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実施報告

令和4年度 課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」

開催期間:令和4年12月2日(金)~令和5年1月31日(火)


 国立女性教育会館は、令和4年12月2日から令和5年1月31日まで、国際協力機構(JICA)からの委託事業として課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」を開催しました。
 今年度も、コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、本セミナーはオンラインで開催されました。アセアン3か国(カンボジア、マレーシア、ベトナム)の中央・地方政府機関で主に人身取引対策の予防や保護を担当する行政官とNGO職員の5名が参加しました。

令和4年度 課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」実施要項

1.趣 旨
 国際協力機構(JICA)からの委託を受け、アセアン地域の人身取引対策に携わる関係者を対象とした3か年計画の研修をオンラインで実施する(3か年計画の2年目)。
 国境を越えた広域的課題である人身取引問題のより良い解決に向けて、国を超えた関係者間の協力や情報共有の強化に資する研修を実施する。
 本研修の成果として、各国の取組強化に向けた成果報告書を作成する。

2.主  催    独立行政法人国際協力機構(JICA)

3.実施機関    独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)

4.期  間     
オンデマンドプログラム
 令和4年12月2日(金)~令和5年1月31日(火)
ZOOMライブセミナー
令和4年12月2日(金)または5日(月) 接続テスト含む国別オリエンテーション
令和5年1月11日(水)         オリエンテーション
令和5年1月12(木)、17日(火)、18日(水)
                     インセプションレポート発表・取組紹介
令和5年1月31日(火)          最終報告会と評価会

5.対  象    11名
 カンボジア、ラオス、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの人身取引対策の予防と保護の分野に携わっている者(中央・地方政府機関等)。

6.研修項目
(1)各国政府の人身取引対策や人身取引の現状について理解する。
(2)各国の市民組織団体による人身取引被害者支援策について理解する
(3)各国の人身取引被害・加害者訴追、被害者保護・帰還・社会復帰の一連のプロセス及び関係団体の役割及び好事例について検討する。
(4)上記(1)~(3)を通して、国内及び国を超えたネットワークの強化に資する情報をまとめる。

7.使用言語  英語(部分的に各国言語通訳あり)

8.日  程

 オンラインで開催された本研修は、各国の人身取引対策に関する取り組みについて相互理解を深め、特に予防、被害者の保護に携わる関係機関の役割や協力体制等について把握し、参加者間で人身取引対策に取り組む機関の機能強化や連携、国を越えたネットワークの強化に資する方策を検討することを目的としました。
 参加者は通常業務と並行しながらの研修となりましたが、日本政府の取組を含めた各国の施策やサイバートラフィッキングの現状、当事者視点に立った支援の在り方や外国人労働者の受入環境を整える取組等に関する講義を受けて、被害者との信頼関係の構築や関係機関との連携、支援者の能力強化や支援者が疲弊しない体制づくり等について意見交換を行いました。

オンデマンド学習とオリエンテーション

 12月2日(金)から開始したオンデマンド学習として、内閣官房、東京都女性相談所、国際移住機関(IOM)、JICA、責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム(JP-MIRAI)による取組についての7本の動画を掲載しました。1月11日(水)には、NWECの会議室から参加者の国をZoomで繋ぎ、オンラインライブオリエンテーションを実施しました。自己紹介とJICAの取組紹介に続き、参加者からは各国の人身取引の全体的な状況に加えて、参加者自身が日常の業務で抱えている課題が共有されました。

          オンラインのワークシートを使って各国の人身取引の課題を共有

1月12日(木)、17日(火)人身取引被害や対策について各国からの紹介

 2日間に分けて参加者が事前に作成した資料をもとに各国の人身取引被害や対策について報告がありました。タイからは、JICAが協力しているピア・サポート・グループ(Live our Lives(LOL))からの活動紹介もありました。参加者からは、各自が抱える課題として、人身取引に対して脆弱な貧困世帯や困窮世帯を対象とした支援を行うための信頼性の高いデータ収集や関係機関との連携強化、電話相談では外国語を話す被害者を十分に支援できていない、シェルターが不足しているために保護した被害者の経済的な自立につながらず繰り返し人身取引に巻き込まれてしまう、偏見があるために地元に戻った人身取引被害者がコミュニティーに戻れず孤立してしまう、自国の人身取引の定義が国際スタンダートと乖離しているため、被害者を保護対象とするか不法入国者として扱うかの判断が難しい、人身取引課題への認識が十分ではない法執行当局によって保護できるケースが限定的となっている、等が挙げられました。 

人身取引被害や対策について各国からの紹介の様子

1月12日(木)17日(火)、18日(水)日本の事例報告と演習

 日本からの報告として、東京都女性相談所やIOMによる被害者保護といった公的な支援の概要説明に加え、米国におけるタイ国籍の人身取引被害者支援やJICAがミャンマーで実施した被害者中心アプローチによる被害者支援のための実務者研修(TOT)の事例、サイバー人身取引被害についての事例が紹介されました。増加しているサイバー被害についての啓発や、信頼関係を構築するためには対話の継続が重要であること、当事者視点に立った支援をするための支援者の能力強化と被害者との信頼関係構築、支援者側が疲弊しないためのセルフケアが質の高い支援の基礎であるという点も共有されました。
 また外国人労働者に対する日本の入国管理体制の課題をはじめ、JP-MIRAIのプラットフォームの紹介が行われました。参加者から、JP-MIRAIの民間企業との連携について質問があり、技能実習生をはじめとする外国人労働者の労働環境を人権として守る企業の責任が注目されている状況等が共有されました。
 グループ演習では、講義や意見交換を踏まえて得られた学びを確認しました。

              オンラインワークシートを使った参加者による意見交換

1月31日(火)最終報告・評価会

 最終報告として、参加者から本研修の学びを今後の業務にどのように活かしていくかを含めたアクションプランが発表されました。発表では、既存の研修や啓発活動に、人身取引被害と対策についての周知・啓発を追加すること、他省庁やNGOとの連携強化による外部資金、人材、ノウハウ、ネットワークを活用すること、当事者の立場に立った対話を続け信頼構築を大切にすることという抱負も報告されました。
 
 人身取引は国境を越えて行われている深刻な犯罪であり、参加者からは今後のさらなるネットワーク強化を望む声が聞かれ、参加者同士のネットワーク維持のためにSNSグループページが開設されました。また、本研修の成果は、JICAとタイ政府が共催予定のメコン地域の人身取引対策ワークショップやJICAがASEAN地域で展開する人身取引プロジェクト等で活用される予定です。

 最後に、本セミナーの実施にあたり多大なるご協力をいただきました関係者の皆様に心よりお礼を申し上げます。

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