研修・イベント

研修

実施報告

平成28年度「学習オーガナイザー養成研修」

開催期間:平成28年12月14日(水)~12月16日(金)2泊3日 / 定員:30名

開催場所:国立女性教育会館 /


1.趣旨

 国立女性教育会館では、「男女共同参画の視点に立つキャリア開発」をテーマとした体系化された学習プログラムを企画・実施する「学習オーガナイザー」を養成する研修を開催します。
 キャリアを個人の発達と社会参画の両面からとらえ、男女共同参画の基本理念や取組の意義、社会状況や現代的課題について整理するとともに、学習方法や評価など、事業運営に関する実務的な学びの機会を提供することで、経験者の知見・技能の向上と人材養成をもって男女共同参画の推進を図ります。

2.目的

(1)男女共同参画意識の醸成、キャリア開発の基礎的理解、実態・課題把握をふまえた課題解決に結びつくプログラムの企画・実践力を形成します。
(2)「男女共同参画」と「キャリア開発」の二つの視点に立った学習プログラムを企画・実施できる人材の育成を通じ、男女共同参画社会の形成を推進します。

3.主催

独立行政法人国立女性教育会館

4.会場 国立女性教育会館

〒355-0292 埼玉県比企郡嵐山町菅谷728
TEL 0493-62-6724・6725
FAX 0493-62-6720

5.期日

平成28年12月14日(水)~12月16日(金)2泊3日

6.対象及び定員

女性関連施設、公民館、行政、大学、NPOなどで、研修・学習事業、女性のキャリア開発、女性の活躍推進に係る事業等の企画・実施経験を有する方 30名
*初めて参加される方、現に業務に就いている方、活動している方を優先します。

7.日程・内容(各プログラムの間に10~15分の休憩が入ります)

第1日 12月14日(水)

(1)開会                                    13:00~13:45
①主催者あいさつ
②オリエンテーション・日程及び趣旨説明、参加者同士の自己紹介

(2)講義「プログラムデザインの意義と役割」                   13:50~14:40
 学習プログラムの設計図となる「プログラムデザイン」作成の目的・意義とその重要性について、学習の「見える化」の視点から理解を深めます。
 講師:櫻田今日子 国立女性教育会館事業課長

(3)講義「男女共同参画の基礎的理解を深めるために~社会参加の経験の発展として~」14:50~15:50
 男女共同参画の歴史的経緯や、個としての女性と社会との関係などを踏まえ、男女共同参画の今日的な理解について講義を行います。
 講師:神田 道子 東洋大学名誉教授、国立女性教育会館事業課客員研究員

(4)講義「キャリア開発上の課題について」                    16:00~17:00
 キャリア開発を進める上での発達段階及び社会的状況による課題について、キャリアの個人的側面と社会的側面、キャリア開発の多様性の視点から学びます。
 講師:亀田 温子 十文字学園フェロー、十文字学園女子大学名誉教授

(5)ワークショップ「課題の共有と整理」                     19:00~20:30
 プログラムの対象となる学習者の実態や課題を把握するため、年齢・性別・所属など、属性や状況に起因する課題を探り、共有します。
 講師:引間 紀江 国立女性教育会館事業課専門職員

第2日 12月15日(木)

(6)ワークショップ「キャリア開発実践報告」                   9:00~11:00
 職業や社会活動をとおしてキャリア開発を進められた実践報告をもとに、キャリア開発を進める共通要因やポイントについて、ワークショップにより把握します。
 報告者:山口 文代 NPO 法人パートナーシップながれやま代表
     西村 和代 カラーズジャパン株式会社代表取締役
 コーディネーター:西山恵美子 国立女性教育会館事業課客員研究員

(7)ワークショップ「統計から考える男女共同参画の現状」             11:15~14:00
 <昼食休憩12:00~13:15>
 意識調査、国際比較調査などの統計データから、日本の男女共同参画の現状と課題を深掘りし、読み解きます。
 講師:中野 洋恵 国立女性教育会館研究国際室長

(8)講義「男女共同参画の視点に立った事業企画を考える」            14:15:~15:00
 学習プログラムを企画する上での現状把握、実施、評価までのPDCAサイクルに基づく運営について、注意点・留意点を解説します。
 講師:松下 光恵 NPO法人男女共同参画フォーラムしずおか代表理事

(9)ワークショップ「キャリア開発に向けたプログラムをデザインする」①      15:10~17:00
 キャリア開発上の課題別に必要な学習プログラムについて、プログラムデザインを実際に企画・作成します。
ファシリテーター:西山恵美子 国立女性教育会館事業課客員研究員
 学習支援:平成28年度「学習オーガナイザー養成研修」企画委員、国立女性教育会館事業課専門職員

(10)情報交換会                                18:30~19:30
 全国からの参加者同士のネットワークづくりを図り、交流を深めます。

第3日 12月16日(金)

(11)講義「協働型学習の理論・方法について」                    9:00~10:00
 協働型学習(グループワーク)を単なる「意見交換の場」にとどめずに、その場の学びをどう振り返り意味づけするか、学びをとおして価値意識の差異を認識し、それらの意味づけの中から実践につながる「気づき」を得ることの重要性について、社会教育の視点から考えます。
 講師:笹井 宏益 国立教育政策研究所総括客員研究員

(12)ワークショップ「キャリア開発に向けたプログラムをデザインする」②      10:15~12:00
 キャリア開発上の課題別に必要な学習プログラムについて、プログラムデザインを実際に企画・作成します。
ファシリテーター:西山恵美子 国立女性教育会館事業課客員研究員
学習支援:平成28年度「学習オーガナイザー養成研修」企画委員、国立女性教育会館事業課専門職員

(13)まとめと成果の共有                             13:30~14:30
 作成したプログラムデザイン案の発表により成果を共有するとともに、出来上がったプログラムを検証します。また、これまでの学習をふまえ、学習オーガナイザーの役割を再確認します。
コメンテーター:平成28年度「学習オーガナイザー養成研修」企画委員

(14)振り返り・閉会                               14:30~15:00

8.申込手続

(1)別紙「参加申込書」に必要事項を入力または記入の上、郵送または電子メール(progdiv@nwec.jp)のいずれかの方法で、国立女性教育会館までお送りください。
*送受信の行き違いや受信もれを防ぐため、申込受付は郵送または電子メールのみ(FAXは不可)とさせていただきます。

(2)申込期限:平成28年12月6日(火)(先着順)
*申込期間内でも、定員に達した場合は申込を締め切ります。

(3)参加のお知らせ
 ご本人宛に電子メールまたは郵送にて、11月上旬より順次お知らせします。
*平成28年12月8日(木)までに通知が届かない場合、事業課(電話:0493-62-6724)までお問い合わせください。

9.所要経費

(1)参加費:無料
(2)宿泊費:研修期間中は、1名1泊あたり1,200円 *12/13及び12/16も、1泊1,200円で宿泊可能です。
(3)情報交換会費:3,500円(税込、立食形式)
(4)食費:朝食 バイキング 870 円
昼食 カフェテリア形式 550 円~750 円程度
夕食 バイキング 1,080 円

10.平成28年度「学習オーガナイザー養成研修」企画委員(五十音順、敬称略)

・亀田 温子  十文字学園フェロー、十文字学園女子大学名誉教授
・神田 道子  東洋大学名誉教授、国立女性教育会館事業課客員研究員
・西山恵美子  国立女性教育会館事業課客員研究員
・松下 光恵  NPO法人男女共同参画フォーラムしずおか代表理事

11.その他

研修期間中に職員が撮影した写真を事業記録や広報のために使用することがあります。あらかじめご了承ください。

 12月14日(水)~16日(金)、「学習オーガナイザー養成研修」を実施し、全国各地の女性センターや自治体で男女共同参画研修を企画・実施する方を中心に30名の参加を得た。
対象や地域のニーズ・課題把握から目的・内容・成果・評価のあり方まで、男女共同参画とキャリア開発の二つの視点からブレのない事業を実施するために必要な理論と実践を学んだ3日間となった。

<第1日目>

(1)開会

 開会にあたり、内海房子NWEC理事長は、本研修への期待について、昨年度事業の成果報告や参加者の活躍の紹介を交えてコメントを寄せた。
続くオリエンテーションでは、参加者同士の自己紹介や研修で達成したいことなどを小グループで共有し、これから始まる3日間の研修への意欲と期待がさらに高まった様子がうかがえた。

開会 主催者あいさつ

(2)講義「プログラムデザインの意義と役割」

 「学習オーガナイザー」とはなにか、そしてなぜ「キャリア開発」なのか。この研修の特徴を踏まえ、櫻田今日子(NWEC事業課長)が解説と説明を行った。「プログラムデザイン」は、いわば学習プログラムの設計図。企画の「見える化」により、ブレのない事業運営が可能になること、個人的課題の解決が社会全体の課題解決へのアプローチにつながること、キャリア開発における「位置」と「役割」の重要性、社会的ネットワーク活用の重要性について述べ、「学習オーガナイザー」の今後の活躍の可能性を示す内容となった。

講義「プログラムデザインの意義と役割」

(3)講義「男女共同参画の基礎的理解を深めるために~社会参加の経験の発展として~」

 神田道子氏(東洋大学名誉教授、NWEC事業課客員研究員)による講義では、「キャリア開発」とは個人と社会の方向性を結びつける視点であること、位置と役割を持った社会活動として経験からの学習が重要であると指摘。女性の「社会参加」時代から「男女共同参画」時代へ、すなわち固定的性別役割分業から政策や方針に平等に参画する社会へと変化するプロセスをふまえ、男女共同参画基本法の基本理念と特徴について解説した。さらに社会の共通基盤を作るためには、自他の尊重、経済的自立性、固定的役割「分業」から「共業」へ、どのように役割分担と協働をすすめるかなど、今後の男女共同参画推進に向けての重要なポイントを展望した。

講義「男女共同参画の基礎的理解を深めるために~社会参加の経験の発展として~」

(4)講義「キャリア開発上の課題について」

 亀田温子氏(十文字学園フェロー、十文字学園女子大学名誉教授)は、キャリアを連続性で捉えることの重要性について指摘。女性労働力の高い「福井モデル」を事例に挙げ、働く場への参加率は高くても意思決定に参画する位置や役割を担う率は低い日本の現在の状況を解説した。ライフサイクルにみる課題として、若年層の労働力率の大きな変化に加え、30歳代~40歳代の働き方や結婚・出産などのライフイベントの変化、50歳代~60歳代の退職後の社会との関わりを指摘。さらに各世代の共通テーマとなる経済的自立、非正規労働、家族との関係など、個人と社会の双方の課題を踏まえ、どのような学習プログラムをデザインするのか、キャリア開発につながる学習支援として、学んだことを活用・判断・表現し、問題解決につなげる「コンピテンシー・ベース」の学習が必要と説明した。

講義「キャリア開発上の課題について」

(5)ワークショップ「課題の共有と整理」

 アイスブレイクを兼ねたグループ分けにより、行政・女性センター・指定管理者・任意団体などの所属別に分かれ、プログラム実施・運営の中で困っていること、不安に思っていることをふせんに書きだして共有、メンバーを入れ替えてさらに対話を続けた。進行の引間紀江(NWEC事業課専門職員)から、問題(困ったこと、ボヤキ)から課題(やる気)に変換するポイント、体験学習のサイクルについて解説。最後に、各自がこの3日間で解決したいテーマが書き出されたふせんを1枚持ち帰り、あらためて課題を意識する時間となった。

ワークショップの様子1

ワークショップの様子2

<第2日目>

(6)ワークショップ「キャリア開発実践報告」

 前半は、西山恵美子氏(NWEC事業課客員研究員)の進行のもと、山口文代氏(NPO法人パートナーシップながれやま代表)、西村和代氏(カラーズジャパン株式会社代表取締役)が、自身のキャリアについて報告。山口氏は行政職としてキャリアを重ねるなかでの転機や節目、現在のNPOでの活動や次世代リーダーに寄せる期待などについて、西村氏は卒業後のキャリアと家族との関係、大学院での学び、そして現在の事業展開に寄せる思いなどについて語った。後半は報告を踏まえ、キャリア開発をすすめるうえで必要となる力量や要素についてグループワークで整理。登壇者からのコメントとして、キャリア開発には社会参画の基盤形成が不可欠であり、個人と社会の方向性を結びつけることが大切であること、トップとしての姿勢、他者との協働においての「受援力」も必要などのアドバイスが寄せられた。

山口文代氏、西村和代氏による報告

グループワークの様子

(7)ワークショップ「統計から考える男女共同参画の現状」

 このプログラムは、ジェンダー統計から男女共同参画を取り巻く状況を読み解くことがねらい。中野洋恵(NWEC研究国際室長)による男女共同参画に関する国内外の統計データ解説を踏まえ、固定的性別役割分業意識に関する統計データから読み取った社会状況や課題と今後の対応について何が求められるか、グループ討議を行った。中野室長は、統計データにより、日本と世界の状況の違いや共通点などの空間的な把握が可能になるほか、経年変化など時間軸での把握と予測が可能になること、これにより学習者のニーズや課題が明らかになるほか、説得のためのツールとしても活用できる、と統計データ活用の重要性について指摘した。

ワークショップ「統計から考える男女共同参画の現状」

(8)講義「男女共同参画の視点に立った事業企画を考える」

 松下光恵氏(NPO法人男女共同参画フォーラムしずおか代表理事)より、現状・ニーズの把握から対象の絞り込み、運営、評価までの企画のポイントについて、静岡市女性会館での展開例を交えて講義。男女共同参画を進めるためには段階的なターゲットを念頭においた事業企画とその改善・進化に向けた他機関や社会的資源との連携が必要と指摘し、女性の置かれているステージや時間軸に応じたトータルなキャリア支援事業の企画の重要性を示した。他機関との連携に関するフロアからの質問には、「なるべく多くの人に今やっていることや困っていることを伝えておくこと、大学との連携に向けて、講義やセミナーを見に行くことも大事」とのアドバイスがあった。

講義「男女共同参画の視点に立った事業企画を考える」

(9)ワークショップ「キャリア開発に向けたプログラムをデザインする」①

学習プログラムの対象者のテーマ・年代毎に6班に分かれ(A.学生、B.20代~30代非正規雇用女性、C.30歳代~40歳代就業継続女性、D.30歳代~40歳代中段再就職女性、E.50歳代~60歳代子育て後の地域活動、F.定年後のシニア層男性・女性)、いよいよ「プログラムデザイン」作成がスタート。ファシリテーターの西山氏から示された、役割意識を持つ、時間を意識する、差違ではなく共通部分に目を向ける、合意形成に向けて話し合いの拡散と収縮を上手に使い分ける、などの留意点を踏まえ、完成を目指す。それぞれのグループでは、研修での学びと参加者自身の経験や知見をフル活用し、対象となる学習者の課題は何か、そのプログラムは学習者の自己開発や社会的貢献につながっているかなど、活発に意見を交わしながら作業を進めていた。

ワークショップ「キャリア開発に向けたプログラムをデザインする」①

プログラムデザインづくりの様子1

プログラムデザインづくりの様子2

<第3日目>

(11)講義「協働型学習の理論・方法について」

 笹井宏益氏(国立教育政策研究所総括客員研究員)による講義では、社会教育の視点からの学習理論や歴史的背景を学んだ。特に大人の学習活動においては、経験や実践をもとに相互に人と関わり合い、違いや共通点を発見し物事を多様な側面から総合的に捉え、自分なりに意味づけをしていくことが重要であると指摘。さらに「学び」に対する社会的要請として、知識や技術を得る学習「Learning to have」から、意識や行動を変える学習「Learning to be」が求められていることを説明した。

講義「協働型学習の理論・方法について」

(12)ワークショップ「キャリア開発に向けたプログラムをデザインする」②

現段階でのプログラム内容や作業の進捗状況を班ごとに報告し、他の班からプログラムのよい点・改善点についてフィードバックを受ける。「本当にこのプログラムは実現可能なのか?『やってみたい/採用してみたい』と思う/思われる企画になっているか?」キーワードが書き込まれたふせんを目の前に、さらなるブラッシュアップをはかる。デザインしたプログラムの中身はもちろん、作業を進めるなかでのアイデア出しや合意形成のプロセスなど、共同作業ならではの学びが多いワークショップとなった。

企画委員からのアドバイスを受ける参加者の様子

13)まとめと成果の共有

 各グループからのプログラムデザインの最終発表では、さらにブラッシュアップした点を中心に報告を行った。各企画委員からのコメントでは、学習者の達成感やニーズを引き出す支援、キャリア開発における経済的自立の重要性、「学習オーガナイザー」としての役割力について指摘。最後に参加者全員が一人ずつ、この3日間を振り返り、研修で得た成果や今後に向けての抱負をコメントした。ファシリテーター西山氏からは、目的・目標意識を持つこと、学習者の意識や行動変容を促進し、実現可能なプログラムであるかなど、あらためて男女共同参画とキャリア開発の視点を持って事業企画・運営をしていくときのポイントが示された。

グループ発表の様子

プログラムデザインの再検討の様子

(14)振り返り・閉会

 閉会にあたり、西澤立志NWEC理事より、3日間プログラムを受講した参加者には修了証が手渡された。
終了後のアンケートからは「業務の中で漠然と位置づけていた考えなどを体系化し意味づけすることができた」「ブレない企画を行うために活用できるプログラムデザインについて学べた」「他の分野の事業企画にも活用できる」などの感想が寄せられた。研修修了生の今後のさらなる活躍が期待されます。

閉会 修了証授与

全体集合写真

研修・イベント