国際連携

国際協力機構との連携

実施報告

令和7年度課題別研修「ジェンダーに基づく暴力の撤廃」

開催期間:令和7年9月2日(火)~12月11日(木)


国立女性教育会館は、令和7年9月2日から12月11日まで、国際協力機構(JICA)からの委託事業として、課題別研修「ジェンダーに基づく暴力(SGBV)の撤廃」を開催しました。参加者はバングラデシュ人民共和国、ボツワナ共和国、モルディブ共和国、ネパール、ナイジェリア連邦共和国、ニウエ、パキスタン・イスラム共和国、サモア独立国、南スーダン共和国、スリランカ民主社会主義共和国、東ティモール民主共和国、ザンビア共和国、ジンバブウェ共和国の国や地方自治体の職員、および市民社会組織においてSGBV対策に携わる職員の合計13名です。

令和7年度課題別研修「ジェンダーに基づく暴力の撤廃」実施要項

1.趣 旨
  国際協力機構(JICA)からの委託を受け、ジンダーに基づく暴力(SGBV)対策に携わる関係
  者を対象とした研修を実施する(3年計画の1年目)。
  日本の行政や民間の取組の経験及び知見を踏まえつつ、SGBV の予防や被害者の保護、自立・
  社会復帰、加害者処罰に向けた取組のあり方について相互に学びあう。

2.主 催   
  独立行政法人国際協力機構(JICA)

3.実施機関   
  独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)

4.開催場所
  JICA 東京(東京・幡ヶ谷)ほか

5.期 間
  令和7年9月2日(火)~12月11日(木)
  オンデマンドプログラム
  令和7年9月2日(火)~10月10日(金)
  ZOOM ライブセミナー
  令和7年9月2日(火)・4日(木)コース概要説明と参加者紹介
  ※令和7年12月11日(木) アクションプランの進捗報告会
  来日プログラム
  令和7年9月21日(日)来日
  令和7年9月22日(月)来日後オリエンテーション
  令和7年9月24日(水)基調講演
  令和7年9月25日(木)~10月8日(水)講義、視察、グループ討議
  令和7年10月9日(木)~10日(金)アクションプラン報告、成果発表会と評価会
  令和7年10月11日(土)離日

6.対 象
   海外研修員 13名(13か国)
  バングラデシュ、ボツワナ、コートジボワール、モルディブ、ナイジェリア、ネパール、ニ
  ウエ、パキスタン、サモア、スリランカ、東ティモール、ザンビア、ジンバブウェのSGBV 対
  策に携わる政府関係機関の管理職以上並びにSGBV 対策に従事するNGO/NPO 幹部。

7.研修項目
  (1)参加国及び日本におけるSGBV の撤廃に向けた取組の経験や知見・教訓、課題を共有する。
  (2)SGBV の撤廃に向けた取組における国際的なスタンダードである「被害者中心アプローチ」
     に基づく支援のあり方への理解を深めるとともに、実施強化を図る。
  (3)参加国においてSGBV の撤廃に向けた取組を強化するためのアクションプランを作成する。

8.使用言語   英語

9.日程

本研修は、来日前のオンライン・オリエンテーション、約3週間の来日対面プログラム、オンライン・フォローアップという構成で開催されました。参加者は、SGBV対策に関する講義や関連施設の訪問を通して、国際的スタンダードである被害者中心アプローチに基づく支援のあり方や、日本を含む各国のSGBV対策の関連施策や行動計画、行政および民間の取組について相互理解を深めました。プログラム終盤では、参加者それぞれが自国における取組強化に向けたアクション・プランを作成し、オンライン成果発表会で発表しました。

修了式での集合写真 修了式での集合写真

1.来日までのオンラインプログラム(9月2日~21日)

9月2日、4日の2回に分けて、オンライン・オリエンテーションを実施し、所属機関の概要や各自の職務、SGBVに取り組む上での課題についてまとめたインセプションレポートを、参加者がそれぞれ発表しました。また、来日前に、世界や日本におけるSGBVへの取組についてオンデマンド動画で学習し、自国の状況をカントリーレポートとしてまとめました。

2.来日プログラム(9月22日~10月10日)

来日後は最初にプログラム・オリエンテーション、有識者によるジェンダーに基づく暴力の国際潮流についての基調講演から始まり、各国のカントリーレポートが発表されました。その後、内閣府、文部科学省、東京都、北海道警察、札幌市による政府・地方自治体の取組、特定非営利活動法人をはじめとする民間団体による支援やアドボカシー活動についての講義や視察を通じて、さまざまな視点から各国のSGBVの状況と対策について考える機会を得ました。

基調講演基調講演

SGBV対策業務上の課題についての議論SGBV対策業務上の課題についての議論

SGBV対策業務上の課題についての議論SGBV対策業務上の課題についての議論

グループでの意見交換の内容を発表  グループでの意見交換の内容を発表  

3.札幌市訪問

10月1日(水)~3日(金)に札幌市を視察し、行政と民間の被害者中心アプローチに基づく予防、保護、多機関連携の取組を学びました。
札幌市市民文化局男女共同参画室男女共同参画課と特定非営利活動法人女のスペース・おんからの説明では、行政と民間団体のパートナーシップを推進する上での条件について伺うとともに、内閣府で説明された法律や計画が地方自治体でどのように具体化されているか、理解を深めました。参加者からは各機関がそれぞれの専門性を活かした連携によるきめ細やかな支援が行われていることに高い関心が寄せられました。

札幌市の取組についての講師との記念写真札幌市の取組についての講師との記念写真

札幌市子ども未来局子ども育成部子どものくらし・若者支援担当課、および特定非営利活動法人CANによる「札幌市困難を抱える若年女性支援事業「LiNK」」の取組についても説明いただきました。事前に特定非営利活動法人BONDプロジェクトによる若年女性支援のための街頭パトロールの見学も行っていたため、既存の支援サービスの枠組みから取り残されがちな若年女性支援についての理解がさらに深まりました。参加者からも、ボツワナでは夜間の街頭パトロールの取組が実施されていること、ザンビアでは、スポーツを通した女性のエンパワーメントが行われていることなどが共有されました。
会場となった札幌市男女共同参画センターの施設説明も行われました。女性・ジェンダーに関する多くの図書や資料を利用できる情報センター、女性の就業・起業をひとりひとり丁寧にサポートする「ここシェルジュSAPPORO」、各種のセミナーや相談事業等の取組について、参加者は大変熱心に多くの質問をしながら見学を行いました。

札幌市男女共同参画センターの施設見学札幌市男女共同参画センターの施設見学

札幌市内のバス移動札幌市内のバス移動

4.アクション・プランの発表とオンライン成果発表会の開催

研修後半では本研修での学びを帰国後にどのように実践していくか研修員ひとりひとりがアクション・プランを作成し、発表しました。

講義や訪問についてグループで意見交換講義や訪問についてグループで意見交換

思い込みについて認識するワーク思い込みについて認識するワーク

ひとりひとりが発表するアクション・プランには、参加各国の取組や日本での視察や講義、意見交換を通じて得られた知見と被害者中心アプローチや連携強化などの視点が組み込まれました。取り上げられたテーマは、SGBVに対応する警察、社会福祉、医療や司法関係者等への研修の実施、研修教材や対応ガイドラインの改良、被害者ニーズの把握調査の実施、関係機関連携強化のための会議開催、地域リーダーに対する啓発、学校教育での取組などさまざまです。日本の取組を自国にも導入したいという声も多く、文部科学省による「生命(いのち)の安全教育」や多言語のホットラインによる相談支援、特定非営利活動法人ぱっぷすによるデジタル技術を活用したオンライン性的搾取被害者支援の取組、DV加害者に対するプログラムなどがあげられました。

アクション・プランの発表 アクション・プランの発表 

オンライン成果発表会オンライン成果発表会

最終日には、本研修の成果発表会をJICA関係者や視察先の講師の方々を対象にオンラインで開催しました。

5.オンライン・フォローアップ・ミーティング

参加者は、12月11日にオンライン・フォローアップミーティングに参加し、アクション・プランの進捗について報告する予定です。

研修にご協力いただいた関係省庁、東京都、札幌市、札幌市男女共同参画センター、専門家、民間団体の講師の皆さまに、この場をお借りして感謝申し上げます。

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