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第66回 国連女性の地位委員会(ハイブリッド開催)報告

開催期間:2022年3月14日(月)~3月25日(金)


 第66回 国連女性の地位委員会(CSW)が2022年3月14日~25日の日程で開催されました。

第66回CSWの概要

 新型コロナウイルス感染症拡大防止対策が取られる中、第66回CSWは国連本部(ニューヨーク)にてハイブリッド形式で開催されました。本会議には3年ぶりに国家元首や閣僚級の政府関係者が100名以上現地に集まりました。優先テーマ「気候変動、環境及び災害リスク削減の政策・プログラムにおけるジェンダー平等とすべての女性・女児のエンパワーメントの達成」とレビューテーマ「変化する仕事の世界における女性の経済的エンパワーメント(第61回CSW合意結論)」を中心に、閣僚級円卓会合、インタラクティブ・ダイアローグ、対話型専門家パネルが行われました。CSWがジェンダーの視点から気候変動、環境及び災害リスク削減を独立したテーマとして取り上げたのは、1987年に活動計画を策定して以降初めてのことです。

     国連本部で行われた開会式
  (写真:UN Photo / Eskinder Debebe)

  今期議長を務めたH.E. Ms. Mathu Joyini
  (写真:UN Photo / Eskinder Debebe)

日本の情報発信

 日本からは、閣僚級円卓会合(15日)、一般討論(17日)において、優先テーマに関する日本の取組について、野田聖子女性活躍担当大臣・内閣府特命担当大臣(男女共同参画)が、ビデオメッセージ形式でステートメントを述べました。ステートメントでは、気候変動、環境及び災害リスク削減の政策・プログラムの意思決定過程に女性が主体的に参画し、女性と男性の影響やニーズに配慮した取組を行うことが災害に強い社会の実現に不可欠であると強調し、日本の防災分野の重要事項を決定する会議における女性の参画拡大をはじめとする取組について発信しました。また、インタラクティブ・ダイアローグ「COVID-19からの回復をジェンダー平等と持続可能な未来のために活用する」(24日)において、林伴子内閣府男女共同参画局長が発言し、東日本大震災以降、災害対応に女性の視点を取り入れた経験を踏まえ、コロナ対策においても「女性の経済的自立」を軸とした女性の視点からの取組が重要であり、ポストコロナの「ニューノーマル」な世界を見据えて、困難な状況にある女性や女児が取り残されることがないよう、日本政府として全力で取り組んでいくことを強調しました。

市民社会イベント

 CSW会期中は、市民社会組織による女性の地位向上に向けた取組の報告や議論が毎年活発に行われています。例年は国連ビルの内外で、連日優先テーマやレビューテーマに関連する多数のイベントが開かれますが、今年のサイド・イベントとパラレル・イベントは全てオンライン形式で実施されました。
 16日には国連日本政府代表部と国内女性NGO三団体 (JAWW(日本女性監視機構)/国連NGO国内女性委員会/国際婦人年連絡会)の共催で行われたサイド・イベント「エシカルな意識と行動が世界を変える~環境問題へのあらゆる人の参画へ向けて~」が開催されました。イベントでは、森まさこ総理補佐官の開会挨拶に続いて、国内外で活躍するパネリストから、エシカル・サステナブルな製品やサービスを選ぶ消費者が行動を起こすことの重要性、地域の「ゼロ・ウェイスト宣言」、持続可能な開発のための教育、国際協力の現場であるキルギスから「一村一品」をテーマにエシカル消費と女性の経済エンパワーメントについて報告がありました。

レビューテーマ

 CSWでは過去に行われたCSWの議題をレビューテーマとして取り上げ、進捗状況をはかります。今年は、第61回CSW合意結論としてまとめられた女性の経済的エンパワーメントに向けた7つの主たる政策領域について議論が行われました。国連事務総長報告によると、過去5年間で加盟国において合意結論の実施に向けた進捗が確認されたものの、ジェンダー格差や不平等が依然根深く残っており、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による失業や無償ケアワーク・家事労働の増加で、女性や少女が更なる脅威にさらされており、加盟国に対して迅速な投資と行動が要請されました。

合意結論

 CSWでは、その年のテーマについて討議した結果を「合意結論」という形でまとめることが経済社会理事会により定められています。合意結論の原案(ゼロドラフト)を基に長時間に及ぶ議論が交わされ、25日に64パラグラフと5つの決議・決定から成る合意結論が採択されました。
 25日の閉会式では、UN Women事務局長シマ・サミ・バホス氏が、今期の合意結論はCSWが初めてジェンダー平等と気候変動、環境及び災害リスク削減について言及した歴史的文書であると述べ、今後予定されているストックホルム+50、COP27、ハイレベル政治フォーラムに向けた加盟国、国連機関、市民社会組織・NGOの迅速な行動を呼びかけました。合意結論では、完全かつ効果的な女性と女児の意思決定への参画及び平等なリーダーシップの機会の確保、また紛争や移住などの危機的状況下における暴力の増加について、迅速な予防・対応、加害者処罰、被害者保護を訴えています。また、コロナ禍における女性の無償労働の増加にも言及し、女性の回復力強化の重要性、ケア労働における不平等を明らかにしています。さらに、グローバル・アジェンダと行動をさらに加速させるため、ジェンダーに配慮した気候変動対策融資の強化も掲げています。CSWでは、作業方法(Methods of Work)についても議論が行われ、来期からの優先テーマにおいて、インタラクティブ・ユース・ダイアローグが行われることも確認されました。
 今期のCSWでは、多くの政府代表や市民社会組織がロシア軍のウクライナ侵略が女性と女児におよぼしている不均衡な影響について重大な懸念を表明し、合意結論に向けて、女性と女児の保護強化の必要性を訴えました。


NWECの情報発信

 CSWへの市民社会組織の参画を支援してきたNGO CSW/NYは、会期中、市民社会組織によるパラレル・イベントの開催や、展示ブースの開設、ハンドメイド製品を販売することができるオンラインプラットフォームを立ち上げました。今年は日本の団体が主催したパラレル・イベントも含め、800件以上が開催されました。
 国立女性教育会館もこのプラットフォーム上にオンライン展示ブースを開設し、情報発信を行いました。ブースでは日本の男女共同参画の現状をまとめたジェンダー統計資料のほか、日本人有識者による男性・ユース・国際協力・災害リスク軽減の視点からの第66回CSWに向けたメッセージ動画を掲載しました。また、会期中にオープンハウスを4回開催し、会館の主催事業や情報事業等について紹介しました。

NGO CSW66・NWECブース

1. 理事長挨拶

2. 国立女性教育会館紹介

3. 有識者からのメッセージ
 ジェンダー平等へ向けた男性のアクション—「シェア・ケア・フェア」
 多賀太氏 関西大学

4. 有識者からのメッセージ
 ジェンダー平等と女性の経済的エンパワメントに向けたJICAの取り組み
 宮崎桂氏 独立行政法人国際協力機構

5. 有識者からのメッセージ
 生理から見る日本のジェンダーの課題
 谷口歩実氏 #みんなの生理

6. 有識者からのメッセージ
 ジェンダー平等に対応した災害リスク軽減(DRR)の政策とプログラムを
 野々口敦子氏 男女共同参画と災害・復興ネットワーク

国際連携