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CSW

第67回 国連女性の地位委員会報告

開催期間:2023年3月6日(月)~17日(金)


 第67回 国連女性の地位委員会(CSW)が2023年3月6日~17日の日程で開催されました。

第67回CSWの概要

 第67回CSWは国連本部(ニューヨーク)にてオンライン参加を含む対面形式で開催されました。本会議には国連加盟国等の国家元首や閣僚級の政府関係者をはじめとする181の代表団が集まりました。優先テーマ「ジェンダー平等と全ての女性と女児のエンパワーメントの達成のためのイノベーション、技術変革、デジタル時代の教育」とレビューテーマ「農山漁村の女性と女児のジェンダー平等とエンパワーメント達成のための課題と機会(第62回CSW合意結論)」を中心に、閣僚級円卓会合、インタラクティブ・ダイアローグ、対話型専門家パネルが行われました。CSWは、これまで情報技術・通信ネットワークへの女性のアクセスの課題等について取り上げてきました。今期の優先テーマでは、デジタル格差、デジタル技術の透明性、デジタル技術開発における多様性の包摂、デジタル分野における倫理とジェンダーに基づくハラスメントや暴力にも焦点が当てられました。また、今期は、ユース(若い世代)との対話型パネルが本会議に組み込まれた点も注目を集めました。

      国連本部で行われた開会式
    (写真:UN Photo/Manuel Elías)

   マトゥ・ジョイニ議長(南アフリカ)
   (写真:UN Photo/Manuel Elías)

日本の情報発信

 日本からは、一般討論(6日)において、優先テーマに関する日本の取組について、小倉女性活躍担当大臣・内閣府特命担当大臣(男女共同参画)が、ビデオメッセージ形式でステートメントを述べました。ステートメントでは、デジタル分野等への業種転換・職種転換を進めることが「女性の経済的自立」の実現のために重要であり、そのために「女性デジタル人材育成プラン」を取りまとめ、デジタルスキル向上とデジタル分野への就業支援を行っていること、また大学・経済界等と協力し、女子児童・生徒が科学技術に興味を持つ機会の創出や、女子児童・生徒、保護者、教員等に対する科学・技術・工学・数学(STEM)分野への進路選択に関する理解促進等に取り組んでいることについて発信しました。
 また、閣僚級円卓会合(7日)において、田中由美子日本代表が発言し、小中学校における情報通信技術(ICT)教育の推進や、UN Womenを通じてシリア難民女性が基礎的なICTスキル等を身につけることを日本が支援した事例等を紹介しました。
 ユースとの対話型パネル(13日)においても、日本代表(ユース)が発言し、オンライン・オフラインにおける安全な環境創出の必要性、ジェンダー統計やメンタルヘルスに関する支援の重要性について強調しました。
 インタラクティブ・ダイアローグ(16日)では、新型コロナウイルス感染症拡大下においてデジタル技術の活用や柔軟な働き方が推進されたことが言及されました。
 8日には国連日本政府代表部と国内女性NGO三団体 (日本女性監視機構/国連NGO国内女性委員会/国際婦人年連絡会)の共催で行われたサイド・イベント「イノヴェーションとテクノロジーの変革による女性のエンパワーメント:女子大学工学部は万能薬?」が開催されました。

レビューテーマ

 CSWでは過去に行われたCSWの議題をレビューテーマとして取り上げ、進捗状況をはかります。今年は、第62回CSW合意結論としてまとめられた農山漁村の女性と女児のジェンダー平等とエンパワーメント達成のための課題と機会について進捗報告と質疑応答がありました。国連事務総長報告によると、過去5年間で加盟国において合意結論の実施に向けて、農山漁村の女性と女児のエンパワーメントのための政策強化やさまざまな施策の実施が確認されています。その一方、新型コロナウイルス感染症拡大や気候変動、食料や燃料等の高騰が女性の社会参画の妨げとなっている点も指摘されました。各国からは、先住民を含む農山漁村の女性と女児のエンパワーメントやジェンダーに基づく暴力が依然として課題であるため、官民の連携の下、女性による土地所有や管理のための施策、金融アクセス向上、農産物加工等の小規模ビジネス振興、情報技術も含むスキルアップ研修、妊娠などで中途退学した女性の教育等の支援に取り組んでいくことが報告されました。

合意結論

 CSWでは、その年のテーマについて討議した結果を「合意結論」という形でまとめることが経済社会理事会により定められています。合意結論の原案(ゼロドラフト)を基に長時間に及ぶ議論が交わされ、89パラグラフと8つの決議・決定から成る合意結論が採択されました。
 閉会式では、UN Women事務局長が、今期の合意結論は革新的であり、すべての女性・女児にとって、より平等で繋がりのある世界を推進していくために、加盟国が一丸となって行動していくことを呼びかけました。
 合意結論では、STEM分野における完全かつ効果的な女性の参加および平等なリーダーシップの機会を確保することの重要性を再確認し、技術へのアクセスや利用に関するジェンダー格差の解消にわずかな進展しか見られないこと、オンライン暴力・ハラスメントについて極めて深刻な懸念が表明されました。そして、より包括的で多様な組織が相互に協働し、イノベーションを創出するエコシステム(生態系)や安全でジェンダーに対応した技術のイノベーションと促進を求めると共に、すべての女性・女児が急速に変化する社会で活躍できるよう、科学・技術・工学・数学・情報通信技術・デジタルリテラシーに関する包括的で公平な質の高い教育を求めました。また、技術を用いたジェンダーに基づく暴力の根絶に向けて、各国政府と企業がその予防と撤廃を優先事項に掲げることを求めています。
 今期のCSWでは、多くの政府代表や市民社会組織が女性・女児に対するオンライン暴力・ヘイトスピーチ、被災地や紛争地域における女性・女児の人権侵害について重大な懸念を表明し、あらゆる女性・女児の保護強化の必要性を訴えました。


NWECの情報発信

 CSW会期中は、市民社会組織による女性の地位向上に向けた取組の報告や議論が毎年活発に行われています。今期は、CSWへの市民社会組織の参画を支援してきたNGO CSW/NYが国連ビルの内外及びオンラインプラットフォームの会場を準備し、ハイブリッド形式で優先テーマやレビューテーマに関連する多数のイベントが開かれました。今年は日本の団体が主催したパラレル・イベントも含め、750件以上が開催されました。
 国立女性教育会館もこのオンラインプラットフォーム上に展示ブースを開設し、会館の取組みについて情報発信を行いました。ブースでは理事長挨拶や統計リーフレットをはじめとした国立女性教育会館の事業を紹介する資料、また日本の団体のパラレル・イベント等のチラシを掲載しました。

NGO CSW67・NWECブース

 また、バーチャル・オープン・ハウス及びイベント「ユースと語るジェンダー平等」を実施しました。
 バーチャル・オープン・ハウスは会期中3回実施し、国立女性教育会館の事業についての紹介や、女性に対する暴力、女性センターの役割、ジェンダー統計などの話題について、参加者との意見交換やネットワークづくりを行いました。
 14日にはイベント「ユースと語るジェンダー平等」を実施しました。このイベントでは身近なジェンダー課題に取り組む若者に、行動のきっかけ、学校・企業・男性等とどのようにジェンダー平等に向けて連携するか、今後に向けての展望等を発表いただきました。

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