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実施報告

令和2年度「女性関連施設相談員研修」

開催期間:令和2年 6月17日(水) ~30日(火) / 定員:90名

開催場所:国立女性教育会館


事業内容

困難な状況に置かれている女性を支援する人材を対象として、男女共同参画の基本を身に付けながら、専門的知識・技能の向上を図るための研修を実施。

 本年度の研修は、新型コロナウィルス感染症による全国的な感染拡大を防止するため、例年通りの集合研修は行わず、参加者と公開期間を限定したYouTube(NWEC Channel)の動画配信によるオンデマンド研修のみといたします。
 インターネットに接続できるパソコン環境(タブレット、モバイル端末も可)があれば受講できます。公開されている動画は、期間中参加者の都合に合わせて視聴することができます。
 内容の詳細については、開催要項をご覧ください。
 参加申込期間は5月13日(水)~26日(火)です。皆様の御参加を心よりお待ちしております。

【令和2年5月19日】よくあるご質問②
 参加申込は5月26日(火)17時までとなっています。

【令和2年5月13日】よくあるご質問①
 同一施設から複数名の申込は可能ですが、優先順位をつけて申込むことは出来ません。
 
【令和2年5月7日】更新について
 講義3のタイトルと講師の所属について更新しました。

1.趣旨  

女性関連施設の相談員を対象に、女性に対する暴力などの喫緊の課題解決を目指し、相談者への理解を深め、相談業務に必要な知識・技能を習得するとともに、関係機関との連携促進を図るためのオンデマンド研修を行います。複雑・多様化する悩みに男女共同参画の視点から適切に対応できる相談員の育成と業務の質の向上を図り、相談から見えるニーズを事業や行政の施策へつなげるための専門的・実践的研修です。

2.主催

独立行政法人国立女性教育会館
〒355-0292 埼玉県比企郡嵐山町菅谷728
TEL 0493-62-6724  FAX 0493-62-6720
URL https://www.nwec.jp  Eメール progdiv@nwec.jp    

3.実施方法及び期間

(1)配信期間 令和2年6月17日(水)9:00~6月30日(火)17:00
(2)方法 参加者と公開期間を限定したYouTube(NWEC Channel)の動画配信によるオンデマンド研修
※インターネットに接続できるパソコン環境(タブレット、モバイル端末も可)が必要です。YouTube視聴のために特別なアカウント登録などの必要はありません(ただし、通信料は参加者の負担となります)。公開されている動画は、期間中、参加者の都合に合わせていつでも視聴することができます。
(3)研修の流れ

4.対象及び定員

(1)公私立の女性関連施設、相談機関等の相談員 80名
(2) 地方公共団体における関連施策担当者    10名
   (相談事業を統括する立場にある方)
 ※全ての動画(計9時間程度)を視聴し、研修終了後のアンケートと6か月後に実施するフォローアップ調査の両方を提出可能な方
 ※応募多数の場合は抽選とし、会館が主催する女性関連施設相談員研修に初めて参加される方、これまで参加が少ない地域の方の申込を優先します。なお、参加者決定に関する個別のお問い合わせには一切お答えできませんので、あらかじめ御了承ください。

5.内容

(1)開会(15分)
 主催者あいさつ 内海 房子 国立女性教育会館理事長       
 オリエンテーション

(2)ワーク1「ジェンダー視点を見つめなおす」(50分)     
 アイスブレイクとして課題の共有を行った後、相談業務に携わる自身が持つ視点を振り返ります。ワークを通し自分を見つめなおすことで、相談員に必要なジェンダーに敏感な視点を養います。
 講師:新堀由美子 男女共同参画センター横浜相談センター長

(3)講義1「男女共同参画の視点に立った女性相談とは」(60分)
 男女共同参画の本質とその視点に立った相談業務のあり方について学びます。女性を取り巻く社会状況の変化と歴史、女性が直面する困難が社会構造と深く結びついていることを踏まえ、女性相談のプロセスと役割について理解を深めます。  
 講師:執行 照子 NPO法人日本フェミニストカウンセリング学会代表理事
          NPO法人フェミニストカウンセリング神戸理事

(4)情報提供「女性に対する暴力の根絶に向けた取組」(30分)         
 女性相談に関する国の最新施策についての説明を受け、今後の方向性について理解を深めます。
 講師:吉田 真晃 内閣府男女共同参画局暴力対策推進室長    

(5)講義2「女性相談支援に関する法知識 ~DV、性暴力、離婚等~」(60分)
 DV、性暴力、離婚等の相談における面会交流や保護命令等について、相談員として知っておくべき法知識を学びます。
 講師:黒田 典子 海老原法律事務所 弁護士 

(6)講義3「トラウマ・インフォームド・ケアの概念に基づく性犯罪・性暴力被害者の支援者育成」
                                         (60分)   
 性暴力の被害体験を聴くとはどんなことなのか。性暴力被害者の状況をどうとらえ、どのように支援していくかについて学びます。また、話を聞くことの意義とリスクについて理解し、相談員のバーンアウトや二次受傷を引き起こさないための相談の組織的対応や相談員自身のメンタルヘルスに関する知識を学びます。
 講師:加茂登志子 若松町こころとひふのクリニック PCIT研修センター長
          東京都女性相談センター 嘱託精神科医

  
(7)ワーク2「ケース別支援のあり方」(45分×2)
 具体的にどのような相談対応をしたらよいか、事例をもとに考えます。男女共同参画の視点に立った相談対応の基礎力を養います。
 講師:竹之下雅代 ウィメンズカウンセリング京都
          NPO法人日本フェミニストカウンセリング学会理事
    杉本志津佳 フェミニストカウンセリング堺
          日本フェミニストカウンセラー協会代表
      
(8) ワーク3「相談事業の展開と連携」(40分×2)        
 相談支援における流れや連携する関係機関の機能や役割を共有し相談支援における展開と連携のあり方を探ります。個人ワークを活用します。
 講師:石本 宗子 社会福祉士

(9)講義4「相談業務を事業・施策へつなげる」(50分)    
 相談から見えるニーズを事業や行政の施策へつなげる取組について学びます。相談から見えてきたことを事業や施策につなげることの重要性について理解します。
 講師:景山ゆみ子 公認心理師・臨床心理士
          東海地区「男女共同参画をすすめる相談事業」研究会顧問

(10)まとめ(20分)                     
 学んだ内容について振り返り、男女共同参画の視点に立った女性関連施設相談員としての意義と役割について再確認します。
 講師:石本 宗子 社会福祉士
   
(11)アンケート記入

6.申込方法等について

(1)方法
申込フォーム:令和2年度「女性関連施設相談員研修」よりお申込みください。

※申込フォームより送信ができない場合については、別紙参加者申込書に必要事項を記入の上、事業課宛てに郵送ください。送受信の行き違いや受信もれを防ぐため、FAX・Eメールは不可とさせていただきます。
※開催要項、参加申込書等の電子データは、国立女性教育会館ホームページよりダウンロードいただけます。

(2)申込期間
令和2年5月13日(水)午前9時~26日(火)午後5時必着
※先着順ではありません。(「4.対象及び定員」を御参照ください。)
※今回のオンデマンド研修については、今後の申込の際には過去の受講経験に数えません。

(3)参加通知
「参加申込書」記載の連絡先に、Eメール又は文書にて発送します。
6月2日(火)までに連絡がない場合は、お手数ですが事業課までお問い合わせください(電話:0493-62-6724 平日9時~17時)。

(4)キャンセル
参加決定後にキャンセルされる場合は、必ず事業課まで電話にて御連絡ください(電話:0493-62-6724 平日9時~17時)。
【キャンセル可能期間】6月2日(火)~6月12日(金)
※キャンセル待ちで参加可能となった方には、6月2日(火)~6月15日(月)の間に御連絡します。

7.参加費

無料(通信料は御自身の負担となります。)

8.その他

(1)フォローアップ調査の実施
 研修終了6か月後を目途にフォローアップ調査を実施します。実際の職務に、研修成果がどのように役立てられているかについて伺い、今後当会館が実施する事業を充実させていくための参考とするものです。

(2)「男女共同参画の視点に立った相談に関する調査研究」への御協力のお願い
 当会館では今年度、現在の相談現場のニーズや課題を把握し、より良い研修や情報提供を行っていくための調査を実施しております。フォローアップ調査とは別に御回答いただいた事前アンケートなどをもとに追加アンケートやヒアリングを後日実施する場合があります。御多忙中とは存じますが、御協力をお願いいたします。

令和2年度「女性関連施設相談員研修」実施報告

 6月17日~30日の14日間の日程で、全国の公私立の女性関連施設、相談機関等の相談員及び相談業務を統括する立場にある地方公共団体における関連施策担当者を対象に、令和2年度「女性関連施設相談員研修」を実施した。この研修は、女性に対する暴力などの喫緊の課題解決を目指し、相談者への理解を深め、相談業務に必要な知識・技能を習得するとともに、関係機関との連携促進を図ることを目的としたものである。複雑・多様化する悩みに男女共同参画の視点から適切に対応できる相談員の育成と業務の質の向上を図り、相談から見えるニーズを事業や行政の施策へつなげるための専門的・実践的研修とした。今年度は新型コロナウィルス感染拡大防止のため初めてのオンデマンド研修で実施、定員を大幅に超える申込みがあり、最終的に362名(相談員255名、関連施策担当者107名)が参加した。

主催者挨拶を述べる内海房子国立女性教育会館理事長

(1)ワーク1「ジェンダー視点を見つめなおす」

 研修の最初のプログラムとして、新堀由美子氏(男女共同参画センター横浜 相談センター長)によるアイスブレイクを含むワークを行った。相談員自身のジェンダー意識を見つめ、問い直すことにより相談に向き合う上での課題の気付きとなった。また、講義を通し、具体的にジェンダー視点に立った相談について解説を行った。参加者にとっては、これから研修がスタートするという心構えを持ち、ワークを通して自分の中にあるジェンダー規範に改めて気付くよい機会となった。

(2)講義1「男女共同参画の視点に立った女性相談とは」

 執行照子氏(NPO法人日本フェミニストカウンセリング学会 代表理事)は、男女共同参画の本質とその視点、フェミニストカウンセリングの基本理念、女性を取り巻く社会状況や家庭における女性の役割の変化、配偶者間等において女性が受ける暴力被害などについて、統計データや法律をもとに講義を行った。
 執行氏は、男女共同参画社会基本法第2条を踏まえ、「女性も男性も共に意思決定の中枢部分に関わることが目指されてきたが、GGGIが121位であること等、日本の社会での課題は多い。」と述べた。フェミニストカウンセリングの基本理念の1つである「個人的なことは政治的なこと」は、ジェンダー格差のある社会構造が存在しているという認識が基となっている。女性相談における支援とは、女性をジェンダー格差社会に「適応」させるのではなく、その人が望む人生を生きられるようサポートするということである。
 労働の場や家庭における女性の役割の変化としては、共働きの家庭は増えたが「男性は仕事、女性は家庭」という性別役割分担意識がまだ根強く残っていて、女性はケア役割と経済の補助役割の両方を求められるようになってきたことが指摘された。 また、ケア役割を負うことの多い女性は、自分の存在価値を他者に決められる立場に置かれて、自己主張が難しくなる、否定的自己像を持たされがちになるなどして、「女らしさ」(ジェンダー)に縛られやすくなることを解説した。
 参加者は、女性を取り巻く社会変化や女性を支援していくのに必要な男女共同参画視点の重要性をとらえ、女性相談の意義や役割について理解した。

(3)情報提供「女性に対する暴力の根絶に向けた取組」

 吉田真晃氏(内閣府男女共同参画局暴力対策推進室長)は、女性に対する暴力対策に関する国の最新施策や今後の方向性について情報提供を行った。
最近では、「安心安全な暮らしの実現」ということが重要なテーマになってきており、女性活躍についても広い意味での女性のエンパワーメントに関わる取組を含めて考えられるようになってきたとのこと、この6月11日に政府から発表された「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」の概要についての説明があり、また内閣府特命担当大臣より出されているメッセージの紹介があった。
コロナの状況の中で深刻化が懸念されるDV対策としては、相談体制等の確保、「DV相談プラス」の開始、特別定額給付金に関わる手続きなどを行っており、総理からも、家庭内での暴力の根絶や被害者の支援に向けて、政府を挙げて取組を強化していくことが述べられたとのこと。また、様々な課題・困難を抱える女性に寄り添い、就労や就労の前段階となる社会とのつながりを回復させ、自立をサポートする取組に対する支援策も拡充された。吉田氏は「女性の様々な困難を支援する次の担い手の育成も重要な課題となっている。どのように支援すればいいのか、相手に寄り添うには、ジェンダーの視点を持つ重要性など、相談員の皆さんにはこのような機会に学んでいただき、ぜひ活躍してほしい」と述べた。

(4)講義2「女性相談支援に関する法知識~DV、性暴力、離婚等~」

 黒田典子氏(海老原法律事務所 弁護士)は、まずセクシュアル・リプロダクティブ/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)について、法や男女共同参画基本計画等の視点から述べた。また、2017年に性犯罪に関する刑法が改正されたことに触れ、現在の日本の刑法の問題点をあげ、被害を受けた際には動画などの決定的な証拠の確保やなるべく早い対応が重要になること、刑事事件の手続きの流れなどの詳細な説明や弁護士による被害者に対する法的支援について解説した。
 さらに、協議離婚・調停離婚・離婚訴訟の手続きや弁護士との打合せ時に確認すること、DV防止法における「配偶者からの暴力」についての定義、保護命令の要件や申立手続などについて具体的な講義を行った。
 離婚した親と子の面会交流については、最近では子の福祉のために認める傾向にあること、間接的面会交流に留める場合の要件などの説明を行った。相談支援に直接役立つ情報が多く、参加者は実践に活用できる学びを得た。

(5)講義3「トラウマ・インフォームド・ケアの概念に基づく性犯罪・性暴力被害者の支援者育成」

 加茂登志子氏(若松町こころとひふのクリニック PCIT研修センター長)は、性暴力の被害体験を聞くとはどんなことか、性暴力被害者の状況をどうとらえ、どのように支援していくかについて、また、話を聞くことの意義やリスク、相談員のバーンアウトや二次受傷を引き起こさないための相談の組織的対応や相談員自身のメンタルヘルスに関する講義を行った。
 最初に支援者育成の大切さ、支援者育成の前に管理者が知っておきたいこと、共感疲労とバーンアウトについて解説した。さらに女性に対する暴力の現状と影響についてWHO(世界保健機関)レポートからデータで示し、医療現場での様々なケースをもとに、具体的にどのような視点が重要であるか、対応の可能性について説明した。
 トラウマ支援については、「親密なパートナーからの暴力、または性被害を受けた女性のためのヘルスケア臨床ハンドブック」(WHO発行)をもとに、トラウマと関連症状の実際、暴力を受けている女性への初期支援の際の4つのニーズ、保健医療従事者による支援方法を取り上げて解説した。特に基本方針に掲げられた、女性中心のケアを行うこととその人の視点を知ることが重要だと示された。そして、初期支援について、5つのシンプルなタスク「LIVES」(L:傾聴する/I:尋ねる/V:認める/E:安全を強化する/S:支援する)を提示し、する必要のあることとないこと、肯定的な対処法を強化することについて解説した。
 最後に加茂氏は、相談員自身のケアについての必要性を強調し、「トラウマ・インフォームド・ケアについてあらためて学び整理することで視点が一歩進むということもある、ぜひ参考にしてほしい。」と述べた。
  

(6)ワーク2「ケース別支援のあり方」

 このワークは男女共同参画の視点に立った相談対応の基礎力を養うことを目的として実施された。竹之下雅代氏(ウィメンズカウンセリング京都)、杉本志津佳氏(フェミニストカウンセリング堺)が、架空事例をもとに画面上でロールプレイを行い、それを踏まえての解説と講義を行った。
 最初に、杉本氏がロールプレイを行った。まず、ロールプレイを通しての気付きや実際に相談員であればどのような質問をしたいかを参加者自身でまとめた。ロールプレイの続きを視聴した後、二次加害や本人と同伴者への対応や考え方などについて、ポイントはどんなことかを考えた。
 次に、竹之下氏がロールプレイを行った。参加者は同様にまず相談員としての考えや対応についての気づきをまとめ、さらにロールプレイの続きを視聴した後、相談者が置かれた状況についての理解や必要な支援、相談員として情報提供できることなどを考えた。
 最後に、竹之下氏より「語る場を用意できないことはひとの生命にかかわる。『トラウマを聴く』社会を築くことで、人とのつながりを持つことができ自分がいる意味を見出すことができる」との励ましがあった。

(7)ワーク3「相談事業の展開と連携」

 石本宗子氏(社会福祉士)は、まず、女性を取り巻く社会環境を踏まえジェンダー不平等の中で女性が抱えさせられる問題について明確化した。その後、参加者が実際にDVの相談を受けた場合に連絡する先として、日頃連携している機関や団体を思い起こし具体的に書き出すワークを行った。相談の流れについての具体的な解説の後、生活再建に関する支援や配慮事項、安全確保のための支援の組立て、離婚手続について説明した。身近な社会資源である具体的な機関については豊富な資料で提示した。社会資源とは、課題を抱えた人が活用できる法律、制度、施設、団体、個人などの総称であり、支援の重要なツールであること、社会資源として自分が使える「引き出し」をどれほど持っているか、どれほど自分のものとし使いこなせるかが重要であることが示された。
 続いてのワークでは、架空事例をもとに、相談者の状況を把握し課題をとらえた上で、実際に支援を組み立て、具体的な目的とそのための連携機関の活用方法について検討し、石本氏が主な支援機関・関係団体と必要な手続きについて解説した。
 最後に、日頃から、必要な社会資源について的確に把握し、いつでも使いこなせるようにしておくこと、被害者が社会とのつながりを保てるようにすることは、回復と自立のために必要な支援であること等が述べられた。

(8)講義4「相談事業を事業・施策へつなげる」

 景山ゆみ子氏(公認心理師・臨床心理士)は、相談から見えるニーズを事業や行政の施策へつなげる取組について講義を行った。
 はじめに、女性相談員には、個別の相談支援を行うと同時に日々の相談内容をまとめ、相談から見えるものを導き出し言語化・見える化すること、つまりそこに見えてくる問題の社会化をする役割も求められていると述べた。相談の中で知り得た問題は、1人の女性相談者だけの課題ではなく、地域社会にとっての貴重な課題資源でもある。「女性相談から見えてくるそれらの課題資源を有効に活かしていくには、単に相談員だけではなく、相談管理職、組織・機関の他部門や管理職などの認識も変わる必要がある。相談員の業務が単に電話相談や面接相談などの時間だけに矮小化されてしまうなら、それらの貴重な資源をスルーすることにつながりかねない。男女共同参画社会の推進という目的を目指すのならば相談事業をもっと有用にダイナミックに見ていくことで相談の果たす役割は広がる」と景山氏は強調した。
 さらに、相談ニーズを事業や施策にフィードバックしていくためには、相談システムの構築や、相談員自身が受け止めた実態を裏付けるバックデータを示すことが必要であることが示された。相談員と担当職員が協力してその作業を行うことで、事業予算や人員等具体的な提案へとつながっていくことが説明された。
 最後に、実際の取組事例が具体的に示され、日々の相談のまとめから事業化につなげる実践を学んだ。女性相談からいま見えてきている多くの新たな課題も示され、今後の活動への期待が述べられた。参加者は、相談から見えてきたことを事業や施策につなげることの重要性について理解した。

(9)まとめ

 講師の石本宗子氏は、各参加者がこの研修を振り返り、研修を最後までやり通した自分自身を褒めるワークを行った。その結果、参加者がエンパワーされると同時に、相談者をエンパワーさせることの重要性や方法を知るよい機会となった。
 参加者からは、「経験が浅く、知識が少ないことに不安を持っていたが、『相談員のあなた自身が社会資源なのです』という言葉にとても励まされた。日々、広い知識を構築していきたい」「ふりかえりがとても大事なことに改めて気づいた。石本先生から『社会資源』の言葉をいただき、グッときて力になった」との感想が寄せられた。

●参加者からの感想

・今回のオンライン研修は、具体的なケースを挙げたワークやロールプレイが多くあり、大変参考になりました。相談者の視点から見て、今まで自身が行っていた対応はどうであったかを見つめ直す、良いきかっけになりました。
・実務的なことだけでなく、国の最新の施策や男女共同参画の歩みについて歴史的に学ぶことができ、自分の中で整理することができた。女性相談のノウハウを丁寧に学ぶ機会になり、また、即使用できるシートなどもありがたかった。
・具体的なケースを盛り込んだ内容で非常にわかりやすく,女性相談における視点や支援の在り方を再確認できました。また、知識不足であった性暴力について法知識,初期対応、そして、最新の取組み等の情報について知ることができ,勉強になりました。とても充実した内容の研修でした。
・支援の根本の考え方から丁寧に教えていただいたので、どの内容もわかりやすかった。また、自身のエンパワーメントにもつながった。
・オンライン研修を行っていただいた事により、本来であれば受ける事の出来なかった研修を受ける事ができました。最前線で活躍される専門分野の先生方の話は、どれも今後の相談業務に活かせる内容ばかりでした。

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