研修・イベント

研修

実施報告

平成29年度「女性関連施設相談員研修」

開催期間:平成29年7月4日(火)~6日(木)<2泊3日> / 定員:80名

開催場所:国立女性教育会館 /


事業内容

困難な状況に置かれている女性を支援する人材を対象とし、専門的知識・技能の向上を図るための研修を実施。

1.趣  旨

女性関連施設の相談員を対象に、女性に対する暴力などの喫緊の課題解決を目指し、相談者への理解を深め、必要な知識・技能を習得するとともに、関係機関との連携促進を図るための研修を行います。複雑・多様化する悩みに男女共同参画の視点から適切に対応できる相談員の育成と業務の質の向上を図るための専門的・実践的研修です。

2.主  催

独立行政法人国立女性教育会館

3.会  場

国立女性教育会館
〒355-0292 埼玉県比企郡嵐山町菅谷728
TEL 0493-62-6724・6725
FAX 0493-62-6720
Eメールアドレス   progdiv@nwec.jp
ホームページ URL https://www.nwec.jp

4.期  日

平成29年7月4日(火)~ 7月6日(木) 2泊3日

5.参 加 者

公私立の女性会館・女性センター、男女共同参画センター等の女性関連施設において相談業務に携わっている相談員

6.定  員

80名

7.日  程

(各プログラムの間に10~15分の休憩があります。)

8.内  容

第1日 7月4日(火)

(1)開会                           13:15~13:30
   ① 主催者あいさつ
   ② オリエンテーション

(2)講義1「男女共同参画の視点に立った女性相談とは」     13:30~14:30
女性関連施設における相談業務の意義と役割について、理解を深めるとともに女性が抱える問題の支援の際に留意すべき点について学びます。
講 師  米田 弘枝 元立正大学心理学部教授、臨床心理士

(3)講義2「女性相談の実態と支援に関する法知識」       14:45~16:15
実際によくある女性からの相談の事例などを交えながら、関係機関との連携の仕方や法的措置など、相談員として知っておくべき法知識を学びます。
講 師  馬場 望  くくな法律事務所弁護士、社会福祉士

(4)グループ討議                       16:25~17:00
参加者同士の自己紹介を行った後、研修に対するニーズや課題などについて、グループワークと討議を通じ、整理・共有します。
進 行  国立女性教育会館事業課専門職員

(5)情報交換会                        18:30~20:00
相談業務における課題などの情報交換と参加者同士のネットワークづくりを行います。

第2日 7月5日(水)

(6)講義3「ストーカー事案の概要と被害防止のポイント」     9:00~9:45
ストーカー事案の概要と被害防止のポイントについて、最新の情報を身に付けます。
講 師  加藤 邦明 埼玉県警察本部子ども女性安全対策課課長補佐

(7)講義4「相談者の背景にある問題を理解する~女性と貧困」  10:00~11:30
なぜ女性は貧困に陥りやすいのか?女性を取り巻く貧困の現実と社会構造に目を向けつつ、支援の方策を考えます。
講 師  飯島 裕子 ノンフィクションライター、大学非常勤講師

(8)講義5「相談員自身も大事にしながらトラウマを抱える相談者への
       トラウマ・インフォームドな相談の受け方」     13:00~14:30
性暴力やDV等、人間関係で傷ついてトラウマを抱えた相談者を、理解し支援していく「トラウマ・インフォームド・ケア」について学びながら、相談者側も大切にされる実践の在り方を考えます。
講 師  熊谷 珠美  HEARTカウンセリングセンター代表
            臨床心理士

(9)分科会1「課題別ケース検討」               14:45~17:15
課題を抱える当事者に対して実際にどのように支援をしていったらよいのか、課題別コースに分かれて、講義とワークショップで学びます。
A:人間関係に関する相談者への支援
夫婦、子ども等の家族、職場や男女間など、人との関係性を巡る相談者の課題をどのように捉えて支援につなげるかについて学びます。
講 師  田口 京子 ウィメンズカウンセリングいずみ代表
B:配偶者等からの暴力被害者への支援
配偶者等からの暴力被害について、相談員が理解しておくべき心理的・社会的な構造やその背景、相談者のエンパワーメントにつなげる支援理念と対応の仕方を学びます。
講 師  直井 裕子 東京臨床心理士会 司法関連領域担当理事
C:ひとり親家庭の困難と相談者への支援
支援活動を通じて見えてきたひとり親家庭が直面している問題とその背景を踏まえ、相談者への支援の在り方を探ります。
講 師  赤石 千衣子 
NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長

●オプション・プログラム「ナイトウォーク」(自由参加)     19:00~20:00
国立女性教育会館敷地内を散策。マイナスイオンを浴び、日頃のストレスを解消し、心身のリフレッシュを図ります。

第3日 7月6日(木)

(10)分科会2「相談事業の展開と機関連携」           9:00~10:50
相談者の自立に向けた地域・機関連携について理解を深めるとともに、相談の在り方や相談者のエンパワーメントにつながる支援について、現在直面している課題とその解決に向けた意見交換を行い、今後の相談業務に役立つヒントを探ります。

A:DV防止基本計画からみる各機関との連携
講 師  日光市 健康福祉部人権・男女共同参画課職員
日光市 婦人相談員
B:NPO法人の女性支援からみる団体・機関との連携
講 師  貝原 己代子 NPO法人さんかくナビ代表
C:男性のための相談の事業展開
講 師  静岡県男女共同参画課職員
     静岡県相談員

(11)全体会                          11:05~11:45
分科会講師により分科会の様子や話し合われた内容の情報の共有化を図り、これからの共通課題と今後の方向性について考えます。
コーディネーター  岸上 真巳 
一般財団法人大阪市男女共同参画のまち創生協会
企画調整課チーフ
報告者 分科会2各コース登壇者

(12)閉会                           11:45~12:00
① アンケート記入・振り返り
② 主催者あいさつ

9.申込方法・期限等

(1)方法
別紙1、別紙2に必要事項を記入または入力の上、郵送または電子メール(progdiv@nwec.jp)のいずれかの方法で、国立女性教育会館までお送りください。
※送受信の行き違いや受信もれを防ぐため、申込受付は郵送またはメールのみ(FAXは不可)とさせていただきます。

(2)申込期間
第1次申込開始(初めて参加される方)   平成29年5月22日(月)
第2次申込開始(過去に参加経験のある方) 平成29年6月5日(月)
申込締め切り日   平成29年6月12日(月)午後5時必着(先着順)
※申込期間内でも定員に達した場合はお申込を締切らせていただきます。
※会館が主催する女性関連施設相談員向け研修に初めて参加される方及び現に業務に就いている方からのお申込を優先とさせていただきます。

(3)提出書類
「参加申込書」(別紙1)、「研修に期待すること」(別紙2)

(4)参加通知
「参加申込書」記載の連絡先に、電子メールまたは文書にて発送します。6月20日(火)までに連絡がない場合は、お手数ですが事業課(Tel:0493-62-6725)にお問い合わせください。

10.所要経費

(1)参加費    無料
(2)宿泊費    研修期間中は、1名1泊あたり1,200円
          (前・後泊も同額で宿泊可)
(3)食費     朝食 バイキング 870 円
          昼食 カフェテリア形式 550 円~750 円程度
          夕食 バイキング 1,080 円
(4)情報交換会費 3,500円(税込、立食形式)

※交通費・宿泊費・食費などの諸費用について、主催者からの支給はありません。

11.その他

(1)期間中、職員が撮影した写真を、事業記録や広報に使用することがあります。あらかじめご了承ください。
(2)研修の一環として、研修終了6か月後を目途にフォローアップ調査を実施します。皆様の実際の職務に、研修成果がどのように役立てられているかを伺うものです。今後、当会館が実施する事業を充実させていくための参考にさせていただきますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
※プログラムの一部について変更する場合があります。ご了承ください。

7月4日(火)~6日(木)に全国各地の男女共同参画センター、配偶者暴力相談支援センター、民間団体、企業等において男女の悩みに対応する相談員102名の参加を得ました。

<1日目>

(1) 開会

開会にあたり、内海房子NWEC理事長は「社会環境は目覚ましく変化しており、相談者から寄せられる相談内容も多様化複雑化をしている。第一線で活躍している講師による講義を通じた最新の情報の提供を行うが、参加者同士が討議をしたり意見交換をしたりする中で、日頃の業務を見つめ直し、語り合う場として研修を活用するとともに、相談員同士のネットワークを築いてほしい。」とのメッセージを送りました。

主催者あいさつ

(2)基調講演「男女共同参画の視点に立った女性相談とは」

米田弘枝氏(立正大学非常勤講師、臨床心理士)は、男女が人としての権利を尊重されて、法の下に平等であることであることを改めて指摘しつつ男女共同参画基本法について解説した。また、20年以上にわたるご自身のDV被害者支援の経験を踏まえ、DV支援に必要な基礎知識、支援方法・留意点を中心に講義。特に、専門機関で相談するということとは、専門的知識を持っているということ、客観的な物差しを持つことの重要性や、一般相談と専門相談との違いを認識し、人権侵害が起きているなら一歩踏み出し、これは犯罪行為であると積極的に相談者に伝えることが大事であると指摘。参加者は、女性相談の意義と役割、法知識、トラウマ・ケアなど、相談業務の基盤となる内容のほか、ストーカー事案の防止のポイント、女性が貧困に陥りやすいという社会構造などの最新情報も学びました。

講義「男女共同参画の視点に立った女性相談とは」

(3)「女性相談の実態と支援に関する法知識」

馬場 望氏(くくな法律事務所、社会福祉士)は、3つの柱を立てて相談業務に役立つ法知識を解説。
初めに、「女性相談と法律」では、女性相談とは人権侵害の問題であると述べた後、法的な救済にはどのようなものがあるかについてポイントを押さえて講義。次に、女性からの相談で比較的多い類型である「DVと離婚手続き」では、架空の相談内容の、どこにDVを感じるか、どこに問題があるのかをポイントを押さえながら読み取った上で、離婚に向けた手続きの流れを解説。最後の「弁護士を活用するには」の話の中では、弁護士を依頼するメリットや活用する際の留意点に加え、相談者が実際に弁護士を活用するとなった時、相談員としてできるアドバイスやお手伝いについても言及。日々の業務ですぐに活用できる基礎的な法律の知識の解説を受け、参加者が大きくうなずきながら、熱心にメモを取る姿が印象的であった。

講義「女性相談の実態と支援に関する法知識」

(4)「グループ討議」

各自がここまでの講義2本の内容を振り返りながら、この3日間の研修で得たいことは何か、目標をどこにおこうかを意識し、3日後にこの研修会場を去るときに自分がどうなりたいかを考える時間を設定。また、日頃業務のなかでの疑問や発信したいことなどを付箋に書いて貼り付けると、他の参加者がコメントを寄せることができる「知恵袋コーナー」についての説明を行った。

(5)情報交換会(希望者のみ参加)

館内レストランを会場として、食事をとりながら、日頃の相談業務にかかる悩みや課題、研修での感想などを参加者同士で交換し、交流を深めた。会の途中で地域ごとにグループになるよう座席交換を行い、さらに近隣地区の相談員との交流の輪が広がるよう工夫した。

<2日目>

(6)「ストーカー事案の概要と被害者防止のポイント」

富岡義彦氏(埼玉県警察本部子ども女性安全対策課ストーカーDV対策係長)より、ストーカー事案の概要と被害防止のポイントについて講義があった。どのような行為がストーカーに当たるのかなど、あいまいになりがちな概念をしっかりと押さえたうえで、被害防止のポイントや警察の対応について実際の事案をもとにした解説を聞き、参加者は具体的イメージを持ち、一層の理解を深めた。

(7)「相談者の背景にある問題を理解する~女性と貧困」

飯島裕子氏(ノンフィクションライター)が、なかなか取り上げられない見えにくい女性の貧困の現実、ひとり一人を取り巻く環境、心の変化、複雑な立場に追い詰められていくという現象について、自身の調査や女性関連施設の調査をもとに解説。
見えていない部分に困難を抱えている多くの女性に対し、どのような支援をしていけばよいのかという喫緊の課題ついて改めて見つめる機会となった。
講義を聞いた参加者からは「女性の貧困を考えていくと、日本の根深いジェンダーバイアスに突き当たると感じた。」との声が上がっていた。

講義「相談者の背景にある問題を理解する~女性と貧困」

8)「相談者自身も大事にしながらトラウマを抱える相談者へのトラウマ・インフォームドな相談の受け方」

講師は熊谷珠美氏(HEARTカウンセリングセンター代表)。相談に来た相手を大事にするという視点からトラウマ・インフォームドという考え方を紹介した。
そもそもトラウマとは何かという基礎を整理した上で、トラウマ・インフォームドのポイントについて講義。
さらに、自分を大切にするということ、相談員自身のケア(二次受傷)と支援者の陥りやすい3つの「ない」についても解説。「相談を受けるコツは爬虫類脳に届くこと」など記憶に残るフレーズやすぐに使える五感を用いたエクササイズにより、和やかな雰囲気の中にも活気ある講義となった。

講義「相談者自身も大事にしながらトラウマを抱える相談者へのトラウマ・インフォームドな相談の受け方」

(9)分科会1「課題別ケース検討」

分科会1では、「人間関係の悩み」「DV被害者支援」「ひとり親家庭」のテーマに分かれ、各講師よりその課題の背景や実情などの基礎知識について、ポイントを押さえた講義があり、これらの困難や課題を抱えた相談者にどう対応し、支援を行うかについて、課題を整理したり、相談場面を想定したロールプレイを通じた実践的知見を深める時間となった。
A:人間関係に関する相談者への支援
「女性の人間関係の悩み、問題をどう捉えるか」「女性の人間関係の悩みへの適切な支援」について講義後、ロールプレイ(役割演技)を行った。
B:配偶者等からの暴力被害者への支援
電話相談の基礎知識とDVリスクアセスメントについて講義後、3人一組でのロールプレイにより、傾聴とアセスメントについての実践的な研修となった。
C:ひとり親家庭の困難と相談者への支援
ひとり親家庭の現状、支援に係わる機関・制度の講義を通じて、狭間をつなぐ地域での支援の展開など、女性関連施設・行政とは別の視点での報告により視野を広げた。

分科会1「課題別ケース検討」

(10)「ナイトウォーク」(希望者のみ)

・国立女性教育会館職員が、敷地内の施設を案内しながらNWECの歴史や利用について伝えた。
・緑豊かな自然の中で心地よい風に吹かれながら、参加者は雑談をかわしたり、簡単なストレッチをしたりと、リラックスした時間となった。

オプション 「ナイトウォーク」

<3日目>

(11)分科会2「相談事業の展開と機関連携」

分科会2では、相談者業務における地域・機関連携や事業展開の事例報告をベースに、地域・機関連携や事業展開における課題は何か、相談者の問題を解決するためにどのような機関に引継ぐことができるのかなど、今後の展開の可能性を探った。
A:DV防止基本計画からみる各機関との連携
行政職員と相談員から、制度面と相談の実際について報告をいただき、この報告を聞いて思ったこと、感じたことをワールド・カフェの手法を用いて深掘りした。
B:NPO法人の女性支援からみる団体・機関との連携
NPO法人の活動を通じて、相談者の自立に向けた取り組みや連携先での事例を聞いたのち、一つの事象に関し、支援の方策についてグループワークを行った。
C:男性のための相談
静岡県が事例報告を行った。最初に、行政職員が男性相談の立ち上げから現在に至る経緯について、次に相談員から相談事例の報告を行った後、参加者を交えたディスカッションを行った。ディスカッションでは、他の機関における男性相談事業の実態や、未設置機関における男性相談事業を始めるうえでの困難など活発な議論が行われた。

分科会2「相談事業の展開と機関連携」

(12)全体会

初めに、各分科会でどのような話が出たのかの共有化をするため、分科会講師より話し合われた内容の報告があった。
まず、「誰のための何のための機関連携・事業展開か」については、例えばDV被害者について、被害者のその後の生活再建と自立というところで様々な機関との連携が不可欠であり、警察・福祉事務所・医療機関等の連携が必要なため、これらの機関がスムーズに連携できる取組の工夫が是非とも大切であるということが改めて指摘された。
また、「事業の展開・共通の課題」については、「相談事業を充実させてよりよい支援をしていくためには、予算の獲得が必要不可欠。相談員一人一人がロビイングをすることや予算に直接かかわることは難しいが、現場の声を上げていくことはできる。日々の支援にあたっている相談員の力が社会課題を変えていく大きな力となる」との意見が示された。
最後に、講師3名から参加者へのエールをいただいた後、コーディネーターの岸上真巳氏(一般財団法人大阪市男女共同参画のまち創生協会)は、「仕事をする上で困難なケース、もどかしさを抱えることも多いが、ひとりではない、全国にはたくさんの仲間が知ることを心にとめて業務にあたってほしい。支援の部分で役立つ機関連携というのもあるが、相談にかかわるもの同士が友達として支えあって解決していく、私たち自身をエンパワーメントしなければという部分もある。仲間がいる、ひとりじゃないという気持ちを念頭に相談者の方を支え、よりよい支援につなげていければいい。」と明日から相談業務につく参加者へのメッセージで研修の最後を締めくくった。

全 体 会

(13)参加者アンケートから

「全国にはこんなにたくさん同じ仕事をしている人がいると思うと心強いと思った。」「女性の支援に関して、ここまでまとめあがった研修は他にはありません。」「男女共同参画の視点から具体的な事例最新の情報を様々な分野で学ぶことができた。」「多岐にわたる最新の情報を得ることができた。他の相談員の方との情報交換はより知識を深め、自分に足りないことを教えていただけることが多かった。」などの感想が寄せられた。参加者の皆さんの今後のさらなる活躍が期待されます。

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