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研修

実施報告

令和2年度「企業を成長に導く女性活躍促進セミナー」(オンライン)

開催期間:令和2年10月29日(木)13時~16時 / 定員:100名

開催場所:オンライン /


事業内容

長時間労働の削減・多様で柔軟な働き方などの働き方改革や女性人材の育成・登用の推進が、男女を問わず職員の能力発揮を促し企業の成長力を高めることを、先進的な取組事例紹介を交えつつ実践的に学ぶ研修を実施。同時に、業種を超えたネットワーク構築も目指す。

1.趣旨

本セミナーは、企業における女性の活躍推進を図り、男女共同参画社会の形成に資するため、企業におけるダイバーシティ(女性の活躍促進)の推進者、管理職、リーダーを対象に実施します。基調講演、パネルディスカッションを通して、参加者の直面する疑問や課題に向き合い解決の方向を探ります。

2.テーマ:「持続可能な組織を創る女性リーダーの育成」

新型コロナウィルスの感染拡大や少子高齢化など、先が不透明な現代において、企業では「持続可能性」がますます重要になってきています。思わぬリスクに直面し、乗り越えなければならないとき、組織としての柔軟な対応が求められ、それにはダイバーシティ環境の構築を欠かすことはできません。未だSDGs「ゴール5:ジェンダー平等」が課題となっている現状を打破し、今こそ女性リーダーを育成する、これからのマネジメントを様々な視点から考えていきます。

3.主催

独立行政法人国立女性教育会館

4.後援

厚生労働省、経済産業省、一般社団法人日本経済団体連合会、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会

5.実施方法及び日時

  • (1)配信日

    令和2年10月29日(木) 13:00~16:00

  • (2)方法

    「Zoom」又は「YouTube」ライブによるオンライン配信
    ※「YouTube」の場合、質問はできません。
    ※インターネットに接続できるパソコン環境(タブレット、モバイル端末も可。モバイル端末の場合はZoomアプリをインストールしてください)が必要です。また、通信料は御自身の負担となります。

  • (3)研修の流れ

6.対象及び定員

企業におけるダイバーシティ(女性の活躍促進)の推進者、管理職及びリーダー100名
※ 先着順。定員を超えた場合は、視聴限定(YouTube)の参加を御案内します。
※ 官公庁、独立行政法人等の方も参加可能です。

7.内容

  • (1)基調講演「混ぜると強くなる〜困難な時代を乗り越える企業戦略~」 13:00~14:10

    不確実性の増す現代、企業の成長を実現するカギは、リスクに柔軟に対応できる組織作りにあります。組織の持続可能性を高める生産的なマネジメントとはどのようなものでしょうか。女性活躍を進める意義、またこれからの組織やリーダーのあり方についてお話しいただきます。

    講師:出口 治明(立命館アジア太平洋大学学長、学校法人立命館副総長・理事)

  • (2)パネルディスカッション「“女性リーダー”の育成と組織にもたらす効果」 14:30~16:00

    「202030」——17年前、「社会のあらゆる分野で指導的地位の女性比率を2020年までに少なくとも30%にする」と国が定めた目標は、企業において達成からはるかに遠いままに今日を迎えました。“女性リーダー”の育成を阻む要因は何か、どのように取り組めばよいのか、そしてその先に見えてくる将来像とは…? 実践現場からの報告に精緻な分析を交えながら、その実現の方策とメリットについて考えます。

    パネリスト:小坂 佳子(読売新聞「OTEKOMACHI」「発言小町」編集長/生活部次長)
    パネリスト:隈 扶三郎(株式会社西部技研代表取締役)
    コーディネーター:山口 慎太郎(東京大学経済学部・政策評価研究教育センター教授)

  • (3)アンケートの記入

8.申込方法等について

  • (1)方法

    申込フォームにアクセスのうえ、お申込みください。

  • (2)申込期間

    令和2年9月25日(金)午前9時~令和2年10月22日(木)正午

  • (3)参加通知

    お申込みの際に御入力いただいたメールアドレス宛に、Eメールにて通知します。
    10月26日(月)を過ぎても連絡がない場合は、お手数ですが事業課までお問い合わせください。

  • (4)キャンセル

    参加決定後にキャンセルされる場合は、必ず事業課までEメールにて御連絡ください。

  • (5)連絡・問い合わせ先

    国立女性教育会館事業課
    電話:0493-62-6724 (平日9時~17時)
    Eメール:progdiv@nwec.jp

9.参加費

無料(通信料は御自身の負担となります。)

10.その他

  • (1)モニター調査の実施

    セミナー終了後3か月後を目途にモニター調査を行う予定です。調査時期になりましたらEメールで御案内しますので、御協力いただきますようお願いいたします。

  • (2)その他

    感染症、気象状況、天災、官公庁からの指示、その他主催者が研修を安全かつ円滑に実施することが困難と判断した場合には、やむを得ずプログラム内容の変更又は開催を中止する場合があります。
    なお、最新情報は、NWECホームページでお知らせします。

■テーマ「持続可能な組織を創る女性リーダーの育成」

 令和2年10月29日(木)に、企業におけるダイバーシティ(女性の活躍促進)の推進者、管理職、リーダーを対象に「企業を成長に導く女性活躍促進セミナー」をオンラインで開催した。
 企業関係者及び独立行政法人、地方自治体の担当者など全国からの参加者375名と共に、女性リーダーを育成する、これからのマネジメントを様々な視点から考えた。

■基調講演「混ぜると強くなる〜困難な時代を乗り越える企業戦略~」

 講師:出口 治明 氏
    (立命館アジア太平洋大学(APU)学長/学校法人立命館副総長・理事)

 データを基に、日本の現在の経済状況について解説、さらに歴史を踏まえながら日本におけるアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)がいかに根深いか、そして企業の持続可能性のためには「女性・ダイバーシティ・高学歴」が重要であることを語っていただいた。

 歴史的に見ても、固定的性別役割分担等の男女差別が生まれたのは、明治時代以降であろう。労働モデルや制度によって、アンコンシャス・バイアスレベルで長く日本に浸透してきた。そのような中ではクオータ制を入れて、意識的にロールモデルを作る必要がある。男性の育児休業の法制化も重要。「かわいいから世話をする」のではない。「世話をするからかわいい」と感じるようになる。ダイバーシティ、つまり混ぜたら強くなる。新しい産業を生み、日本が生き残るには「女性・ダイバーシティ・高学歴」を大事にした社会に作り替えていかなければならない。
 日本ではいまだに「男性と女性は違うけれど平等」という異質平等論が蔓延している。これは一見正しい意見に見えるが、グローバルには抑圧的との答えが出ている。人間は、78億人全員が違う。個性差は性差を超える。ある企業は採用時「今何をしているか」「過去何をしたか」「将来何がしたいか」この3つ以上の情報は求めないという。必要なのは、今の仕事、過去のキャリア、将来の夢であり、できるだけバイアスがかからないように、人間を大事にしようとしているということである。日本の現状をエビデンスでみて、どういう社会を作るべきか皆で考えてほしい。

■パネルディスカッション「“女性リーダー”の育成と組織にもたらす効果」

    パネリスト:小坂 佳子 氏
          (読売新聞「OTEKOMACHI」「発言小町」編集長/生活部次長)
    パネリスト:隈 扶三郎 氏
          (株式会社西部技研代表取締役)
 コーディネーター:山口 慎太郎 氏
          (東京大学経済学部・政策評価研究教育センター教授)

報告

1)山口 慎太郎 氏から

 経営学の視点から、女性リーダーが活躍するにはどうすればいいのか、女性リーダーがいることで企業にどのようなメリットがあるのかお話しいただいた。

 前政権から現政権においてもコーポレート・ガバナンスの視点から女性活躍が必要であることが示されているが、日本では女性管理職比率が先進国と比較して低い。女性リーダーが入ることによってどのようなメリットがあるかといえば、情報、知識、経験、そして価値観が既存の管理職と異なっているといわれている。多様性を高めると、集団的知性が高まるという報告がある。また、女性が入るとイノベーションが進むということが分かってきたが、今いる経営陣と新しく入ってきた人がコミュニケーションをとり、意識的に補完しあい能力を発揮することが必要である。自分と似たような人と仕事をするのは楽だが、同じような発想しか生み出さない。さらに、マイノリティになるグループは3分の1、少なくとも3人が必要。過渡期には、ある一部の部署を女性だけにして女性の力をつけるという方法もある。ロールモデルやクオータ制などは有用である。ガバナンスが効いている国では、女性役員が活かされることがある。

2)隈 扶三郎 氏から

 企業の経営者としての立場から、西部技研の歴史や業務、そして試行錯誤の中、女性活躍を進めてこられた経験を具体的に語っていただいた。

 前社長は自身の経験から「女性も活躍してほしい」というその思いを持ち、様々な制度を作ってきたにもかかわらず、自分が社長になってからも女性社員たちがライフイベントをきっかけに退職してしまう状況は、変わらなかった。制度はあっても、男性中心の企業文化では女性がやりがいをもって仕事をするという環境ではなかった。そこで、キャリアアップ研修やキャリア支援、資格取得などの支援等、さらには、働き方改革、男性への育休等様々な制度を作り、社内でさらに推進した。仕事も、プライベートの充実、職域の拡大、研修への派遣等、男性ばかりだった職域を女性にも担ってもらうようにした。現在、取締役3名のうち1名は女性、企画室の社員は、すべて女性である。社内に設置した保育園も、社員には保育料無料で運営している。
 創業期から成長期は、創業者のカリスマ性、そしてそれに同調する同質性が必要であった。そのあと持続可能な成長となると、それまでとは真逆。個々の成長と組織力、つまりは異質性が重要になってくる。まさしく「独創と融合」が経営理念である。今後もダイバーシティを推進していくつもりである。

3)小坂 佳子 氏から

 女性管理職という立場から、様々な人に支えられてきた自身の歩んできた経験、成長、そして女性管理職としてのマネジメントのあり方についてお話しいただいた。

 役員になりたくて会社に入る人がどれだけいるだろうか。やりがいの積み重ねだと思う。だから、会社は十分に力を発揮できる環境、機会を与えることが大切。能力アップや昇進機会は平等、とはまだまだ言いがたい。女性も機会が与えられる場面で「今はいいです」という人がいる。何が大変なのか、理由が人によって違うので、会社も本人も能力をアップさせるタイミングをみていければよいと思う。「なりたい自分がないから悩んでいる」という声を聞く。自分自身も「なりたい自分になれていない」という迷いもあったが、実際は目の前の仕事に一生懸命取り組むしかない。結婚や出産など、選択や偶然があると思うが、キャリアやステップアップのあり方は多様である。最初の目標も進んでいくうちに右から左になることもあるが、それでもよいと思う。成長のステップに欠かせないことは、色々な仕事を知ることと、信頼できる社内外の先輩である。何げない言葉に助けられることもあり、人に助けを求めるのも実力のうちだと思う。やってみないと分からないということも多い。まずはやってみること、違う視点の人間が入ることで、組織が活性化していくと感じる。

ディスカッション

 山口氏のコーディネートのもと、パネリストお二人の報告を踏まえディスカションが行われた。主な論点は次の通りである。

Q1.女性を増やす、多様性をあげることで会社にとって何かいいことがあるのか。

・男性と女性で違いはあるのかというとそうではなく、優秀な人に入ってもらいたいということ。
 今まで女性が担うような職場でなかったところも女性が入ってくるようになっていて、
 今や技術的な根幹を支え貢献してくれている。

・採用の際、面接に来られる方には、学校でよく勉強されているのか、女性に優秀な方が多い。
 入社後、男性中心の会社の風土で自分を出せないというのがネックになっている。
 男女かかわらず優秀な人材に活躍してもらうことが大切。

・新聞を読む人は、男性女性等しくいる。
 そういう意味でも会社に、そして管理的な立場にも女性が増えたほうがよい。
 紙面にも反映されるし、多様な人材なくして新しいコンテンツは生まれない。

Q2.具体的に女性リーダーを増やす時の障壁は何だろうか。どうすれば崩せるのか。

・トップダウンで進めたので障壁はなかった。

・男性の上司で「自分はよくやっています、女性にもフェアで…」という人ほど、
 男性中心のカルチャーの中で女性に対する意識にバイアスがかかっている。
 男性上司の感覚を変えていかないと難しい。

・何人もの先輩が先に管理職になり道を切り開いていたので、
 女性だからできないだろうということはなかったが、組織には色々な人がいる。
 「男性だから女性だから」から抜け出さないといけないと思う。

・女性には、管理職へと声を掛けられるまでの職場体験が少ない。
 子育てをしていると、あまり異動を伴わない。
 男性だとステップアップしていくとき、
 色々な部署を経験していて小さなリーダーを経験している人が多い。
 管理職になっている方は色々な職種をみて、会社全体を見渡せる。
 研修ももちろんだが、どこの職場を経験するかが重要なのではと思う。

・日本では男性がやってきたのでこういうものだと思ってしまい、
 今まで女性にやらせたことがない。職域拡大が大切。

Q3.ロールモデルを会社が意識して作っていくのがいいのか。

・その人と同じになるようで言葉としてはどうかなと思う。
 ただ、自分の知らない経験をしている女性の先輩がいるのは心強く感じる。
 会社の研修で役員と話す機会があるとよい。
 ロールモデルとして紹介するのではなくて、
 自分の直属の上司だけではない人との接点を、会社が研修として設定するのはよいと思う。

Q4.女性の側からどのような心構えでいけば、管理職になりたい人の助けになるか。

・手を挙げてほしい。
 男女問わず手を挙げていいのだ、という前向きなアグレッシブな組織になり、
 会社全体が活性化する。

・子育てをしながらキャリアを継続している人は、毎日を過ごすので精一杯。
 手を挙げる元気がない。
 家庭内の育児家事のシェア、
 夫も妻もそれぞれのキャリアを考える気持ちの余裕がないと、将来は描けない。
 ただ、ステップが変わると見える世界が変わる。
 管理職は、多くのチームを動かして大きな仕事ができる。
 やれることが大きくなり多様になるよ、というメッセージは伝えていきたい。

Q5.今、聞いている人達に励ましのメッセージをお願いしたい。

・経営者としての立場で考えたとき、会社を存続させる成長させるためには「人」の力が大きい。
 多様な意見をまとめていくマネジメントスタイルのほうがよいと思う。
 女性も含めて「人財」の多様化は、今後の成長を考えるうえで重要なのは間違いない。

・女性の活躍推進をなぜするのか。
 こういう理由で我が社は必要なんだ、こういう理由で進めたいんだ、
 こういう風に育てていきたいんだという納得感が伝わらないと
 どんなに旗を振っても人はついてこないし、変化を受け止められない。
 実現していくには、会社も当事者の女性も変化を恐れるのではなく、
 どんな風に自分たちは変わっていくのだろうと、むしろそこを楽しめて取り組めたらよい。

 山口氏のコーディネートのもと、それぞれの視点から熱い議論が進められ、多くの気付きを得た。パネリストの小坂氏、隈氏から度々「男女かかわらず」という言葉が発せられたのが印象的なパネルディスカッションとなった。

■参加者からの感想

・出口様のお話は真実と歴史に基づいていて大変興味深く、引き込まれて拝聴いたしました。
 女性活躍を推進されていることに、背中を力強く押していただいた気持ちが致し、
 勇気をいただきました。
 また、自分自身のアンコンシャスバイアスにも気づけました。
 本当にありがとうございました。

・山口様の女性リーダーが企業経営に与える影響のお話、
 また隈様の実際に女性活躍推進を進めていらっしゃる企業経営者様のお話、
 更には実際に管理職としてご活躍の小坂様のお話を聞かせて頂き大変参考になりました。

・複数の視点から女性の活躍について示唆を受けられた。
 アンコンシャスバイアスの壁は厚く、これに対応することに大きな課題を感じている。
 今回のセミナーを通じて論点の整理ができ、少し前に進めそうな気がした。

・まず、男性がこのように声を挙げてくださっていることがとても嬉しく思いました。
 そして実際に取り組んでくださり、実績を挙げていらっしゃるところがとても勇気が出ました。
 女性自身も諦めず、自分自身のできることを発信したり、発言しなければなと思いました。
 状況は自分自身で変えていくんだと。
 小さな波紋が大きくなり、
 それが当たり前の文化となっていくためには自ら行動していかなければと思いました。
 また行動するために必要なこともわかりました。

・基調講演においても、パネルディスカッションにおいても、
 それぞれの立場や経験から、見識の深いお話を聞くことができた。
 なぜ進める必要があるのか、どのように進めていけばよいのか等を、
 簡潔かつわかりやすく教えていただき、今後事業を推進する上での参考になった。


 基調講演の質疑応答の中で出口氏が「アンコンシャスバイアスは、言わなければ分からない。『知識は力』であり、そう思ってしまうのはその人が悪いのではない。こういう社会構造の中でこういう意識ができたと丁寧に説明することが大切」、また、「能力があるからやらせるのではない。やらせるから能力がつくのだ」と話された。それは、パネルディスカッションの中でも講師の方から「意識を変える研修が重要」、「話を聞くことが大切」、また、「小さなリーダー経験の積み重ね、成長の機会均等」という言葉で繰り返された。具体的に進めていくヒントが示されたのではないだろうか。
 本セミナーが、参加者皆様のそれぞれの職場での女性リーダーの育成、さらには持続可能な組織や社会へとつながっていくことを期待したい。

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