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実施報告

平成27年度「女性関連施設相談員研修」

開催期間:平成27年6月10日(水)~ 12日(金)  <2泊3日> / 定員:80名

開催場所:国立女性教育会館 /


事業内容

 女性のエンパワーメント支援を目指し、複雑・多様化する女性の悩みに適切に対応できる相談業務の質の向上を図るため、女性に対する暴力や女性の貧困など、喫緊の課題解決に必要な知識・技能習得のための、専門的・実践的な研修を実施。

1. 趣  旨

 女性関連施設の相談員を対象に、女性のエンパワーメント支援と女性に対する暴力や貧困などの喫緊の課題解決を目指して、相談者への理解の深化や必要な知識・技能習得、関係機関との連携促進を図るための研修を行います。複雑・多様化する女性の悩みに適切に対応できる相談員の育成と業務の質の向上に向けた専門的・実践的研修です。

2. 主  催

独立行政法人 国立女性教育会館

3. 会  場

国立女性教育会館
〒355-0292 埼玉県比企郡嵐山町菅谷728
TEL 0493-62-6725
FAX 0493-62-6720
Eメールアドレス   progdiv@nwec.jp
ホームページ URL http://www.nwec.jp/

4. 期  日  

平成27年6月10日(水)~ 6月12日(金) 2泊3日

5. 参 加 者

 公私立の女性会館・女性センター、男女共同参画センター等の女性関連施設において、女性の悩みに関する相談業務に携わっている相談員

6. 定  員  

80名

7. 内  容

第1日 6月10日(水)

(1)開会
 13:15~13:30
   ① 主催者あいさつ
   ② プログラム説明

(2)講義1「男女共同参画の視点に立った女性相談とは」
 13:30~15:00
 女性関連施設における相談業務の意義と役割について、女性が抱える問題解決と女性のエンパワーメントの視点から学びます。
    講 師 須藤 八千代 愛知県立大学名誉教授
               大阪市立大学人権問題センター特別研究員

(3)講義2「女性相談の実態と支援に関する法知識」 
 15:15~17:15
 実際によくある女性からの相談の事例などを交えながら、関係機関との連携の仕方や法的措置など、相談員として知っておくべき法知識を学びます。
    講 師 白石 美奈子 とらすと法律事務所弁護士
               横浜弁護士会犯罪被害者支援委員会委員長

 ●オプションプログラム(希望者のみ)
  情報交換会
 19:00~20:30
  相談業務における課題などの情報交換と参加者同士のネットワークづくりを行います。

第2日 6月11日(木)

(4)情報提供「相談事業に役立つ国立女性教育会館の情報機能」 
 9:00~9:30
 女性情報ポータルWinet(ウィネット)と女性教育情報センターの紹介を通じ、相談事業に役立つ情報の活用について情報提供します。
  説 明  国立女性教育会館情報課専門職員

(5)講義3「女性と貧困」
 9:45~11:45
 現代の複雑な社会構造の背景を学び、女性や子どもを取り巻く貧困について理解を深め支援の仕方を探ります。
    講 師 川原 恵子  東洋大学 社会学部社会福祉学科講師

(6)講義4「子どもへのDVと母親支援」
 13:00~14:30
   児童虐待や母親へのDVを目撃した子どもの心のケア、母親への援助や支援などを考えます。また諸機関との連携ついても学びます。
    講 師 春原 由紀  武蔵野大学名誉教授

(7)分科会1「当事者の課題別ケース検討」
 14:45~17:15
 課題を抱える当事者に対して実際にどのように支援をしていったらよいのか、課題別コースに分かれて、講義とワークショップで学びます。

   A:人間関係に関する相談者への支援
 夫婦、子ども等の家族の問題、また職場や男女間、近隣等に関する相談から見えてくる女性が抱える背景や課題を考えます。また、人との関係性を巡る問題をどう捉え、女性への支援につなげるかについて学びます。
   講 師 景山 ゆみ子 前名古屋市男女平等参画推進センター相談担当主幹

   B:DV・性暴力の社会的構造と心理的背景
 配偶者等からの暴力被害について、フェミニストカウンセリングの視点から、相談員が理解しておくべき社会的な構造やその背景などを学びます。
   講 師 平川 和子  東京フェミニストセラピィセンター所長

   C:DV・性暴力被害からの回復自立支援
 配偶者暴力相談支援センター等における事例をとおして、支援理念、対応の仕方、相談者のエンパワーメントにつなげる支援を学びます。
   講 師 近藤 恵子  特定非営利活動法人全国女性シェルターネット理事 

   D:子どもの心のケア(講義および施設見学)
 「子どもの心のケアハウス嵐山学園」に入所している児童生徒が適切な教育をうけられるよう設置された学園内教室を見学。心理面・学習面・生活面でのケアを学ぶとともに関係機関との連携などについて学びます。
      講 師 岩崎 広巳  埼玉県立東松山特別支援学校
                こどもの心のケアハウス嵐山学園内教室教頭
      見学先 埼玉県立東松山特別支援学校こどもの心のケアハウス嵐山学園内教室
          住所:〒355-0221 埼玉県比企郡嵐山町大字菅谷字東原264-1
 ●オプションプログラム(希望者のみ)
   体験 ~癒しの時間~クリスタルボウルで癒されよう
 19:00~20:30
 クリスタルボウルはその名の通り水晶でできた楽器です。大小さまざまなクリスタルボウルの波動は、演奏したり、聴いたりすることによって心身のストレスがとれ、リラクゼーション効果があります。この音色を皆さんで体感しましょう。
*参加者はヨガマットかバスタオルをご持参ください。
      講 師 菊池 潤佳/小倉 由美子 クリスタルボウル演奏家

第3日 6月12日(金)

(8)分科会2「適切な支援を行うための力量を身につける」
 9:00~11:00
相談者への対応や問題解決を目指して、相談業務に役立つヒントや知識を学びます。

  A:多文化共生社会への対応
 近年増えている在住外国人からの相談や国際結婚による家族間の相談についてその背景を学びます。また、実際の相談事例の紹介もふまえながら、生活、文化についても理解を深め、今後の対応に必要な知識、連携について学びます。
      講 師 加山 勤子  公益財団法人静岡県国際交流協会総務課長 
           石井 ナナヱ 埼玉県指定・認定特定非営利活動法人
                  ふじみの国際交流センター理事長

  B:ネット暴力の実情と防止策
 インターネットやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を介した女性に対する暴力やストーカー被害の実情と、その防止策について学びます。
      講 師 及川 直美  埼玉県警察本部子ども女性安全対策課課長補佐

  C:配偶者からの暴力被害の相談の受け方と相談員のメンタルヘルス
 配偶者からのDV相談に当たっての留意点や心の回復について学び、相談員の二次受傷などメンタルヘルスに関する知識も学びます。
      講 師 竹下 小夜子 さよウィメンズクリニック院長

(9)全体会
 11:15~12:25
 相談業務のあり方や相談者のエンパワーメントにつながる支援についての意見交換と共有を行い、これからの相談業務の意義と役割を考えます。
      コーディネーター 引間 紀江 国立女性教育会館事業課専門職員 
      報告者 分科会2講師
                          
(10)閉会・アンケート記入
 12:25~12:30

9. 申込方法・期限等

(1)方  法
   ①インターネット:国立女性教育会館ホームページよりお申し込みください。
   ②郵送・FAX:国立女性教育会館事業課までお申し込みください。

(2)申込期間 
  申込締切日  平成27年6月3日(水)午後5時必着(先着順)
  ※申し込み期間内でも定員に達した場合はお申し込みを締切らせていただきます。

(3)提出書類
 「参加申込書」(別紙1)、「研修に期待すること」(別紙2)

(4)決定通知 
 別紙1記載の連絡先に、文書にて発送します。6月5日(金)までに連絡がない場合は、お手数ですが事業課(Tel:0493-62-6725)にお問い合わせください。

10. 所要経費

(1)参加費 無 料

(2)宿泊費     1泊あたり2,670円
 ※前後泊を含む研修期間中(6月9日~12日)に宿泊の場合
(3)食 費     1日3食 2,500円程度

(4)情報交換会費  1,000円(希望者のみ、飲み物・お菓子の軽食程度、消費税を含みます。)
  
  ※交通費・宿泊費などの諸費用について、主催者からの支給はありません。

11. その他

期間中、職員が撮影した写真を、事業記録や広報に使用することがあります。
ご了承ください。

6月10日(水)~12日(金)の2泊3日、「女性関連施設相談員研修」を開催し、北海道から沖縄まで全国から97名の参加を得た。

この研修の狙いは、女性関連施設において女性相談における相談の社会的背景や女性が抱える課題の本質への理解を深めるとともに、諸機関との連携方策を考えるなど相談員の力量を形成し、相談者のエンパワーメントを図ることにある。

初日の講義は、須藤八千代愛知県立大学名誉教授(写真左)による「男女共同参画の視点に立った女性相談とは」。その中でまず須藤氏は「相談」の持つ意味の重要性について、「セラピーでもカウンセリングでもない、この2文字が持つ意味は、聞くだけではなく、相談員が何気ない相談の中で語られるエピソードからどれだけその奥にあるものを読み取るかであり、それが相談者の持つエネルギーの転換につながっていきます」と述べた。また、相談の対応力としては、相談員自身の力が40%、組織の力が60%と話され、組織が機能しないと相談者へ充分な対応がなされないと指摘。これからは男性の苦しみへのサポートも進めていく時代に入ったことを伝えた。続く講義「女性相談の実態と支援に関する法知識」では、白石美奈子とらすと法律事務所弁護士(写真右)が、実際の書式を使って調停での進め方などについて具体的に解説しつつ、相談者に寄り添った対策の仕方について語った。

2日目の講義「女性と貧困」では、川原恵子東洋大学社会学部講師(写真右下)が、日本の社会が過度に「家族」に頼っていることで貧困が起こる問題点などもあげ、「助けて」が言える社会を作っていく必要性を訴えた。続く春原由紀武蔵野大学名誉教授(写真左下)による「DV被害を受けた子どもと母親への支援」では「心身に傷を受けた子どもは傷を癒すことだけでは足りない、子どもが体験を整理し、暴力や感情の表現などについて学ぶようにする」ことが大切だと指摘され、現在の相談の分野における課題の把握や分析を行った。

午後の「分科会1」では、人間関係や配偶者からの暴力、子どもの心のケアなど、4つの分科会が開催され、景山ゆみ子前名古屋市男女平等参画推進ンセンター相談担当主幹、平川和子東京フェミニストセラピーセンター所長、近藤恵子特定非営利活動法人全国女性シェルターネット理事、岩崎広巳埼玉県東松山特別支援学校こどもの心のケアハウス嵐山学園内教室教頭がそれぞれ登壇。課題を抱えた当事者の支援について講義と事例検討、ワークショップや施設見学などを行い、課題解決に向けた実践力を培うため、学習者は積極的に取り組んだ。

3日目は、加山勤子公益財団法人静岡県国際交流協会総務課長と石井ナナヱふじみの国際交流センター理事長、及川直美埼玉県警察本部子ども女性安全対策課課長補佐、竹下小夜子沖縄からさよウィメンズクリニック院長が登壇。多文化共生、ネット暴力、相談員のメンタルヘルスなど3つの分科会で、情報提供、実際の事例や対応の仕方など相談員と相談者のエンパワーメントにつなげ、相談員の力量を上げるための講義とワークショップを展開した。 

その後の全体会では、報告者による情報の共有と意見交換が行われ、担当部局、センター内でのポジションの連携のみならず、全国のネットワーク、そして地域との連携の必要性、世代の切れ目ない支援の重要性などが改めて認識された。

夜には情報交換会や菊地潤佳、小倉由美子クリスタルボウル演奏家によるクリスタルボウル体験プログラムもあり、この3日間は、お互いの情報交換や交流の輪を広げるネットワークづくりの機会ともなった。

参加者アンケートからは「研修会が不足していると感じている中、広範囲にわたる知識を得ることができ満足、他県の相談員の方々とも交流でき遠方から参加してよかった。」、「今年は昨年と違った講師と題目でとてもよかった。現場ですぐに応用できる内容で、スキルアップできた。」「住むところは違っても同じ業務に取り組んでいる仲間がいることを知り心強く感じた。」「知識と共に、自分の中にある様々な思いに向き合い、認識する貴重な時間だった。」などの感想が寄せられた。平成27年度の相談員研修は女性をとりまく新たな課題の把握と女性相談の意義の再認識、学習者のスキルの向上という目的を達し終了した。

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