国際連携

NWECグローバルセミナー

実施報告

令和4年度NWECグローバルセミナー デジタル技術はジェンダー平等を推進するか?

開催期間:令和4年10月14日(金)~10月31日(月)


今年度のNWECグローバルセミナーは、基調講演・事例紹介をオンデマンド配信、
パネルディスカッションをライブ配信と見逃し配信にて開催します。

1.趣旨

 ICT 分野の技術革新が、身の回りで新たなサービスやイノベーションを創出する中で、「経済発展と社会
的課題の解決を両立する人間中心の社会(Society 5.0)」を目指すことが提唱されています。こうした中、
多様なニーズに応えるためにも、ジェンダーの視点からデジタル技術やイノベーションを捉えなおす取組
が着目されています。
 第67回(2023年)国連女性の地位委員会(CSW)の主要テーマも「ジェンダー平等と女性と女児の
エンパワーメントのためのイノベーションとテクノロジーの変化及びデジタル時代の教育」です。
 本セミナーでは、国内外の取組から多様なニーズに配慮し、ジェンダー平等の推進に寄与するデジタル
技術の開発と利用のためには何が求められているのか考えます。

2.主題

 デジタル技術はジェンダー平等を推進するか?
 Does Digital Technology Advance the Gender Equality?

3.主催

 独立行政法人 国立女性教育会館

4.後援

 文部科学省
 国立研究開発法人科学技術振興機構

5.配信期間

基調講演・事例紹介(オンデマンド配信)
 令和4年10月14日(金)9:00~10月31日(月)17:00
パネルディスカッション
(ライブ配信)令和4年10月21日(金)14:00~16:00
(見逃し配信)令和4年10月26日(水)9:00~10月31日(月)17:00

6.申込方法

 申込受付は終了しました。

7.使用言語

 日本語(オンデマンド英語講演は日本語字幕付。パネルディスカッションは日本語)

8.募集人員

 テーマに関心のある方 100名程度

9.プログラム

◆基調講演(オンデマンド配信)

 ジェンダー格差縮小のためのデジタル技術
   
  講師:ドロシー・ゴードン 国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)みんなのための情報計画委員長

  ガーナ出身。国連、政府機関、民間セクターで要職を歴任。デジタル技術の開発と普及過程における
  ジェンダー・バイアスや個人情報に係る課題を指摘するとともに、女性の学び直しやスキルアップに
  つながる可能性についても紹介します。誰もが自分らしく生きることができる社会の実現のために、
  技術革新がどのように貢献できるかについて問題提起をおこないます。

◆パネルディスカッション ジェンダー平等なデジタル技術の活用に向けて(ライブ+見逃し配信)

  研究者、ユース(若い世代)、実践家がデジタル技術に潜むジェンダー課題と社会課題をテクノロジー
 で解決するために市民がいかに関わることができるか、市民の主体的な取組について議論を交わします。

  パネリスト:小林 傳司 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター長
        田中沙弥果 特定非営利活動法人Waffle共同創業者
        福島健一郎 一般社団法人コード・フォー・カナザワ代表理事
  コーディネーター:萩原なつ子 国立女性教育会館理事長

◆事例紹介(オンデマンド配信)

 ◇「AI とジェンダー」
  国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)

   一見すると性中立的にとらえられている AI の自動意思決定が扱うデータやデータ処理の
   アルゴリズムに埋め込まれた、ジェンダー・バイアスについて解説した動画です。

 ◇「アプリを使った女性にやさしい安全な街づくり」
  カルパナ・ヴィスワナート セイフティピン創設者

   インドでも交通機関や公道で女性に対するハラスメントが発生しており、デリーに本部があるセイフ
  ティピンはこうした現状を改善するため、街の安全情報の共有ができるアプリを開発。アプリは中南米
  やアフリカを含め15か国60都市で活用されています。

 ◇「コンピューター・プログラミングを通じた女性や少女のエンパワーメント」
  サラーム・アル・ヌクタ チェンジメーカーズ創設者兼CEO/
             平等を目指す全ての世代のためのフォーラム・タスクフォース

   内戦下のシリア国内で、コンピューター・プログラミングの習得機会の提供を通じて、女性や女児の
  エンパワーメントを支援するチェンジメーカーズの活動を展開。デジタル格差を縮小する取組が、
  家族やコミュニティーに及ぼした影響についても論じます。

 ◇「ロボティクス技術で介護の変革に挑む」
  宇井吉美 株式会社aba代表取締役

   株式会社abaは高齢化社会における課題解決に取り組んでいる企業です。祖母の介護経験から、介護
  の負担を減らしたいとの思いに基づき、ロボット開発の道を志し「排泄センサーHelppad(ヘルプパッ
  ド)」を製品化した経緯、育児や介護と仕事の両立しやすい職場づくりについて紹介します。

10.参加費

 無料(通信料は参加者の負担となります)

11.その他

・セミナー終了後、オンラインページ上のアンケートに回答をお願いします。

本セミナーはWAW!2022 WAW!ウィークス公式サイドイベントです。
国際女性会議WAW!(World Assembly for Women)は、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントという日本政府の最重要課題の1つを国内外で実現するための取組の一環として開催されています。

 
【問合せ先】
 国立女性教育会館 研究国際室
 グローバルセミナー担当
 TEL:0493-62-6437  Eメール:rese2@nwec.jp

 国立女性教育会館は、令和4年10月14日(金)から31日(月)に、「デジタル技術はジェンダー平等を推進するか?」をテーマとして、令和4年度NWECグローバルセミナーを開催しました。
 今年度のセミナーは基調講演と国内外の事例紹介をオンデマンド動画で提供し、パネルディスカッションをライブ配信しました(後援:文部科学省、国立研究開発法人科学技術振興機構)。

●基調講演「ジェンダー格差縮小のためのデジタル技術」31分

ドロシー・ゴードン 国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)みんなのための情報計画委員長
 ジェンダー平等を推進するうえでの課題、デジタル技術の活用事例、新たな市場を作り出す技術革新と法規制等について講演。ジェンダー格差解消にデジタル技術を活用することにより、データによって簡便化する技術開発や調査、学び直しとスキルアップが可能となります。一方、アルゴリズム・バイアスを解消するための人材育成や、ソーシャルメディアと個人情報管理などに課題が残っており、望ましい社会を作るために、視聴者自身が行動することを促し講演を締めくくりました。

●国内外の事例紹介

「AIとジェンダー」1分

国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)
 AIには、ジェンダー・バイアスがあること、機械学習やAIの仕事をしている人の大半が男性であり、強靭で豊かな社会をつくるためにはAIにも多様性が求められる点がわかりやすく解説されています。

「アプリを使った女性にやさしい安全な街づくり」18分

カルパナ・ヴィスワナート セイフティピン創設者
 公道やバス停など、都市の公共空間における安全のために、インドをはじめ世界各地での取組を共有。子育て、家事、介護等の無償ケア労働の多くを女性が担っていますが、暴力の危険や恐怖を伴わない安全な移動は、女性が働き、学ぶ権利を守ります。女性の安全な移動のために開発されたアプリ「セイフティピン」を活用し、ボトムアップで収集されたデータが、行政、研究者やNGOに活用され、女性のエンパワメントに役立っている事が紹介されました。

「コンピュータ・プログラミングを通じた女性や少女のエンパワメント」14分

サラーム・アル・ヌクタ チェンジメーカーズ創設者兼CEO/
            平等を目指す全ての世代のためのフォーラム・タスクフォース

 2016年、シリアの若者のIT教育のためにチェンジメーカーズを立ち上げた経験を紹介。特に、女性を含むあらゆる人が技術開発に参加することは雇用創出や経済成長だけでなく、社会の変化、平和につながる点や、デジタル技術分野の男女間格差解消のため、男女が同じ環境でコンピュータ・プログラミングを学ぶ機会を提供するに至った経緯について触れました。「技術は男の子のもの」「女の子が科学技術を勉強すると家庭をおろそかにする」という社会規範を考慮し、ステークホルダーに働きかけた結果、多くの女性が必要な情報を得て決断できるようになった事を力強く語りました。

「ロボティクス技術で介護の変革に挑む」

宇井吉美 株式会社aba代表取締役
 テクノロジーで誰もが介護したくなる社会を作るため、介護ロボットを開発・商品化されてきた経験を報告。家族の介護をした経験から、介護者の負担を減らす「介護ロボット」について研究し、匂いを検知するセンサーを搭載したシート(Helppad)を開発し、AIを使ってクラウドに記録されたデータから排泄パターンを予測することで介護者と被介護者双方の負担を減らすケアテックを推進しています。「子育てや介護でキャリアが止まらない社会を作る」ため、従業員の誰もが働き続けられる環境づくりを促進し、少子高齢化の課題をテクノロジーで解決するための取組が紹介されました。

●パネルディスカッション「ジェンダー平等なデジタル技術の活用に向けて」

 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)センター長 大阪大学名誉教授 小林傳司氏は、RISTEXは文理融合する研究に研究資金を提供しておりフェムテックの研究は、人口の半分である女性を対象とする重要な研究である点を強調されました。AIによる顔認識の精度に現れる人種や性別に対するアルゴリズム・バイアスに係る課題についても触れました。

 特定非営利活動法人Waffle共同創業者 田中沙弥果氏は、小学生ではジェンダー差が見られなかったコンピュータに対する関心は、中高生になると20対1で女子学生の割合が小さくなり、大学工学部やIT分野の仕事に興味をもっている女性も少なくなるとデータを示し、その原因は女子の進路選択に関する偏見にあると問題提起しました。Waffle では女子学生のためのICT学習機会を提供しており、参加した女子学生の意識や行動が変わってきていること、活動から得られた知見を政策提言にもつなげていると紹介しました。

 一般社団法人コード・フォー・カナザワ代表理事 福島健一郎氏は、「シビックテック」を「市民主体で望む社会を作り上げるための活動とそのためのテクノロジーのこと」と位置づけます。子育てに役立つ情報が入手できるアプリをお母さんたちが中心となって、開発した事例から、社会課題を「自分ゴト」として当事者の視点で捉え、テクノロジーで課題解決をするシビックテックの特徴を紹介しました。加えて、子供たちが女性の偉人が沢山いることを知ることができるアプリ等、多様な課題を解決するためのジェンダーテックの役割についても説明しました。

 後半のディスカッションでは、性別や年齢にかかわらず多様な人々が「自分ごと」として技術の開発・改良に参画できる仕組みの重要性や、テクノロジー分野への女性の参画が限定的である要因等について、活発な議論が展開されました。

 ジェンダー平等の推進のために私たち一人ひとりが何をすべきなのかについて、多角的な意見が交わされた有意義なセミナーとなりました。


 本セミナーはWAW!2022 WAW!ウィークス公式サイドイベントとして開催しました。
 国際女性会議WAW!(World Assembly for Women)は、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントという日本政府の最重要課題の1つを国内外で実現するための取組の一環です。

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