研修・イベント

研修

実施報告

2019年度「アーカイブ保存修復研修」(基礎コース)+(実技コース)

開催期間:2019年11月27日(水)~29日(金) / 定員:基礎コース:30名 /実技コース:20名/オプション:20名

開催場所:国立女性教育会館(基礎・実技)(株)資料保存器材(オプション)


国立女性教育会館では、女性の歴史を今に生かし、未来につないでいくために、女性に関わる原資料(女性アーカイブ)の保存と活用に取り組んでいます。
その活動の一環として、アーカイブの保存や整理について新しい情報をお求めの方や、これから業務にとりくむ方のために、平成21年度からアーカイブ関連の研修を実施しています。
アーカイブの作成や保存に関する講義・実践報告・活用事例と参加者によるディスカッションを行う基礎コース、そして資料の保存修復を実習形式で学んでいただく実技コースを開催します。
女性アーカイブの保存・提供に携わる実務者の方、大学・機関等の図書館や文書館職員の方のご参加をお待ちしております。


1.期  日

令和元年11月27日(水)~11月29日(金)
①基礎コース:11月27日(水)午後~28日(木)午前 1泊2日
②実技コース:11月28日(木)午後~29日(金)午前 1泊2日
 オプション:11月29日(金)午後

・基礎コースのみ、実技コースのみ、基礎・実技通しての参加、いずれも可能です。
・実技コースは②の1泊2日、全日程参加のみです。内容は平成30年度とほぼ同じです。
・オプションは全日参加の方を優先とします。
・研修参加の方は国立女性教育会館に1泊1,200円でご宿泊いただけます。

2.募集人員

女性関連施設・図書館・文書館の実務担当者、地域女性史編纂関係者
①基礎コース:30名
②実技コース:20名
・オプション:20名

3.日程・内容

【基礎コース・1日目】11月27日(水)

受付(12:45~13:00)
(1)開会・挨拶・オリエンテーション(13:00~13:10)
                    
(2)史資料保存の考え方と取組み方(13:10~14:40)
史資料保存では特に次の2点が重要です。
1)保存をプリザベーション(補修だけでなく予防、代替、防災などを含む広い概念)で理解すること
2)保存ニーズを把握して総合的、計画的に取り組むこと。
これらについて具体的、実践的に学びます。
 講師:専門図書館協議会顧問、元国立国会図書館副館長 安江明夫氏

(3)アーカイブ活用事例:三重の女性史研究会(14:50~15:20)
発足10年を迎える三重の女性史研究会の歩みと、活動におけるアーカイブ資料の活用について、女性史の視点から具体例をお話いただきます。
 講師:三重の女性史研究会 佐藤ゆかり氏

(4)アーカイブ実践報告 1:日本女子大学成瀬記念館(15:20~15:50)
日本女子大学成瀬記念館は、創立80周年記念事業の一環として、1984(昭和59)年に竣工。創立者成瀬仁蔵の教学の理念と学園の歴史を明らかにし、広く女子教育の進展に寄与することを願って設立されました。学園の文書館、博物館としての、様々な活動の実践をご報告いただきます。
 講師:日本女子大学成瀬記念館学芸員 岸本美香子氏
※本プログラムは講師都合によりお茶の水女子大学から変更となりました。
 どうぞご了承ください。

(5)グループディスカッション(16:00~17:00)
テーマ別または機関別にグループ分けし、ディスカッションを行います。
時間内での結論づけを求めず、日常業務で他人に相談する機会がない疑問等について議論や情報交換を行う場を提供します。

(6)女性教育情報センター、女性アーカイブセンター見学(17:15~18:00、希望者のみ)

(7)情報交換会(19:30~20:30、希望者のみ)
参加者相互の情報交換やネットワークづくりの場を提供します。

【基礎コース・2日目】11月28日(木)

(8)アーカイブ実践報告 2:WANミニコミ図書館(9:00~9:40)
2013年に認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)の中に女性の活動を伝えるミニコミを収集・保存・公開することを目的に開館。
許諾の得方、デジタル化、公開の実践をご報告いただきます。
 講師:WANミニコミ図書館館長 境磯乃氏

(9)資料のデジタル撮影のポイントと注意点(9:40~10:20)
資料をデジタル化する際の作成方法、画像の仕様、チェック方法等について説明いただきます。
 講師:東京大学経済学部資料室学術支援職員 岸剛史氏

(10)アーカイブと著作権(10:30~12:00)
資料の複写・撮影・デジタルデータ公開等に関わる著作権、肖像権や個人情報等の関連する法制度について解説いただきます。
 講師:東洋大学准教授、東京大学客員准教授 生貝直人氏

【実技コース・1日目】11月28日(木)

受付(13:15~13:30)

(1)開会、オリエンテーション(13:30~13:35)

(2)紙資料の修復関連実習①(13:35~17:00)
コンサベーション・バインディングの実習を通して、図書資料の構造を理解し、受講者が補修を行う際に役立つ知識や技術を学びます。
 講師:(株)資料保存器材 伊藤美樹、高田かおる

【実技コース・2日目】11月29日(金)

(3)紙資料の修復関連実習②(9:00~11:00)
1日目の実習の続きを行います。
 講師:(株)資料保存器材 伊藤美樹、高田かおる

(4)質疑応答(11:00~11:55)
実習や日頃の補修作業での疑問や課題について質問する時間を設け、情報共有を図ります。
 講師:(株)資料保存器材 伊藤美樹、高田かおる

閉会(11:55~12:00)

【オプション】11月29日(金)

(1)(株)資料保存器材見学会(15:00~17:00)
東京・駒込に移動し、全国から集まるアーカイブ資料の保存修復の作業現場を見学します。
研修に全日ご参加いただける方のお申込を優先とします。

4.主催

独立行政法人国立女性教育会館

5.後援

株式会社資料保存器材

6.会場

基礎コース・実技コース
国立女性教育会館(東武東上線武蔵嵐山駅徒歩12分)
〒355-0292 埼玉県比企郡嵐山町菅谷728番地

* オプション(工房見学)
株式会社資料保存器材(JR駒込駅、東京メトロ南北線駒込駅・本駒込駅、都営三田線千石駅より徒歩10分)
〒113-0021 東京都文京区本駒込2-27-16富士前ビル2F

7.経費 

(1)参加費 ①基礎コース:無料 ②実技コース:材料費2,000円
(2)宿泊費 1泊1,200円(前・後泊とも同額)
(3)食費
 朝食 バイキング 880円
 昼食 カフェテリア形式 550円~800円程度
 夕食 バイキング 1,100円
(4)情報交換会費  1,000円(希望者のみ。軽い飲食物をご用意します)

8.申込み手続

(1)方法
下記①または②のいずれかにてお申し込みください。
①電子メール:このページ上部に掲載の「申込書」に入力し、ファイル添付にて送信
(メール本文に必要事項を記入しての送信も可)。
②FAX:ホームページ掲載の申込書様式に記入の上送信
(様式がなければ必要事項を記入した紙でも可)
    
(2)期限
令和元年11月14日(木)
*定員を超えた場合は、期限前に締め切ることもあります。

すべての申し込みを締切ました。多数のお申し込みありがとうございました。

お問い合わせ

国立女性教育会館情報課 (担当・森、島田)
〒355−0292 埼玉県比企郡嵐山町菅谷728

電話 0493-62-6728
FAX 0493-62-6721
E-mail infodiv@nwec.jp

令和元年11月27日(水)~11月29日(金)の3日間にわたり、「アーカイブ保存修復研修(基礎コース)+(実技コース)」を実施しました。「基礎コース」には32名、「実技コース」は26名の参加がありました。「基礎コース」ではアーカイブの基礎に関する講義や実例報告を行い、「実技コース」では紙資料の保存・修復の実習を行いました。

11月27日(水)

<基礎コース 1日目>

【史資料保存の考え方と取組み方】

安江氏は国会図書館に長く勤務され、その間、国際図書館連盟資料保存分科会委員、日本図書館協会資料保存委員長などを勤めた資料保存に関する専門家です。まずアーカイブズ・図書館における「保存処置の原則」により、資料の原資料性・全体性を維持するために、できるだけ修復は避けるべきということを確認しました。「治す」より「防ぐ」ことが大切で、そのためには資料の素材を知ること、温度・湿度、照明、虫・カビ等への対策をすること、点検の大切さなど、詳しく教えていただきました。

講師:安江明夫氏

【アーカイブ活用事例:三重の女性史研究会】

佐藤氏は三重の女性史研究会事務局長として、地方女性史研究を続けてこられました。『三重の女性史』の年表作成に、文献や新聞を調査され、それにはNWECの文献情報データベースの新聞記事検索を役立てていただきました。それ以降の研究にも各地の図書館、アーカイブを活用され、資料の電子化の恩恵と地域格差等の限界、地域女性史編纂のために収集した資料の公開に関する課題についてお話しいただきました。

講師:佐藤ゆかり氏

【アーカイブ実践報告 1:日本女子大学成瀬記念館】

岸本氏は日本女子大学成瀬記念館の学芸員です。学園の文書館、博物館としての成瀬記念館の収蔵資料、展示、出版、収集・保存・整理、デジタルアーカイブや文献検索についてお話しいただきました。

講師:岸本美香子氏

【グループディスカッション】

日常の業務で困っていることやその解決方法、講義で参考になった点等について、講師も交えディスカッションを行いました。

グループディスカッションの様子

女性教育情報センター、女性アーカイブセンター、女性アーカイブセンター展示室見学

NWEC情報課職員の案内により、女性教育情報センター、女性アーカイブセンター、女性アーカイブ展示室の見学を行いました。(希望者のみ)

情報交換会

参加者全員による自己紹介ののち、軽食をとりながら自由歓談で交流をさらに深める情報交換が行われました。(希望者のみ)

情報交換会の様子

11月28日(木)
<基礎コース 2日目>

【アーカイブ実践報告 2:WANミニコミ図書館】

境氏は認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)のWebサイトに、女性の活動を伝えるミニコミを収集・保存・公開することを目的に開館したミニコミ図書館の館長です。女性たちが自分たちの思いや気づきを自分たちの言葉で表現し・伝え・繋がるために作ったミニコミを、女性たちの軌跡を伝える貴重な資料として、インターネット上で公開し次世代に引き継いでいます。許諾の得方、デジタル化、データの保存、資料の利活用、今後の課題についてお話しいただきました。

講師:境磯乃氏

【資料のデジタル撮影のポイントと注意点】

岸氏は資料保存と撮影の専門家で立ち上げた株式会社カロワークスの一員で、2019年からは東京大学経済学部資料室学術支援職員として、資料のデジタル化をされています。本講義ではデジタル化の機材の比較、原理、解像度、カラーと階調数、撮影方法、画像処理、画像ファイル形式の違いについてなど、詳しく教えていただきました。

講師:岸剛史氏

【アーカイブと著作権】

生貝氏は東洋大学准教授で、専門は情報政策、デジタルアーカイブの法政策です。東京芸術大学アーカイブセンター特別研究員、デジタルアーカイブ学会理事、文化庁文化審議会専門委員(著作権分科会法制・基本問題小委員会委員)等もされています。講義では図書館、アーカイブに携わるものが知っておくべき最近の著作権法改正点について、さらにデジタルアーカイブでは特に注意が必要な肖像権、個人情報保護法等について幅広く教えていただきました。

講師:生貝直人氏

<実技コース 1日目>

【紙資料の修復関連実習1】

伊藤氏と高田氏は、株式会社資料保存器材に勤務される、資料の修復の専門家です。本研修では2日間にわたって、紙資料を修復する様々な知識や技術をご教示、ご指導いただきました。

講師:伊藤美樹氏

11月29日(金)
<実技コース 2日目>

【紙資料の修復関連実習2】

1日目に引き続き、紙資料を修復する様々な技術や知識をご教示、ご指導いただきました。実習後には質疑応答も行われました。

講師:高田かおる氏

オプション

東京都内にある株式会社資料保存器材にて、全国から集まるアーカイブ資料の保存修復の作業現場を見学しました。(希望者のみ)

見学の様子

参加者アンケートから
基礎コース

・実務者レベルでの参考になる話が聞けたことがよかったです。
・専門の先生方の講演で、考えていたのとはまったく違う方向に「保存」が動いていきそうです。刺激になりました。
・目からうろこの資料保存、また、資料を必要にしている方に検索が早くできるようにデータベースを充実させなくてはいけない。資料室の整理をきちんとしなくてはいけないことを確認できた。

実技コース

・単なるHow toはネットからでも情報が得られるが、対面での実技指導は安心感も高く疑問点もすぐ確認できたので非常に良かった。
・私は司書なので本の修理に関心があったのですが、補修の発注者となる際の知識として本の構造を知る大切さがよくわかりました。
・お話のすべてが、しみじみと納得できるもので、何度も受講したくなりました。教えていただいた製本方法が、永く保存と利用に適したものであることがよく身に染みて理解できました。

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