

開催期間:2024年3月11日(月)~22日(金)


 第68回 国連女性の地位委員会(CSW)が2024年3月11日~22日の日程で開催されました。

第68回CSWの概要

 第68回CSWは国連本部(ニューヨーク)にて対面とオンラインのハイブリッドで開催されました。2人の国家元首、3人の副大統領、100人以上の閣僚を含む世界の指導者と4,800人の市民社会団体の代表が集まり、これまで開催されたCSWの会議の中で2番目に多い出席者数を記録しました。優先テーマ「ジェンダーの視点からの貧困撲滅、機構強化、資金動員によるジェンダー平等達成と女性・女児のエンパワーメントの加速」とレビューテーマ「ジェンダー平等及び女性と女児のエンパワーメントのための社会保護システム、公共サービス及び持続可能なインフラストラクチャ—へのアクセス(第63回CSW合意結論)」を中心に、閣僚級円卓会合、インタラクティブ・ダイアローグ、対話型専門家パネルが行われました。今期の優先テーマでは、SDGs達成に向けた資金動員・調達、無償・有償ケア労働が経済を支えていることを認識し、労働の再配分と正当な報酬を充てることによる貧困とジェンダー平等を推進すること、インターセクショナリティ、ジェンダー別データ収集のためのシステム構築が議論され、対話型パネルではAIを含む新しい技術へのアクセスの問題と技術そのものの課題等にも焦点が当てられました。前期に引き続き、ユース(若い世代)との対話型パネルが本会議に組み込まれており、日本からもユース代表が参加しています。

      国連本部で行われた開会式
    (写真:UN Photo/Manuel Elías)

  今期議長を務めたH.E. Mr. Antonio Manuel
    Revilla Lagdameo (Philippines)
   (写真:UN Photo/Manuel Elías)

日本の情報発信

 日本からは、一般討論(13日)において、優先テーマに関する日本の取組について、加藤女性活躍担当大臣・内閣府特命担当大臣(男女共同参画)が、ビデオメッセージ形式でステートメントを述べました。ステートメントでは、男女共同参画社会の実現を阻む複雑な構造的要因に取り組むためには、女性の経済的自立を含めた複合的なアプローチが必要だと述べられました。「女性版骨太の方針2023」に基づくプライム上場企業の女性役員比率を2030年までに30%以上とする数値目標の設置、目標達成のための行動計画の施策の推奨、女性のデジタル分野への労働移動、デジタルスキル習得支援、交付金による女性起業家育成のための自治体の取り組みの支援が、日本政府の取り組みとして発信されました。

 また、閣僚級円卓会合(13日)において、大崎麻子日本代表が発言し、日本政府の女性の貧困への取り組みとして、労働者が301人を超える事業主に課せられた男女の賃金差異の情報公表と困難女性支援法、国際的な取組として日本が支援を表明している女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)等を紹介しました。
 ユースとの対話型パネル(14日)において、日本代表(ユース)鈴木りゆかさんが発言し、日本の政治、意思決定のレベルにおいて、女性や性的少数者を含むマイノリティが代表されていないことを指摘し、経済的な支援を含めたマイノリティのエンパワーメントと意思決定レベルにおける代表の重要性を強調しました。
 インタラクティブ・ダイアローグ(21日)では、AIが女性と女児に対して性的搾取やプライバシーの侵害等の暴力の道具に使用される可能性が高いことを踏まえて、AIの安全で公平な利用について意見が交わされました。
 15日には国連日本政府代表部と国内女性NGO三団体 (日本女性監視機構/国連NGO国内女性委員会/国際婦人年連絡会)の共催で行われたサイド・イベント「女性の多元的な貧困課題と草の根の対応——日本・スリランカ・グアテマラからの報告」が開催されました。

レビューテーマ

 CSWでは過去に行われたCSWの議題をレビューテーマとして取り上げ、進捗状況をはかります。今年は、第63回CSW合意結論としてまとめられた「ジェンダー平等及び女児のエンパワーメントのための社会保護システム、公共サービス及び持続可能なインフラストラクチャ—へのアクセス」について進捗報告と質疑応答がありました。国連事務総長報告によると、過去5年間で加盟国において合意結論の実施に向けて、女性と女児のエンパワーメントのための社会保護システムや公共サービス等さまざまな施策の実施が確認されています。その一方、実施には国・地域によってばらつきがあり、特に極度の貧困、食糧の安全、デジタル技術へのアクセスの改善という目標の未達成も指摘されました。各国からは、先住民を含む女性と女児のエンパワーメントやジェンダーに基づく暴力が依然として課題であり、官民の連携の下、女性の支援のためのジェンダー別データ収集のシステム構築、データに基づく社会保護と公共サービスの提供、異なる状況を経験している女性と女児へのきめ細かな支援等、各国それぞれの取組が進められることが報告されました。

合意結論

 CSWでは、その年のテーマについて討議した結果を「合意結論」という形でまとめることが経済社会理事会により定められています。合意結論の原案(ゼロドラフト)を基に長時間に及ぶ議論が交わされ、22日に合意結論が採択されました。
 合意結論では、危機の際に女性と女児が影響を受け止める調整弁となってしまっていること、女性と女児の貧困に対処する資源・資金を増やすには更なる努力が必要であること、国際金融のシステムが危機に対処できていないことを認識し、各国にジェンダー平等のために、債務軽減と累進課税、女性と女児のニーズと権利に対処するための公的資金の確保を含む資金動員の改革を求めました。公的及び民間の資金源からの財源動員、国際的な金融システムの強化、国家予算編成プロセスにおけるジェンダーの視点の確保、低所得または無収入の女性と女児に不当な影響を与える逆進課税の防止、多次元の貧困に関する細分化されたデータを収集して利用する国家能力を強化し、持続可能な経済に向けた新たな開発戦略を採用することも勧告されました。勧告には包括的でジェンダーに対応した社会的保護制度の強化や、女性の時間と収入の貧困を削減し、雇用の機会を拡大するためのケアエコノミーへの投資の拡大も含まれます。南部アフリカ開発共同体(SADC)主導によるHIV-AIDSに関する決議も採択され、ジェンダー平等への投資の拡大と、HIV-AIDS対策におけるすべての女性と女児のエンパワーメントが求められました。今期のCSWでは、多くの政府代表や市民社会組織が、女性と女児に対するAIを含むデジタル技術の影響、危機に際しての女性と女児の特に経済的な脆弱性について懸念を表明し、あらゆる女性と女児の保護強化の必要性を訴えました。


NWECの情報発信

 CSW会期中は、市民社会組織による女性の地位向上に向けた取組の報告や議論が毎年活発に行われています。今期は、CSWへの市民社会組織の参画を支援してきたNGO CSW/NYが国連ビルの内外及びオンラインプラットフォームの会場を準備し、優先テーマやレビューテーマに関連する多数のイベントが開かれました。今年は日本の団体が主催したパラレル・イベントも含め、760件以上が開催されました。
 国立女性教育会館もこのオンラインプラットフォーム上に展示ブースを開設し、会館の取組みについて情報発信を行いました。ブースでは理事長挨拶や統計リーフレットをはじめとした国立女性教育会館の事業を紹介する資料を掲載しました。
 バーチャル・オープン・ハウスは会期中2回実施し、国立女性教育会館の主催事業や情報事業等を紹介し、参加者との意見交換やネットワークづくりを行いました。

NGO CSW68 Forum・NWECブース

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