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国際協力機構との連携

実施報告

平成30年度 課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」

開催期間:平成30年10月24日(水)~11月7日(水)


国立女性教育会館は、平成30年10月24日から11月7日まで、国際協力機構(JICA)からの委託事業として課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」を開催しました。アセアン地域から、タイ、ミャンマー、ベトナム、ラオス、フィリピン、カンボジア、マレーシア、インドネシアの8か国13名の人身取引対策担当者が参加しました。

平成30年度 課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」実施要項

1.趣 旨
国際協力機構(JICA)がアセアン諸国において実施する、人身取引被害者保護・社会復帰・被害の予防の分野でのプロジェクトのカウンターパートおよびアセアン地域の人身取引対策に携わる関係者を対象としたワークショップ型研修を実施する。3年計画の第1年次*。   
人身取引撲滅と被害者保護は一国のみで対応できる課題ではなく、国境を越えた広域的課題として対応するためにも、アセアン地域におけるネットワーク形成が重要である。参加者が日本を含め、互いの国の人身取引対策に関する取り組みについて相互理解を深め、特に予防、被害者の保護と自立支援に携わる関係機関の役割や協力体制等について把握し、参加者間で人身取引対策に取り組む機関の機能強化や連携、国を越えたネットワークの強化に資する方策を検討することを目的として行われる。

2.主  催    独立行政法人国際協力機構(JICA)

3.実施機関    独立行政法人国立女性教育会館

4.協  力 内閣官房、外務省、厚生労働省、警察庁、法務省、国際移住機関(IOM)、東京都、人身売買禁止ネットワーク(JNATIP)、一般社団法人社会包摂センター他

5.期  日   平成30年10月24日(水)~11月7日(水)

6.対  象  13名(男女)予定
カンボジア、タイ、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、ベトナム、ラオス、インドネシアの人身取引対策の予防と保護の分野に携わっている者(中央・地方政府機関)。

7.研修項目
(1)日本政府の人身取引対策および日本の人身取引被害者保護支援策について理解する。
(2)日本の民間団体による被害者支援策について理解する。
(3)参加各国における人身取引対策の予防・起訴・保護の一連のプロセスや関係機関の役割を把握するとともに、好取組事例を共有し、課題について検討する。
(4)アセアン地域におけるより良い関係づくりに向けた方策について検討する。
(5)(1)から(4)を通して得られた知見をもとに、各国の人身取引対策の改善や地域間および国内間の関係強化に向けたアクションプランを作成する。

8.使用言語  英語

9.日  程  別添参照
*本研修の前身として、「人身取引に関する日タイ合同ワークショップ」(平成21~24年度)、「国別研修ミャンマー」(平成24~25年度)、「国別研修ベトナム」(平成24~25年度)、地域別研修「アジア諸国における人身取引対策協力促進セミナー」(平成24年~26年度)、課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」(平成27年~29年度)が、国立女性教育会館を実施機関として開催されている。本研修も30年度から3年計画で実施予定である。なお、タイの「メコン地域人身取引被害者支援能力向上プロジェクト」の関係者を対象にした国別研修が、別途、JICA関西で開催されている。

(別添)日程

セミナーでは参加8カ国および日本の人身取引対策の特に防止や保護に向けた方策に焦点をあてて、官民の取組や事例について学び、意見交換を行いました。最初に、日本の人身取引対策行動計画を基盤とした官民の体制や取組について、講義や視察を通じて学びました。研修参加者は、各国それぞれの人身取引対策の取組に関するカントリーレポートを発表し、課題や相違点について意見交換を行い、好事例を共有しました。研修後半で開催された「成果発表会と意見交換会」では、当事者の視点に立った人身取引撲滅と被害者保護について、アセアン地域における協力関係の促進を図っていくことが確認されました。

1.研修ハイライト

第1週 

まず初日に、研修目的を確認し、プログラムについて説明を受けました。2日目は、内閣官房を訪問し、人身取引対策行動計画2014に基づいた、日本の実施体制や年次報告書の公表、関係機関の取組みの概要や統計について話を聞きました。午後は、東京都女性センターで、自治体の女性相談所の被害者保護に関する役割を学び、施設を見学しました。

2日目 内閣官房で人身取引対策行動計画について

3日目は、社会福祉法人一粒会を訪問し、敷地内の母子自立支援施設や児童養護施設を見学し、それぞれの施設が果たす役割や地域との関わりについて学ぶとともに、外国人女性のおかれている状況やその背景、当事者の立場に寄り添った支援について伺いました。

3日目 母子自立支援施設敷地内見学と施設の方々と昼食会

4日目は、外国人の人身取引およびDV被害者支援を行うウエラーワーリの多言語通訳者3名にお話を伺いました。途上国から来日する外国人女性が多い背景について話し合うとともに、被害者には長期的な支援が必要であること、公的機関と民間の連携が大切であることを学びました。夜は、一般社団法人Colaboのスタディーツアーに参加しました。繁華街の裏側にある少女たちを取り巻く現場を見た後、少女たちの居場所づくりなど団体が自治体とも連携しながら取り組んでいる支援内容について説明を受けました。若年層の性的搾取の問題は各国の課題であり、熱心な意見が交わされました。

4日目 スタディーツアー後の講義と意見交換

5日目は、東京入国管理局を訪問しました。入国管理局による人身取引事案についての説明後に施設見学が行われました。来日外国人のための多言語相談窓口や査証申請窓口とその手続、難民申請手続き、収容施設の生活などについて説明を受けました。午後は、警察庁の担当官から人身取引事犯の取り扱いについて事例をもとに説明を受けました。

5日目 入国管理局の取組について聞く

警察の取組について質問

6日目からは国立女性教育会館に移って研修が行われました。会館理事の歓迎挨拶の後、男女共同参画を推進するために会館が取り組む、情報、研修、調査研究、国際、広報発信事業の説明を受けました。事業課専門職員による情報提供に対しては、相談員が身につけておくべき資質や能力について研修員から質問が出ました。

6日目 中澤理事による歓迎の挨拶

8か国のカントリーレポートの発表とそれに対する質疑応答が行われ、各国の取組についての相互理解を深めました。

6日目 国立女性教育会館お茶室で日本文化体験

7日目は厚生労働省の担当官による婦人保護事業と人身取引被害者保護の流れについての説明を受けました。国際移住機関のケースワーカーを交えたワークショップでは、最初に、グループに分かれて人身取引被害者の初期対応の良い事例と悪い事例のシナリオを考え、寸劇を演じて、相互に気づいた点を話し合いました。最後に全員参加のグループアクティビティーパワーウォークを行い、「誰も取り残さない」ことの重要性を確認しました。

7日目 ロールプレイ

IOMによるグループアクティビティー

8日目 よりそいホットラインを見学

8日目は一般社団法人社会的包摂サポートセンターを見学し、よりそいホットラインの仕組みや全国に拠点を置き、相談者を社会資源にしっかりつなげていく包括的な支援のありかたについて学びました。移住者と連帯する全国ネットワーク事務所の訪問では、外国人の差別に対する移住連の取組について説明を受けました。外国人労働者が日本で直面する困難や人身取引被害者の声を聴き、移住労働者の人権について考えました。

移住連の事務所訪問

9日目は公益財団法人かながわ国際交流財団の方から、在住外国人が安心して暮らせるための取り組みの話を聞きました。多様な言語で作成された生活情報リーフレットや外国につながるコミュニティーの文化活動や日本語教室の支援、出産前から学齢期、大学進学や就職相談などライフコースに沿った相談や支援活動について説明を受けました。人身取引被害者弁護団からは3名の弁護士に出席いただき、人身取引の事例に基づき被害者支援の課題に関して活発な質疑や意見が交わされました。

9日目 国際交流財団の取組について

10日目は、JICAのジェンダー貧困削減室の専門家がアセアン地域におけるJICAの取組について説明しました。人身取引の根本原因の対応として女性の経済的自立やエンパワーメントに資する事業についても学びました。

10日目 成果発表と意見交換会に向けて話し合いと資料作り

11日目は、研修の集大成として「成果発表と意見交換会」がJICA東京で開催されました。講師や見学先として研修に関わった省庁や国際機関、民間団体、有識者、大使館等の関係者に出席いただきました。最初に小ケ谷千穂フェリス女学院大学教授から、ジェンダーと移住に関するミニレクチャーがありました。その後、研修員が2週間の研修内容と学んだこと、各国の人身取引対策、アクションプランを発表しました。最後に、全員で人身取引の撲滅に向けた決意表明文を読み上げました。

11日目 研修成果の発表

有識者との意見交換

成果発表と意見交換会 参加者記念写真

12日目は、研修の評価会と修了式が行われました。

12日目 修了式

研修を終えたASEANの人身取引対策に携わる担当官等からは、「被害者保護と人身取引の防止について学ぶことができた」、「技能や知識を深めることができた」、「参加国と比較したり関係者の協力や近隣諸国のネットワークづくりを学ぶことができた」「ホットラインの今後を考えると東南アジアにおける連携が重要だと感じた」など、日本での講義や視察、参加国間の話し合いを通じてアセアン諸国の人身取引の取組について理解を深めたというフィードバックが得られました。

本セミナーの実施にあたり講義や意見交換、見学受け入れで多大なるご協力をいただきました関係省庁(内閣府、外務省、法務省、厚生労働省、警察庁)、都道府県(東京都、神奈川県)、大使館、国際機関、人身売買禁止ネットワーク、民間支援団体、有識者および支援活動に携わるネットワークの皆様に心よりお礼を申し上げます。

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