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実施報告

令和2年度「男女共同参画の視点による災害対応研修」(オンライン形式)

開催期間:令和2年12月17日(木) / 定員:200名

開催場所:オンライン開催 /


事業内容

実際の災害対応に当たるリーダー層を対象に、男女共同参画視点での災害対策に必要な視点と具体策について学習する機会を提供するために防災・復興を切り口に普段からの男女共同参画社会形成の重要性についても学ぶ研修を試行的に実施する。

お知らせ
 ライブ配信、オンデマンド配信の申込は終了しています。

1.趣旨

 災害に強い地域を作るためには、男女共同参画の視点による取組が不可欠です。
 男女共同参画の視点による災害対応の必要性は、「防災基本計画」及び「第4次男女共同参画基本計画」に掲げられており、国際的にも「仙台防災枠組2015-2030」において女性・若者のリーダーシップ促進が謳われ、SDGs第11目標ではこの枠組に沿った総合的な災害リスク管理が求められているところです。しかしながら、わが国の防災・復興にかかる意思決定の場への女性の参画は、未だごく一部にとどまっており、平時から復興まであらゆる局面にいたる男女のニーズの違いへの配慮についても十分には対応できていません。災害が頻発する今日、これらの課題解決は全国共通の急務です。
 このような事態を打開するため、今回の研修では、地域の災害対応において中心的な役割を担う自治体職員等の方々を対象に、災害対応、特に防災における男女共同参画視点の意義と対策方法についての具体的な情報提供を行います。感染症対策のためオンライン形式で実施しますが、その利便性を活かして一人でも多くの関係者に受講いただき、関係各部内での認識共有が進む機会となることを期待します。

2.テーマ

「男女共同参画視点が災害対応を強化する」

3.主催

独立行政法人国立女性教育会館

4.共催

内閣府男女共同参画局

5.日時

(1)ライブ配信(Zoomによるウェビナー)

  令和2年12月17日(木) 13:30~16:30

(2)オンデマンド配信(ライブ配信の録画をYouTubeで限定公開)

  令和2年12月21日(月)9:00~令和3年1月29日(金)17:00

6.対象・定員

自治体の防災・危機管理担当部署/男女共同参画担当部署/福祉担当部署 管理職・職員、
地域防災計画委員 等

(1)ライブ配信
200名程度(申込先着順)
*防災・危機管理担当部署と男女共同参画参画担当部署がともにライブ配信に申し込んだ自治体の参加を優先します。ライブ配信が定員に達した場合は、オンデマンド配信の視聴となります。
(2)オンデマンド配信
定員なし
*オンデマンド配信視聴の場合は、質疑応答には参加できません。

7.内容 ※12月17日ライブ配信スケジュール

(1)開会挨拶   13:30~13:40

  ① 主催者あいさつ  内海 房子  国立女性教育会館 理事長
  ② 共催者あいさつ  林  伴子  内閣府男女共同参画局 局長

(2)講義1「地域防災力の向上のために〜男女共同参画視点の取り込み方」13:40~15:00

 阪神淡路大震災以降の度重なる災害経験から、災害対応における男女共同参画視点の重要性が徐々に知られるようになってきました。男女がともに地域防災のあらゆる場面に参画し、性別によって異なる被災経験や支援ニーズに応じた備えができるかどうかは、いざという時の住民の生命維持に直結します。しかし、従来当然のように男性が中心となって担ってきた地域防災活動のスタイルを変えることはそう簡単ではありません。
 防災活動に男女共同参画視点を実践的に盛り込んでいくには、いったいどのようなアプローチが有効なのでしょうか。地域防災活動への男女共同参画視点の導入とその効果について、災害脆弱性の克服をテーマに実践的研究を重ねてこられた池田恵子さんに伺います。

  講師  池田 恵子  静岡大学教育学部/防災総合センター 教授
             減災と男女共同参画研修推進センター 共同代表

(3)講義2「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン 解説」15:10〜16:30

 令和2年5月に内閣府男女共同参画局が作成した「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」には、東日本大震災をはじめとするこれまでの災害経験を踏まえ、男女共同参画の視点に立った具体的な災害対応の実際が網羅されています。地域防災計画や避難所運営マニュアルにすぐに活かせるこのガイドラインの要点について、作成に携わった「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組に関する検討会」事務局担当官の佐藤勇輔さんと座長の浅野幸子さんが解説します。
  講師  浅野 幸子  早稲田大学地域社会と危機管理研究所 招聘研究員
             減災と男女共同参画研修推進センター 共同代表
      佐藤 勇輔  内閣府男女共同参画局総務課企画官

8.参加費

無料(通信料は参加者の負担となります。)

9.申込方法

(1)申込方法

 専用フォームからお申し込みください。

(2)申込期間
 令和2年11年17日(火)9:00~12月7日(月)17:00必着

(3)参加決定
 「申込フォーム」記載の連絡先に、メールでお知らせします。
 *12月15日(火)を過ぎても連絡がない場合、また、キャンセルされる場合は、お手数ですが事業課までお問い合わせください。

10.その他

視聴にはインターネットに接続できるパソコン環境(タブレット、モバイル端末も可)が必要です。
ライブ配信の視聴は、先にZoomアプリをインストールしておくとスムーズです。

 国立女性教育会館では、12月17日に「男女共同参画の視点による災害対応研修」を内閣府男女共同参画局との共催でオンライン開催した。今回の研修では、男女共同参画の視点に立った災害対応の必要性は認識しながらもなかなか取組には手が回らない各地域の現状を踏まえ、地域防災の中心的な役割を担う自治体職員を対象に、導入の意義と方法について具体的な情報提供を行った。昨年5月に改訂された内閣府「災害対応力を強化する女性の視点〜男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン〜」(以下「ガイドライン」)も紹介し、災害対応の各段階で取り組むべき事項や実践例について解説した。研修の収録動画は、約1ヶ月間にわたってオンデマンドでも配信した。

 開催にあたっては、受講が防災・危機管理部署と男女共同参画部署の連携の契機となるよう、内閣府防災担当政策統括官と男女共同参画局との連名で各自治体宛に案内を発出。全国から436件の申し込みがあり、自治体数で250、うち71自治体が複数部署の受講であった。参加者からは「自治体がやるべきことがよく分かった」「学んだことを避難所マニュアルや防災計画に反映させる」「防災担当と男女共同参画担当とで共通理解ができた」等の肯定的な感想が多数寄せられた。

 終了後も問い合わせを多くいただいたので、講義1は以下に抄録を掲載する。講義2で解説された「ガイドライン」については、内閣府男女共同参画局のホームページから直接ダウンロードできるので、詳しくはそちらを参照いただきたい。

〇主催者あいさつ

 内海房子理事長が挨拶し、「阪神淡路大震災から身を持って危機に直面した方々や支援者が声を挙げ続け、男女共同参画の視点による災害対応に焦点が当たるようになった。意思決定の場に女性が少ない日本で、地域社会の在り方が反映される防災・復興分野に男女共同参画の視点を導入するのは難しい仕事だが、立ち止まっていては何も変わらない。関係各所が連携し、果敢にこの課題に取り組んでいく必要がある」と述べた。

〇共催者あいさつ

 林伴子内閣府男女共同参画局長が挨拶し、「今回の研修は、地方自治体の防災・危機管理部局と男女共同参画部局がともに参加する画期的な試み。災害対応に男女共同参画の視点は欠かせない。国では「ガイドライン」の作成、防災基本計画の修正、被災自治体への男女共同参画局職員の派遣等を実施してきた。第5次男女共同参画基本計画に基づき、今後も取組を強化していく。地方自治体においてもぜひ防災・危機管理部局と男女共同参画部局が連携し、「ガイドライン」を活用して積極的に取組を進めていただきたい」と述べた。

〇講義1「地域防災力の向上のために〜男女共同参画視点の取り込み方」

 静岡大学教育学部・防災総合センター教授、災害と男女共同参画研修推進センター共同代表の池田恵子氏が、以下のように講義を行なった。

1)男女共同参画の視点に立った災害対応とは

 阪神淡路大震災後の度重なる災害で、性別によって被害・被災の困難が異なることが認識されるようになった。例えば、避難所でのプライバシー確保等の生活環境・健康衛生面、女性用品・介護用品等の備蓄と配布方法、DVや性暴力等に対する安全、性別役割分担の固定化(男性はリーダー役・女性は炊き出し、等)といった家庭・社会生活面での問題である。適切な支援環境が整っているかどうかが避難行動を大きく左右し、健康や生命の維持にもダイレクトに関わる。熊本地震では、関連死は直接死の4倍以上に上った。大規模災害時には、直接の被害対応だけでなく、長引く避難生活の環境整備や共助が働く仕組みづくりが不可欠なのだ。

 男女共同参画・多様性配慮と地域防災力の向上との結びつきは深い。避難行動要支援者・要配慮者に限らず、地域に暮らす人々の性別、家族構成、就労状況といった多様性に配慮した支援を整備することは、遠回りなようで、実は被害削減への近道である。鍵となるのは、女性と、いろいろな意味での当事者たちだ。被災者・要配慮者の半分、そして要配慮者や子どものケア、保育・医療・介護職の大半を担っているのは女性である。一部のリーダーや中高年男性だけが頑張って被害拡大を食い止めることは困難だ。実生活に根ざした知識や能力を持つ女性たちが地域防災の意思決定に関わることで、支援が当事者ニーズに即したものになる。実現のためのポイントは3つ。① 方針決定の場への女性の参画とそのための能力強化 ②災害時にも男女ともが日常生活での役割を果たせるようにすること ③ 支援に際しての安全確保・暴力防止。各地域事情に照らし合わせ、防災〜復興の各段階で想定される課題を見極めながら、この3点にバランスよく取り組むことが重要である。災害時にも女性を子育てや介護に縛り付けていたのでは、女性はいつまでたっても地域防災の担い手になることができない。日常のニーズを満たしつつ、より多様な視点から対策を担える人材を男女ともに育成し、その活動の場を整えていくことだ。

2)施策の進捗と課題

 男女共同参画の視点に立った災害対応が具体化し始めたのは、東日本大震災後である。国からも「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」(2013)、「避難所運営ガイドライン」(2016)など具体的施策が示され、以後の大災害では関連する支援も着実に増えた。

 では、各地の施策の進捗状況はどうだろうか。2つの全国自治体調査(堂本暁子千葉県知事(当時)を中心とした全国知事会による2008年の調査、大沢真理東大名誉教授の研究チームによる2017年の調査)の結果を比較してみると、避難所運営指針等に対応(プライバシーの確保、妊産婦・乳幼児を持つ女性への支援、避難所運営への女性の参画推進等)を記載した自治体、また、備蓄品に女性・乳幼児・介護用品を加えた自治体が増えていることが分かる。防災・危機管理部局における女性職員・管理職比率の低さは改善が進んでいなかったが、防災会議の女性委員比率については若干ながらも増加傾向にあった。さらに分析すると、防災計画等の改訂を男女共同参画担当部署と連携して行った自治体では、対策が進んでいることが分かった。女性の参画の有無も施策の具体化に大きく影響していた。防災会議に女性委員がゼロの自治体では、女性のみならず高齢者や乳幼児に配慮した防災備蓄もないところが多かった。

 施策導入が四国地方で進んでいたことにも注目したい。潤沢な職員配置や予算がなくてもできる、ということだ。詳細な要因は研究中だが、日頃から女性が意思決定の場に加わっていることが背景にあると思われる。四国全県が自治会長に占める女性比率の全国トップ5に入っている。

 このように、男女共同参画の視点に立った災害対応についての必要性認識と計画上の導入は、ある程度は浸透したと言えるだろう。現在は、もはや実践と地域における定着のための施策を考える段階に入っているのである。

 地域に向けた施策の中心は、自主防災組織への女性の参画促進だ。女性の防災人材育成講座や女性団体による防災活動等が活発になる一方で、実際の自主防災組織の役員に女性はほとんどいないという現状をなんとかしなければならない。大きな原因の一つは「女性が防災を担う」ことに対する認識のズレではないだろうか。自治体危機管理部署や男性の地域防災リーダーは「女性はなかなか参加してくれないし無理に登用すれば反発も招く。手伝い程度にいてくれれば」「女性ならではのきめ細かな雑用を担ってほしい」と考え、女性たちは「炊事・救護以外には関わらせてもらえない」「男性ばかりで入り込める雰囲気ではない」という思いを抱えている。このズレの解消に必要なのは、自治体による仲介だ。自治体に求められるポイントは3点。①女性の参画促進に関する行政の意図の明示:妥当な目標を設定した上で危機管轄部署から周知し、地域は数年程度では変わらないという現実を踏まえて段階的に取り組む。モデル地区からの普及、女性も参加しやすい運営方法の紹介(時間帯、発言機会の設け方など)等の工夫も有効。② 人材と活動の場のマッチング:防災活動に意欲ある女性たちと自主防災組織がつながる機会を設ける。③ 幅広い女性層から参加を募る:地元女性グループや市民団体と地域組織をつなぐ。子どもや要配慮者を抱える女性たちの危機意識に呼応した防災事業も、人材を発見する機会になる。

 静岡市女性会館では、防災行政・ボランティア協会・自治会等と連携して女性防災リーダー育成講座を開催した。講座では、避難所運営ゲーム等を通してノウハウを学び、防災訓練プランを作成。さらに自治会長たちを招いて受講生と意見交換の場を設けた。その結果、防災訓練プランは実施に至り、女性防災人材も地域につながった。仙台市では、育成した人材に丁寧に伴走することで、地域防災の現場に結びつけている。女性対象の研修で意識を高めてから男女混合の研修を行う、研修を修了した女性の情報交換・フォローアップの場を設ける、研修を生かした活動の場を提供する、等の工夫が実を結んだ。

 自治体内部における取組の中心は、危機管理担当部署の女性比率アップ、危機管理担当部署・男女共同参画担当部署の連携促進だ。ポイントは2点。① 災害対応従事者への支援の整備:自身が負担を抱えた状態で十全な支援はできない。託児や家族のケア、活動・派遣時の安全確保等は、特に女性職員配置には必須である。ローテーションを組んでのレスパイト(一時休息)の確保も重要。② 行政の総合化を意識する:高知市や伊勢市では、幅広い関係部署から女性職員を集め、庁内を横につないだ防災体制を作って効果を上げている。男女共同参画部署の役割いついても明確化し、担当部署だけが行えることと他部署連携で初めて効果が出せることを整理しておくことだ。自治体の好事例は他にも多数あるので、ぜひ参考にされたい。

3)言葉から実践へ

 計画文書への記載は入口に過ぎず、定着までの道のりはまだ長いと言わねばならない。特に、女性リーダーが活躍できる自主防災組織の環境づくりは、時間のかかる課題だ。「言葉」を「実践」につなげていくための具体的な工夫が求められている。3年や5年で結果が出ないからと諦めず、ぜひ長期的な視野に立って粘り強く取り組んでいただきたい。

〇講義2「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン 解説」

 最初に「ガイドライン」作成の経緯と内容について、内閣府男女共同参画局総務課企画官の佐藤勇輔氏が説明した。

 東日本大震災等において女性の視点からの災害対応が十分でなかったことから、内閣府では平成25年に「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」を作成した。さらに続いた災害でも対応が十分でなかったことから、令和元年10月「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組に関する検討会」を立ち上げ、検討会のメンバー、担当職員が各被災地に足を運んでまとめた提言を踏まえ、「取組指針」改訂版となる「ガイドライン」を令和2年5月に作成した。また、防災基本計画を修正し、地方公共団体において防災・危機管理担当部局と男女共同参画部局、男女共同参画センターの連携体制の構築と、災害対策本部への女性職員や男女共同参画担当職員の参加促進、女性視点での災害対応強化を目的として内閣府職員を現地に派遣し必要な支援・助言を行うこと等を盛り込んだ。これに基づき、令和2年7月の熊本豪雨災害では、内閣府調査チームの一員として男女共同参画局職員が派遣され、「ガイドライン」の活用依頼、避難所等への性暴力防止ポスター・チラシ配布など自治体の支援にあたった。第5次男女共同参画基本計画においても、地方公共団体の取組への支援を主軸に、防災・復興に関する政策・方針決定過程への女性の参画拡大、防災の現場における女性の参画拡大、「ガイドライン」の活用徹底等に取り組む。

 佐藤企画官は、「災害対応における女性の視点を強化するためには、防災・危機管理担当部局と男女共同参画担当部局の連携が不可欠。災害対応において、ガイドラインに基づき、女性の視点に立った取組を行うこと、また平常時からの防災・危機管理担当部局と男女共同参画部局の連携に努めることをお願いしたい」と強調した。

 次に、早稲田大学地域社会と危機管理研究所 招聘研究員、減災と男女共同参画研修推進センター 共同代表の浅野幸子氏が講義を行った。浅野氏はまず、国の防災基本計画において、年齢・性別・障害の有無といった被災者の事情から生じる多様なニーズへの適切な対応とともに、防災体制に変化した社会構造に応じて女性や高齢者・障害者などの参画を図り、男女共同参画その他の多様な視点を取り入れることが求められている、と指摘。その後、内閣府「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」のポイントについて、具体的な事例を示しながら解説した。「ガイドライン」は、2013年版以降に明らかになった情報を加え、基本的な考え方、平時の備え、初動段階、避難生活、復旧・復興の各段階で行政が取り組むべき事項をコンパクトに示した、実用的な構成になっている。すぐに使える備蓄品や避難所運営のチェックリスト、啓発ポスター等の資料も巻末にまとめられている。

 浅野氏は、男女共同参画の視点がダイレクトに反映される体制づくりを取り上げ、庁内の担当課や防災会議、災害対策本部に男女共同参画センター長や男女共同参画担当職員を入れる、女性職員を増やす、避難所は庁内各担当部署と連携して運営する等の工夫を求めた。また、日頃から男女共同参画や民間団体と関わりのある部署等とつながり、男女共同参画の視点や多様なニーズに応じた様々なノウハウを持つ地元の女性人材や民間団体の協力を得られる体制にしておく重要性を指摘した。応援・受援体制の整備についても強調し、「ガイドライン」の内容を盛り込んだ職員派遣マニュアルの作成、女性職員が安心して派遣に応じられる環境整備を勧めた。派遣の効果を上げるためのノウハウ支援も必要だ。仙台市では、熊本地震の際に、職員派遣の説明会において男女共同参画部局が女性の視点からの注意事項を記載した資料の避難所配布を呼びかけ、質の高い支援に結びつけた。

 また、男女別データを収集・分析し、地域防災事業活性化の取組や住民が議論や計画を行う際の基礎資料とすることも重要だと述べた。例えば、地区レベルでの男女別・世代別人口、昼夜間人口、高齢化率、子どもの年代と人数、外国人の出身国・言語と人数などを把握するだけでも、効果的な避難行動や助け合い活動、外部支援の検討につながるであろう。必要なデータ項目の確認には「ガイドライン」巻末のデータチェックシートが便利。浅野氏は、「エビデンスに基づいた施策立案を行って、精神論を排した客観的な支援施策につなげてほしい」と強調した。

 このほか、自主防災組織に女性の参画を増やす工夫、災害に強いまちづくり、災害時の適切な授乳支援、支援対象から漏れやすい子どもや若年女性への配慮などについても詳しい解説がなされた。

 講義後は、内閣府男女共同参画局の藤田昌子専門職とともに参加者からの質問に応じ、各自治体作成の住民向け啓発資料の活用や、人事部門と連携した職員研修、LGBTQの当事者団体による情報等に基づいたニーズに応じた支援実施についてなど、さらに具体的な情報提供が行われた。【写真は浅野氏(左上)と藤田氏(下)】

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