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実施報告

令和2年度 課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」

開催期間:令和2年11月20日(金),令和3年1月28日(木)~29日(金)


国立女性教育会館は、令和2年11月20日および令和3年1月28日から29日まで、国際協力機構(JICA)からの委託事業として課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」を開催しました。
今年度は、コロナウイルス感染症拡大防止のため、2017年から2019年に開催した本研修に参加をした、
カンボジア、タイ、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、ラオスの6か国から、人身取引対策の予防と保護分野の担当者を対象としています。

令和2年度 課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」実施要項

1.趣 旨
  国際協力機構(JICA)がアセアン諸国において実施する、人身取引被害者保護・社会復帰・被害の予防
 の分野でのプロジェクトのカウンターパートおよびアセアン地域の人身取引対策に携わる関係者を対象と
 したワークショップ型研修を実施する。3年計画の最終年*。   
  人身取引撲滅と被害者保護は一国のみで対応できる課題ではなく、国境を越えた広域的課題として対応
 するためにも、アセアン地域におけるネットワーク形成が重要である。参加者が日本を含め、互いの国の
 人身取引対策に関する取り組みについて相互理解を深め、特に予防、被害者の保護と自立支援に携わる関
 係機関の役割や協力体制等について把握し、参加者間で人身取引対策に取り組む機関の機能強化や連携、
 国を越えたネットワークの強化に資する方策を検討することを目的として行われる。

2.主  催    独立行政法人国際協力機構(JICA)

3.実施機関    独立行政法人国立女性教育会館

4.協  力    内閣官房、外務省、厚生労働省、警察庁、法務省、出入国管理在留庁、東京都、
          国際移住機関(IOM)、人身売買禁止ネットワーク(JNATIP)、一般社団法人社会
          包摂センター 他

5.期  間    第一部 オリエンテーション:令和2年11月20日(金)
              オンデマンド学習:令和2年12月下旬~令和3年1月27日(水)
          第二部 ライブセミナー:令和3年1月28日(木)~29日(金)

6.対  象    22名(男女)
   2017年~2019年に開催した人身取引に関する本研修に参加した、カンボジア、タイ、フィリピン、
   ベトナム、ミャンマー、ラオスの人身取引対策の予防と保護の分野に携わっている者
   (中央・地方政府機関)。

7.研修項目
 (1)コロナウイルス感染症の拡大が、特に女性や女児を含む移住労働者や脆弱な立場の人々に与えた
    影響について各国の状況を共有する
 (2)コロナ禍で拡大したオンラインを通じた搾取の手口や被害、それに対する対策について、情報を
    交換する
 (3)国際協力機構(JICA)が実施したフォローアップ調査の結果も踏まえ、人身取引被害・加害者訴
    追、被害者保護・帰還・社会復帰の一連のプロセスを改善するために、各国で今後協力できる方
    策について検討する

8.使用言語  英語

9.日  程  
          *第2部の時間については、若干変更となる可能性があります

 *本研修の前身として、「人身取引に関する日タイ合同ワークショップ」(平成21~24年度)、「国別研修
  ミャンマー」(平成24~25年度)、「国別研修ベトナム」(平成24~25年度)、地域別研修「アジア諸国に
  おける人身取引対策協力促進セミナー」(平成24年~26年度)、課題別研修「アセアン諸国における人身
  取引対策協力促進」(平成27年~29年度)が、国立女性教育会館を実施機関として開催されている。
  本研修も平成30年度から3年計画で実施予定である。
   なお、タイの「メコン地域人身取引被害者支援能力向上プロジェクト」の関係者を対象にした国別研
  修が、別途、JICA関西で開催されている。

 オンラインで開催された本セミナーは、本邦研修で毎年共有してきた各国の対人身取引体制の確認と、コロナ禍で移住労働者等が直面した人身取引被害と各国が進めた対策について相互に学びあい、ネットワークを深めることを目的としています。
 研修は、11月20日のライブオリエンテーション、オンデマンド学習、1月28日と29日に「移住労働者と人身取引」「オンラインによる性的搾取」をテーマに開催されたライブセミナーで構成されました。通常業務と並行しながらで、ネットワークやIT環境が良くない参加者もいましたが、日本の関係団体・有識者及びJICA地域事務所のスタッフも拡大参加者として加わり、活発な議論が交わされました。

11月20日(金) オリエンテーション 11時30分~13時00分

 NWEC大会議室からZOOMのオンラインライブオリエンテーションとして、6か国22名の参加者と地域事務所関係者を繋ぎました。
 日本は11時30分開始ですが、時差のためミャンマーは8時30分、タイ・ベトナム・ラオス・カンボジアは9時、フィリピンは10時開始となります。参加者同士が初めて全員顔を合わせ、2か月以上にわたるセミナーの日程やオンデマンドプラットフォームの使用方法、課題について説明を行いました。

NWEC大会議室

オンラインオリエンテーション

12月20日(月)~2月1日(月) オンデマンド学習

 オンライン研修の前半は、コロナの影響により職場に出社できない場合や自宅のネットワーク・IT環境が良くない研修員の事情も勘案して、オンデマンド学習を実施しました。
 プラットフォーム上に「1.研修員と拡大参加者の紹介」「2.カントリーレポート」「3.JICAプロジェクト(タイ・ベトナム・ミャンマー)紹介」「4.日本の団体の取組概要」に関する情報と「5.質問・コメント受付」を設け、研修員や拡大参加者は各自の都合に合わせて各国の事情や団体の取組について学習しました。

オンラインプラットフォーム画面

カントリーレポート発表(カンボジア)

カントリーレポート発表(フィリピン)

日本の団体紹介(移住者と連帯する全国ネットワーク)

日本の団体紹介(JNATIP)

JICAプロジェクトの紹介(ミャンマー)

JICAプロジェクトの紹介(ベトナム)

1月28日(木)~29日(金) ライブセミナー

1日目

 初日は「各国のコロナ禍における財弱な人々と人身取引」をテーマに、午前中は参加6か国からコロナ禍における各国の人身取引被害と課題について最新の状況について報告が行われました。
 感染者数や死者数など、国によってその被害の大きさや政府の対策が異なる一方で、観光や保健医療など女性が多いセクターでの経済的影響が大きいこと、特に脆弱な立場にある移住女性や無償労働を多く担う女性の負担が大きいことが共通課題としてあげられました。

カントリーレポート発表(ラオス)

カントリーレポート発表(タイ)

午後のセッションでは、日本における在住外国人がコロナ禍で直面した困難や人身取引被害について支援関係団体から報告が行われました。
移住者と連帯するネットワークからは「緊急支援金活動」と在日移住者や難民が直面した就労機会の喪失や帰国困難から生じた経済的困難について、よりそいホットラインや社会福祉法人一粒会、在日タイ人ネットワークやウェラワーリーなど、在住外国人の電話相談や同行支援を行う団体からもコロナ禍で在住外国人に対するDVを含む暴力被害やわかりやすい情報の不足、支援活動自体の困難などについて報告がありました。

2日目

 2日目の午前は「性的搾取と若年女性に対する性暴力被害」をテーマに、日本とタイの取組が発表されました。
 日本からは特定非営利活動法人ぱっぷすが「若年層が意に反して撮影された性的画像をインターネット上に拡散される被害の実情や被害者に寄り添った支援活動」について報告しました。
 タイからは人身取引を含む児童のオンライン性的搾取や虐待問題に取り組むタイ警察のタスクフォースとHUGプロジェクトから「両者が捜査から被害者保護まで共同で取り組む一連の流れやロックダウン中に100人以上の児童を保護した活動内容」について報告がありました。

 午後は、国毎にZoom上のブレークアウトルームやJICA事務所に集合して、アクションプランについて30分間討議しました。
 国毎に発表されたアクションプランでは、各国のコロナ禍の状況や好事例の取組について学びあうことができたことや、ASEANで情報やデータを共有することの重要性、スタッフの一層の能力強化や研修の必要性などについて報告がありました。

 2日間を通じて日本を含む7か国から研修員を含めて70名以上の関係者が出席したオンラインセミナーでは、各国がコロナ禍で共通する課題に直面する一方で、異なる状況や課題があることを共有し、今後一層の連携を進めることが重要であることを確認できました。次回は、全員が直接会って意見交換できることを期待してオンラインセミナーを終えました。

記念撮影(研修員、拡大参加者、JICA、NWEC)

 最後に、本セミナーの実施にあたりオンライン教材の作成や意見交換で多大なるご協力をいただきました関係者の皆様に心よりお礼を申し上げます。

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