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実施報告

令和7年度バングラデシュ国別研修「ジェンダーに基づく暴力撤廃に向けた能力強化」

開催期間:令和7年7月7日(月)~令和7年7月25日(金)


国立女性教育会館は、国際協力機構(JICA)からの委託を受け、令和7年7月7日から25日まで、バングラデシュ国別研修「ジェンダーに基づく暴力(GBV)撤廃に向けた能力強化」を開催しました。この研修には、バングラデシュの南東部に位置するコックスバザール県を中心としたGBV対策に携わる行政官とNGO職員の合計14名が参加しました。

本研修は、3週間にわたる来日プログラムとして実施されました。研修の目的は、国際的な基準である被害者中心アプローチに基づく支援や、日本とバングラデシュのGBV対策、および民間の取組と多機関連携について理解を深めることです。講義や訪問を通じて、多様な機関に所属する参加者同士で活発な意見交換や情報共有が行われました。プログラムの終盤では、参加者が帰国後に実施する研修計画を作成し、最終報告会で発表しました。

第1週:7月7日(月)~11日(金)

プログラムのオリエンテーション後、参加者は各自のGBV対策における役割を発表し、互いの機関について理解を深めました。大谷美紀子弁護士による基調講演では、GBV撤廃に向けた国際法の枠組みや、女子差別撤廃条約の歴史的経緯について学びました。
日本政府の取組として、内閣府からは男女共同参画施策について、文部科学省からは「生命(いのち)の安全教育」についての講義がありました。バングラデシュは、政治や教育分野のクオータ制やポジティブアクションにより、世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ・ランキングが日本より高い一方、児童婚が深刻な課題であることも共有されました。「生命(いのち)の安全教育」が、性暴力の被害者、加害者、傍観者にならないための多面的な啓発であることに関心が寄せられました。
また、JICAのGBV撤廃に向けた取り組み方針や、パキスタン・ケニアの案件における事例紹介を通じ、パイロット活動の形成・実施のプロセスや重要な視点についても学びました。

発表の様子発表の様子

基調講演講師との記念写真基調講演講師との記念写真

グループ討議の結果を説明する参加者   グループ討議の結果を説明する参加者   

コラボレーション実践研究所の山中京子所長による講義とワークでは、行政、司法、医療、NGOといった多岐にわたる関係機関の連携の意義を確認しました。
地方自治体と協働するNPO法人女性ネットSaya-Sayaでは、暴力の背景にある偏見や思い込みを可視化するワークを行い、非暴力社会の基盤となる考え方を話し合いました。

連携についての模擬事例に基づくワーク 連携についての模擬事例に基づくワーク

暴力の根底にある偏見について考えるワーク暴力の根底にある偏見について考えるワーク

第2週:7月14日(月)~18日(金)

NPO法人女性・人権支援センターステップの栗原加代美理事長による、DV加害者プログラムについて対話形式の講義後、バングラデシュでも加害者を対象にしたアンガーマネジメントが必要であるという意見が出ました。
一般社団法人日本フォレンジックヒューマンケアセンターの長江美代子代表理事の性暴力支援ワンストップセンターについての講義では、トラウマ・インフォームド・ケアについて学び、記憶力や判断力の低下といったトラウマを抱える被害者への支援理解が深まりました。

加害者プログラムについての講義加害者プログラムについての講義

グループ討議に取り組む参加者グループ討議に取り組む参加者

男女共同参画センター横浜「フォーラム」を訪問し、情報ライブラリや相談センター、様々な講座を通じて、女性のエンパワーメントやスキルアップ、さまざまな行政の支援に繋がる窓口としてセンターが機能していることを学びました。当日は、JICA横浜センターの海外移住資料館も訪問し、日本の移住の歴史に触れました。

男女共同参画センター横浜「フォーラム」での講義男女共同参画センター横浜「フォーラム」での講義

日本の移住の歴史に触れた海外移住資料館の見学日本の移住の歴史に触れた海外移住資料館の見学

大東文化大学の齋藤百合子特任教授による講義では、日本在住の外国人コミュニティが直面している課題や多文化共生社会をすすめる上での、インターネットやSNS上のリスクが話し合われました。
GBV被害者の支援現場である自治体の取組について学ぶため、東京都中野区役所を訪問しました。酒井直人区長のご挨拶に続き、ユニバーサルデザイン推進担当課長から、区の男女共同参画の取組や公立学校での啓発事業について伺いました。続いて、中野区を拠点とするNPO法人女性のスペース結からは、DV被害者女性の居住支援や子ども食堂の取組を通じて、地域で安心して暮らせる環境づくりがGBV被害者支援に不可欠であることを学びました。

中野区長表敬訪問   中野区長表敬訪問

女性のスペース結の子ども食堂への訪問女性のスペース結の子ども食堂への訪問

法務総合研究所の山下拓郎国際協力部教官の講義では、子どもの被害者への二次被害やトラウマから保護するための司法面接について学びました。
NPO法人レスキュー・ハブの代表による講義の後は、夜のアウトリーチ支援の現場を見学しました。

第3週:7月22日(火)~25(金)

NPO法人チャイルド・ファンド・ジャパンからは、バングラデシュでも問題となっているオンライン性的搾取(CSAM)の法規制強化、生成AIによる被害の急増などについて情報提供を受けました。
一般社団法人社会的包摂サポートセンターの訪問では、全国規模のホットラインやSNS相談による伴走支援について話を聞きました。多言語による支援への関心が高く、参加者からは、母語での相談サービスが相談者を安心させるだろうという感想が聞かれました。

チャイルド・ファンド・ジャパンによる講義チャイルド・ファンド・ジャパンによる講義

社会的包摂サポートセンターへの訪問社会的包摂サポートセンターへの訪問

SOGIESCの概念についての講義では、支援の枠組みを策定する際にマイノリティが直面する課題を把握し、支援が必要なすべての人々を取りこぼさないことの重要性が強調されました。
最終週には、参加者が帰国後に協力して実施する研修案をまとめ、オンライン発表会で報告しました。閉講式では、修了証書が一人ひとりに授与され、3週間に及ぶ来日研修が締めくくられました。

オンライン発表会オンライン発表会

閉講式における参加者代表のスピーチ閉講式における参加者代表のスピーチ

研修にご協力いただいた関係省庁、中野区役所、男女共同参画センター横浜「フォーラム」、民間団体、研究者の講師の皆さまに、この場をお借りして感謝申し上げます。

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