研修・イベント

研修

実施報告

令和3年度「地域における男女共同参画推進 リーダー研修」

開催期間:令和3年5月19日(水)~6月11日(金) / 定員:300名

開催場所:国立女性教育会館 /


事業内容

地域の男女共同参画推進リーダーの力量を形成するため、男女共同参画社会のあり方について今日的課題解決の視点から学ぶとともに、推進方策を探る。専門的知見・マネジメント能力・ネットワークの活用力等を向上させるための研修プログラム。

よくあるご質問

Q.職場の1人が申込みをするので、みんなで共有してもいいでしょうか。
A.申し訳ありませんが、研修に参加される方全員がお申込みください。

Q.申込みフォームにアクセスできませんでした。
A.開催要項の最後に記載されているメールアドレスに御連絡いただければ、メール申込用の書式を添付してお送りします。

お知らせ

4月8日 開催要項を修正しました。
     4ページ目【参考】コース別受講プログラム表
     誤)情報提供「コロナ×ジェンダー」
     正)事例報告1「コロナ×ジェンダー」

4月9日 「よくあるご質問」を掲載しました。

4月28日 開催要項を修正しました。
      3ページ目 ⑦事例報告2報告者
      誤)栗林美和子
      正)栗林美知子

1.趣 旨

 男女共同参画社会の形成を推進するため、地域における男女共同参画の推進者を対象として、知識・企画力・実践力を養うための高度で専門的な研修をオンライン形式で実施します。参加者は男女共同参画の基本理念についてあらためて学ぶとともに、喫緊のジェンダー課題に関する最新情報や取組事例、国の施策についての最新動向等の情報提供を受けられます。また、全国からの参加者との情報交換を通じ、現状把握と課題解決のヒントを得ます。

2.テーマ

「これからの男女共同参画 ~第5次基本計画の考え方と地域課題への取組に向けて~」

3.主 催

独立行政法人国立女性教育会館

4. 共 催

(於:全国女性会館協議会提供プログラム) 特定非営利活動法人全国女性会館協議会

5.対象と定員

(1)女性関連施設コース:男女共同参画センター等女性関連施設の管理職、職員
(2)地方自治体コース:地方自治体の男女共同参画推進担当管理職、職員
(3)団体コース:地域で男女共同参画を推進するNPO・団体等の役員・リーダー 計 300名程度

6.実施期間 

令和3年5月19日(水)~6月11日(金)

7.実施方法及び日程

(1)実施方法:LMS(eラーニング学習管理システム)を使用した動画視聴及びZoomによるライブ配信。
※LMSの動画は、期間中、参加者の都合に合わせていつでも視聴できます。

(2)受講環境
 研修に参加するためには、インターネットに接続できるパソコン環境が必要です(タブレット、モバイル端末も可。ただし、パソコンを推奨)。また、下記LMSの動作環境をご確認ください。
  Zoomミーティングによるライブ配信に参加するためには、事前にZoomアプリをインストールする必要があります。なお、Zoomアカウント登録の必要はありません。

【参考】LMSの動作環境

(3)研修の流れ・配信日程

8.内 容

(1)事前学習(eラーニング)

 参加決定後、本研修の参加前までに、男女共同参画の基礎知識を学ぶためのeラーニング講座を受講してください(総学習時間1時間程度)。

(2)オンデマンド配信プログラム
①開会(30分)

 ①主催者あいさつ  内海 房子  国立女性教育会館理事長
 ②共催者あいさつ  納米恵美子  特定非営利活動法人全国女性会館協議会代表理事
 ③来賓あいさつ   文部科学省
 ④趣旨説明     国立女性教育会館事業課職員

②基調講演「第5次基本計画の考え方とポイント」(30分)

 令和2年12月に策定された第5次男女共同参画基本計画の理念や第4次基本計画からの変更点、地域で第5次計画を進める上でのポイントについて学びます。
 講師:林 伴子 内閣府男女共同参画局長

③省庁説明「男女共同参画社会に向けた今日の政策課題」(60分)

 各省から男女共同参画や女性活躍の促進に向けた国の政策課題及び最新施策について説明を受け、今後の方向性について理解を深めます。
 報告者:厚生労働省 
     農林水産省
     経済産業省

④情報提供「ジェンダー平等に係る国際的な動向について」(30分)

 国連女性の地位委員会(CSW)や持続可能な開発目標(SDGs)等、ジェンダー平等推進に向けた世界の潮流について学びます。
 報告者:越智 方美 国立女性教育会館研究国際室客員研究員

⑤事例報告1「コロナ×ジェンダー」(60分)

 コロナ禍の現状についての情報提供と課題提示を通じ、男女共同参画に取り組む意義を確認するとともに、自身の地域の課題の把握に向けたヒントを得ます。
 報告者:武田 佳奈 株式会社野村総合研究所未来創発センター上級コンサルタント

⑥講義「効果的なアクションプランの立て方」(60分)

 各自治体の男女共同参画計画や施策の策定に向けて、ジェンダー統計についての基本的な考え方を理解するとともに、計画の参考となるデータを扱う上で必要な視点を学びます。
 講師:杉橋やよい  専修大学経済学部教授

⑦事例報告2「地域課題にどう取り組むか」(オンデマンド配信)(90分)

 地域における男女共同参画課題にどのように取り組んだらよいのか、地方自治体、女性関連施設、団体の先進的な事例からヒントを得ます。
 報告者:宮崎 直子 長崎県男女共同参画推進センター センター長
     原田紀代美 豊岡市総務部ジェンダーギャップ対策室主幹
     石本めぐみ・栗林美知子 特定非営利活動法人ウィメンズアイ代表理事・事務局長

(3)ライブ配信プログラム
⑧全国女性会館協議会提供プログラム(女性関連施設職員コース) 事例報告・グループワーク「Challenge to Change -コロナ禍での事業運営を考える」
 5月25日(火)13:30~15:50<Zoomミーティング>

 新型コロナウイルス感染拡大などの社会的危機状況において、男女共同参画センターはどのような役割を果たすべきか。制限がある中でさまざまなチャレンジをしてきたセンターの事例報告とグループワークを通じてコロナ禍での事業運営を考えていきます。センター間の情報共有もできる貴重な機会です。
 報告者:石井 督洋  千葉県男女共同参画センター 次長
     阪口さゆみ  世田谷区立男女共同参画センター 館長
     佐々木美奈子 秋田県中央男女共同参画センター センター長

企画・運営 特定非営利活動法人全国女性会館協議会

⑨パネルディスカッション「地域課題にどう取り組むか」
 6月1日(火)13:30~14:30<Zoomウェビナー>

 事例報告や情報提供等から明らかになった地域の男女共同参画推進における課題の解決に向けて、行政、女性関連施設、団体がどのように協力・連携しながら取り組んでいけばよいかについて検討します。
 コーディネーター:竹下隆一郎 ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社ハフポスト日本版編集長
 パネリスト:宮崎 直子 長崎県男女共同参画推進センター センター長
       原田紀代美 豊岡市総務部ジェンダーギャップ対策室主幹
       石本めぐみ 特定非営利活動法人ウィメンズアイ代表理事

⑩参加者同士の意見交換(希望者のみ)
 6月11日(金)13:30~15:00<Zoomミーティング>

 トピックごとのグループディスカッションで、参加者同士の情報交換を行います。
 今後のネットワークづくりに活用いただけるよう、このプログラムに参加される方の氏名・所属機関等を記載した名簿を共有させていただく予定です。

(4)アンケート回答

9.申込方法等について

(1)申込方法
 専用申込フォームからお申込みください。
 ※お申込みいただいたメールアドレスが研修の参加IDとなります。複数人で同じメールアドレスをご登録いただくことはできません。同じご所属から複数人お申し込みになる際は、各申込者に別個のメールアドレスをご用意ください。
 ※申込フォームから送信ができない場合は、事業課までお問い合わせください。

(2)参加決定通知
 参加者は、先着順で決定します。また、ライブ配信プログラム「全国女性会館協議会提供プログラム」及び「参加者同士の意見交換」の参加者は希望者のみとし、定員を超える場合は抽選とします。結果は、申込みの際に御入力いただいたメールアドレス宛にEメールで通知します。
 ※5月10日(月)を過ぎても連絡がない場合は、事業課までお問い合わせください。

(3)キャンセル
 参加決定後にキャンセルされる場合は、必ず事業課まで御連絡ください。

【参考】コース別受講プログラム

 ●は必須プログラム、〇は視聴可能プログラムです。
 ※はライブ配信プログラムです(希望者のみ、定員を超える申込みがあった場合は抽選)

10.所要経費

 参加費 無料(ただし、通信料は御自身の負担となります)

11.その他

(1)フォローアップ調査の実施
 研修終了後6カ月後を目途にフォローアップ調査を行う予定です。その際には、御協力いただきますようお願いいたします。

(2)プログラムの変更・中止について
 感染症、気象状況、天災、官公庁からの指示、その他主催者が研修を安全かつ円滑に実施することが困難と判断した場合には、やむを得ずプログラム内容の変更又は開催を中止する場合があります。
 なお、最新情報は、NWEC ホームページでお知らせします。

12.問合せ先

 独立行政法人国立女性教育会館 事業課
 〒355-0292 埼玉県比企郡嵐山町大字菅谷728
 TEL:0493-62-6724 (平日9:00~17:00)
 Eメール:progdiv@nwec.jp

令和3年度「地域における男女共同参画推進リーダー研修」(オンライン)実施報告

 令和3年5月19日~6月11日の24日間、「これからの男女共同参画 ~第5次基本計画の考え方と地域課題への取組に向けて~」をテーマに、全国の女性関連施設、地方自治体、団体の役員・管理職、リーダー等を対象に、地域の男女共同参画推進リーダーとして身につけておくべき知識・企画力・実践力を養うことを目的として「地域における男女共同参画推進リーダー研修」をオンラインで実施した。
 まず、講演・講義・事例報告等を通じて、国内外の男女共同参画を巡る現状や課題を把握し、具体的に地域で男女共同参画を推進するための方法を学ぶとともに、ライブ配信により参加者同士の意見交換・情報交換を図ることで、実際に地域課題にどう取り組むかを検討する機会とした。研修期間中、何度でも繰り返し視聴ができるLMS(eラーニング学習管理システム)を活用して参加者へ講義動画や資料の配信を行い、全国から498名の参加者が参加した。
 各プログラムの実施概要は以下のとおり。

(1)事前学習(eラーニング)

 初任の参加者等が事前に、男女共同参画の基礎知識を学ぶことで研修内容をより深く理解できることを目的として、eラーニング講座(約1時間程度)を実施した。視聴した参加者は、国内外の男女共同参画に関する言葉や事項の意味を確認するとともに、その背景や課題、関連する法律などについても学ぶ機会を提供した。

(2)開 会
①主催者あいさつ   内海 房子 国立女性教育会館理事長

②共催者あいさつ  納米恵美子 特定非営利活動法人全国女性会館協議会代表理事

【オンデマンド配信プログラム】

(3)基調講演「第5次男女共同参画基本計画の実行に向けて」(60分)

 令和2年12月に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」について、その背景及びわが国の男女共同参画の現状も含め、11分野及び推進体制の整備・強化について、林 伴子 内閣府男女共同参画局長からお話いただいた。内容は以下のとおり。
 2021年のジェンダーギャップ指数(GGI)が、日本は156か国中120位であり、先進国内でももっとも低く、アジア諸国内でも中国・韓国やアセアン10か国よりも下に位置している。日本は、特に政治と経済参画が遅れており、教育水準の高い日本の女性が活躍できていない残念な状況である。日本も努力してきており、状況は改善しているが、それ以上に諸外国が努力しているのでこれまでの3倍速以上頑張らないと順位が上昇しない。男女の地位の平等感についての世論調査においても、約74%が「男性が優遇されている」と回答。3月に開催された「すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部合同会議」では、総理から閣僚へ、女性の積極的登用や各府省内で偏見や固定観念に基づく言動があればそれを指摘し、改善することなどについて指示があった。規範は変わっていて、国際的に共有された規範であるという認識の下に言動をすることが大事である。
 また、昨年12月に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画について、今回初めて「すべての女性が輝く令和の社会」という副題を付けた。社会情勢の現状や予想される環境変化及び課題として、(1)新型コロナウィルス感染症拡大による女性への影響、(2)人口減少社会の本格化と未婚・単独世帯の増加、(3)人生100年時代の到来(女性の51.1%が90歳まで生存)、(4)法律・制度の整備(働き方改革等)、(5)デジタル化社会への対応(Society5.0)、(6)国内外で高まる女性に対する暴力根絶の社会運動、(7)頻発する大規模災害(女性の視点からの防災)、(8)ジェンダー平等に向けた世界的な潮流、について検討した。
 基本計画を策定するにあたり次の2点、男女共同参画は今や裾野を広げる大事な局面に来ていることから、地域や中小企業へ男女共同参画を広めていくためわかりやすい表現に努め、またパブリックコメントを重視した。
 この計画は、第1分野「政策・方針決定過程への女性の参画拡大」、第2分野「雇用等における男女共同参画の推進と仕事と生活の調和」、第3分野「地域における男女共同参画の推進」、第4分野「科学技術・学術における男女共同参画の推進」、第5分野「女性に対するあらゆる暴力の根絶」、第6分野「男女共同参画の視点に立った貧困等生活上の困難に対する支援と多様性を尊重する環境の整備」、第7分野「生涯を通じた健康支援」、第8分野「防災・復興、環境問題における男女共同参画の推進」、第9分野「各種制度等の整備」、第10分野「教育・メディア等を通じた男女双方の意識改革、理解の促進」、第11分野「男女共同参画に関する国際的な協調及び貢献」の11分野からできている。
 特に、第3分野「地域における男女共同参画の推進」は、裾野を広げていくうえで重要な分野として位置付けている。10代、20代の女性の大都市圏へ流出が男性以上に増大しており、その理由として地元や親元を離れたいことや地域に男尊女卑的な雰囲気が残っていることが大きく影響していると思われる。女性が地域で活躍している姿を見せ、女性が自由に伸び伸びと活躍できる社会を作ることが重要であり、男女共同参画だけでなく、地方創成、日本全体の発展のためにも大事なことである。
 第5分野「女性に対するあらゆる暴力の根絶」では、女性に対する暴力は重大な人権侵害であり、コロナ禍において急増していることが心配。対策として、性暴力のワンストップ支援センターの質の向上や支援拠点の増設を図る。また、子供への命の安全教育として作成した教材を使ったモデル授業、わいせつ教員への取組の実施、配偶者暴力被害やDV対策は、SNS等、電話相談などの取組を引き続き推進。
 第6分野「貧困等生活上の困難に対する支援と多様性を尊重する環境の整備」において、大きなポイントは女性や母子家庭の貧困である。ひとり親家庭は非正規で働き、年間の収入は200万円という現状。養育費受取率は24%しかないため、養育費の確保についての検討を実施。
 第8分野「防災・復興、環境問題における男女共同参画の推進」では、防災においても女性の視点が重要であり、非常時には平時における固定的性別役割分担意識が出てしまうため平時からの男女共同参画の視点を防災に含めていくことが重要。東日本大震災等、過去の経験を踏まえたガイドラインを策定したので、このガイドラインの周知徹底、研修の実施により日本全体の災害対応力 を強化。
 第9分野「各種制度等の整備」において、日本の慣行が現実にそぐわないこととして税制、社会保障制度、特に選択的夫婦別氏制度がある。また、第10分野「教育・メディア等を通じた男女双方の意識改革、理解の促進」は、人々の中に形成された固定的な性別役割分担意識や性差に関する偏見・固定観念、無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)がある。教育、メディア等が大きな役割を果たすと思われるが、中学校の女性校長は7%しかおらず、メディア関係団体の女性役員もほとんどいないな状況を変えていく必要がある。
 これら11分野の目標で重要なことは実行であり、第5次計画では、中間年にフォローアップ及び点検・評価を行うことを決定した。毎年、点検を行うことで、第5次計画を絵にかいた餅にしない。コロナ禍による女性への深刻な影響が明らかになったが、根底に平時におけるジェンダー平等・男女共同参画が進んでいない現状があり、コロナの影響により顕在化した。男女共同参画は、5次計画に盛り込まれていることの外、さらに強力に進めていく必要がある。

(4) 省庁説明「男女共同参画社会に向けた今日の政策課題」(60分)

 文部科学省・厚生労働省 ・農林水産省 ・経済産業省の各省から男女共同参画や女性活躍の促進に向けた国の政策課題及び最新施策について説明があった。各省の説明内容の概略は以下のとおり。
 文部科学省は、第5次男女共同参画基本計画の第4分野、第5分野、第7分野、第10分野について解説。また、令和3年度の基本計画関係の予算では、文科省として多様な年代の女性の社会参加を推進するためのキャリアアップ、キャリアチェンジ等に向けた学び直しや子供を性犯罪の当事者にしないための安全教育を推進。その他、科学技術イノベーションを担う女性やスポーツ分野における女性の活躍促進やSport in Life(SIL)推進プロジェクトやスポーツ・インテグリティ推進事業を実施している。
 厚生労働省では、第5次男女共同参画基本計画における第1、第2、第5、第6、第7、第9分野における厚生労働省の現状や成果目標について解説。さらに、令和3年度の厚生労働省予算案における重点事項として、ウィズコロナ時代に対応した保健・医療・介護の構築と雇用就業機会の確保、「新たな日常」の下での生活支援について説明があった。
 農林水産省からは、女性農業者、女性林業従事者、女性漁業就業者の現状と支援策と令和3年度予算を中心に説明があった。農業就業人口に占める女性の割合は約4割で、農業の担い手として重要な役割を果たしており、女性が経営に関与していると経営利益増加率が高い。また、第5次男女共同参画基本計画における農業委員や農業協同組合の役員、土地改良区の理事に占める女性の割合目標の設定や家族協定や農業女子プロジェクト等の取組を行っている。また、林業従事者における女性の割合は近年6%前後で横ばいだが、高性能林業機械の導入等により女性が活躍している。林野庁では、多様な担い手育成事業により、女性林業グループのネットワーク化及び女性林業者の定着についての支援を行っている。さらに、漁業就業者に占める女性の割合は約14%と減少傾向にあり、漁業に付随する陸上作業従事者の約38%、水産加工場従業者の約62%が女性。JF全国女性連では、担い手育成のための若手を中心としたネットワークを構築し、研修や部員の増加・育成に取り組んでいる。令和3年度予算においては、「女性が変える未来の農業推進事業」や「未来の林業を支える林業後継者養成事業」、「女性林業者定着支援」、「漁村女性活躍推進事業」等女性農林漁業者の活躍推進を支援。
 経済産業省は、令和3年度初めて予算を獲得した「フェムテック等の活用による就業継続支援」として、不妊治療と仕事の両立が難しい女性の離職を防ぎ、個人のウェルビーイングと人材の多様性を高め、中長期的企業価値の向上を図る目的で、実証事業費の補助を行う。フェムテックとはFemale + Technologyであり、妊娠・出産、月経、産後・婦人科疾患、更年期障害など女性特有の課題をテクノロジーで解決するもの。そのほか女性起業家支援としての「わたしの起業応援団」や企業における女性活躍推進(なでしこ銘柄)、ダイバーシティ経営普及、IT人材育成支援としての「巣ごもりDXステップ口座情報ナビ」がある。

(5)情報提供「ジェンダー平等に係る国際的な動向について」(30分)

 第4回世界女性会議と北京行動綱領、国連女性の地位委員会(CSW)、持続可能な開発目標(SDGs)、ウィズ/ポスト・コロナ期の新たなジェンダー課題を中心に、越智方美国立女性教育会館研究国際室客員研究員から以下の通り報告があり、最後に、アントニオ・グレーテス国連事務総長のメッセージを視聴した。報告の内容は以下のとおり。
 1995年に第4回世界女性会議(北京会議)において採択された北京行動綱領が、世界ジェンダー平等推進に現在も大きな役割を果たしていて、現在も世界各国のジェンダー平等推進にかかる国際的な基準となっている。北京会議では成果文書として北京宣言と行動綱領が採択され、行動綱領では女性が低い位置におかれている現状を改善するために12の領域がある。
 現在、完全なジェンダー平等を成し遂げた国はなく、グローバリゼーションにより格差や不平等は拡大。移住労働、人身取引、サイバー空間での女性への暴力など、当時、大きな問題として認識されていなかった新たな課題への対応がSDGsにつながる。世界女性会議など、ジェンダー平等の羅針盤となってきた会議を主催し、推進してきたのがCSWであり、その事務局を務めてきたのがUNWomen。
 SDGsは、第70回国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に盛り込まれた目標であり、地球上の「誰一人取り残さない」ことを目指して17の目標と169のターゲット(数値目標)からなること、17の目標は相互関連しており、先進国・開発途上国を問わず、すべての国と地域が取り組むべき目標である。SDGs目標5「ジェンダー平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」の内容として、あらゆる形態の差別や暴力、早期結婚、強制結婚、女性器切除などの有害な慣行の撤廃、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価すること、意思決定における女性の参画やリーダーシップの機会の確保がある。
また、ウィズ/ポスト・コロナ期のジェンダー課題として、公衆衛生上の危機が明らかにした社会構造に埋め込まれたジェンダー不平等をどう克服するか、ユース、男性、性的マイノリティー、外国籍住民などの多様な主体の参画の推進がある。

(6)事例報告1「コロナ×ジェンダー」(60分)

 コロナ禍の現状についての情報提供と課題提示を通じ、男女共同参画に取り組む意義を確認するとともに、参加者が地域の課題把握に向けたヒントを得た。武田 佳奈 株式会社野村総合研究所未来創発センター上級コンサルタントによる報告は以下のとおり。
 野村総合研究所の「コロナによる休業・シフト減のパート・アルバイト女性の実態に関する調査」によると、2021年2月時点で、パート・アルバイト女性の約3割がコロナでシフトが減少し、さらに、そのうちの4割強がコロナ禍以前と比べて半分以上シフトが減少している。コロナ禍の影響を受ける前との世帯収入の変化は、「世帯の収入が減少した」が84.7%、そのうち「世帯年収が5割減少した」割合が43.8%である。そして「実質的失業者」であるパート・アルバイト女性の半分以上が世帯収入400万円未満であり、2人に1人は休業手当や休業支援金を受け取れることについて知らないなどの実態がある。
 コロナ禍が明らかにした社会のひずみとして、現在の現役世代のライフイベント発生状況は、35年前と比較して大きく変化している。現役引退後に向けた準備期間は3分の1に減少していて、定年後以降の平均余命は長期化しており、子育て期における強い経済的不安が少子化が解決しない大きな理由となっている。また、人口減少リスクの増大や経済全体の抑制、真に必要な社会保障に関する議論の停滞という3つの窮屈な状態が問題である。

(7)講義「効果的なアクションプランの立て方」(60分)

 講師の杉橋やよい専修大学経済学部教授から、各自治体の男女共同参画計画や施策の策定に向けて、ジェンダー統計についての基本的な考え方を理解するとともに、計画の参考となるデータを扱う上で必要な視点を解説いただいた。講義の概要は以下のとおり。
 近年、エビデンス、すなわち統計データに基づく現実の客観的把握や正確な将来の見通しによる公正かつ透明な政策立案(EBPM)が強く求められている。例えば、男女間の格差・差別の存在などが、どれほど深刻化、どのような問題がどこにあるのかなど、社会の質の部分を具体的に数量で捉えるのが統計である。
 第5次男女共同参画基本計画でも統計やデータについて触れており、特に「Ⅳ 推進体制の整備・強化」において、ジェンダー統計の重要性について指摘されていて、国や地方自治体は、サンプルの規模が大きいため、基本動向の把握、基本構造や傾向を見出すことを可能とする。しかし、調査項目や調査者と被調査者との関係により、統計の真実性がなくなったりする場合もあるため、十分な注意をもって統計を利用する必要がある。
 ジェンダー統計とは、①性別区分をもつ統計であり、個人だけでなく、資源・制度・施設についての統計もできる限り性別表示をすることが重要である。また、②ジェンダー問題を取り上げる統計、③年齢等重要属性を使った多重クロスを備えた統計、④利用者に便宜を図ったユーザーフレンドリーな統計といえる。近年、LGBTなどの性的少数者への配慮として、公的機関の届出書の性別区分欄の廃止が進んでいたが、目的や合理性がない場合は男女間の格差・差別を不可視化し、ジェンダー統計に逆行する。そのため、代替案として「男、女、その他」などを使っているが、統計把握の点で課題が多い。諸外国では2段階法として、出生時の割り当てられた(戸籍に記載される)性と現在の性を質問したり、性(sex)、自認する性、性的指向を聞く場合などがある。

(8)事例報告2「地域課題にどう取り組むか」(90分)

 地域における男女共同参画課題にどのように取り組んだらよいのか、地方自治体、女性関連施設、団体の先進的な事例からヒントを得る機会として、宮崎 直子 長崎県男女共同参画推進センター センター長、原田紀代美 豊岡市総務部ジェンダーギャップ対策室主幹、石本めぐみ・栗林美和子 特定非営利活動法人ウィメンズアイ代表理事・事務局長から取組について報告があった。報告の概要は以下のとおり。

<長崎県男女共同参画推進センターの取組>

宮崎 直子氏

 長崎県は面積は広いが、21市町のうち3市2町が離島。県の中心に海があり、山と半島が多く、交通が不便。県と5つの市に男女共同参画センターがあり、県は男女共同参画・女性活躍推進室の職員が7名とセンター職員が2名。登録団体制度はなく、一般県民対象の事業は実施していない。このような体制の中で、県内の男女共同参画社会づくりをどのように推進していくのかが課題である。県民は、自分の身近では全国と比べ男性の方が優遇されていると思っているが、「法律や制度」「政治や行政政策・方針の決定の場」「社会全体」については、男性が優遇されていると思っている県民は少ない。高い同調性と横並びの意識が強いため、意識が高く能力がある人材ほど県外に流出する。
 県内の男女共同参画行政や推進センターの体制が脆弱であり、人も予算も時間もなく、専任の担当者や専門性をもつ人材がいない。研修内容も企画力不足による前年踏襲型で、実施したことで満足し、長期的な視点での研修等の構築が難しい。参加者も交通の便が悪く、参加が難しい。
 本センターの役割は、センターがない市町への支援や市のセンターのハブ機能と支援。これまで推進委員やアドバイザーを配置してきたが、十分な効果が出ていないため任期を短くし、さらに地域に密着した多くの人に関わってもらうため、地域の津々浦々にインフルエンサーを増やすこととした。また、推進員を活用した啓発として「GO TO ご近所」を実施し、推進員が日頃利用しているスーパー・美容室等でチラシ掲示や啓発物配付、ステッカー添付を依頼することにより地域内で自然に口コミで伝わり、費用も安価で、推進員のモチベーションもアップする。その他の市町への支援として、職員の学びの機会を確保するため男女共同参画を「自分ごと」としてもらう研修の実施、啓発物を県が作成し「パッケージ化・マニュアル化」して、全市町で一斉に実施。広報誌、啓発資材等の作成・アドバイス、啓発の取組であるパープルライトアップの取組の動画をYouTubeにアップした。

<豊岡市の取組>

原田 紀代美氏

 豊岡市の最大の課題は、地方創生すなわち人口減少対策である。10歳代転出超過に対する20歳代転入超過数の割合は女性が25年間減少傾向にあり、男性とのギャップが2倍まで拡大していて少子化が進行している。つまり、豊岡に暮らす価値は、若者、とりわけ若い女性に選ばれておらず、若者が帰ってこない理由としては、男性にとっては経済的、文化的魅力に乏しく、女性にとってはさらにジェンダーギャップが大きいことも挙げられる。女性が女性であるという理由だけで能力を発揮できないとすると、人口減少の加速によるまちの消滅、経済的・社会的損失、公正さの欠如(アンフェア)を生むため、男性中心の社会の在り方を変え、女性にとっても暮らす価値のあるまちにしていく必要がある。
 豊岡市のジェンダーギャップの実態は、男女の平均収入の格差が年代が高くなるにつれて拡大していることや雇用形態において女性の非正規雇用者は男性の約3倍であること、出産前後で退職する女性が多いことなどがある。市の職員においても40歳代以上の男性が女性の約3倍の人数であること、職歴や経験業務については男性が様々な業務を経験しているのに対し、女性は窓口業務や庶務が多く、経験の少なさが女性の自信に影響しているといえる。
 豊岡市は、2019年1月にワークイノベーション戦略とキャリアデザインアクションプランを策定し、4月には、ワークイノベーション推進室を設置。2021年3月には町全体のジェンダーギャップをなくすことを目的して「ジェンダーギャップ対策室」に改称し、様々な取組を行っている。「市内事業所の経営者実践セミナー」「女性従業員リーダーシッププログラム」「豊岡市ワークイノベーション表彰制度」などを実施するとともに、市役所の男性職員の育児休業取得を推進するため、上司から部下に声掛けを行っている。その結果、男性職員の育休取得状況は2020年度で6割を超えており、民間事業者の取組も始まっている。また、市役所管理職に占める女性の割合は2年前の9.3%から約17%に増加しており、5年後には20%、10年後には30%を目指している。
 さらに、専門家から「豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略」策定に向け、ジェンダー平等の実現によるメリットを市民が理解することやジェンダー平等社会のビジョンを「市民の声」で言語化・明確化する必要があることを提言として受け、ジェンダーギャップ解消戦略会議を立ち上げ、委員の行動宣言や戦略の策定を行った。2021年度は、ジェンダーギャップ解消に向けた庁内推進委員会の設置や戦略についての意識啓発を実施予定。

<ウィメンズアイの取組>

石本 めぐみ氏 

栗林 美知子氏 

 2011年の東日本大震災で被災地に集まった災害ボランティア有志が、2013年に立ち上げた特定非営利活動法人ウィメンズアイ。主な活動地域は、宮城県の南三陸町と気仙沼市。ミッションは「女性たちが、地域、社会につながるプラットフォームとなる」「女性たちが必要な力をつける機会をつくる」「災害を経験した女性たちの声を内外に届ける。」
 活動内容は、乳幼児を育てる女性が自分の興味や関心で集まる「赤ちゃんとワタシの井戸端会議」、女性たちの声を聴くワークショップ「女性のはたらくを考えるWS」や地域で新しい働き方をつくる「WEと一緒に小さなナリワイ塾」などを実施。その結果、参加者は自分の住む地域で活動している人たちを知り、自分のため参加した女性が周りの人を気遣ったり、他の地域の女性に相談される存在になるなどの変化が見られた。女性は学びの場、実践の場があることで主体的に活動することから、交流や仲間づくりを大事にしている。
 地域には、人口減少や少子高齢化、経済的・社会的な格差、固定的な性別役割分担意識、女性が活躍できる場が乏しい、世代交代がされない、男女共同参画をサポートする体制が十分にない、などの課題がある。「SDGsとみやぎ」女性ワーキング・グループでは、行政と連携して、女性のエンパワーメントや就業相談などさまざまな課題の洗い出しを行い、課題を可視化するため女性指標の提案を目指して活動している。地域の男女共同参画をサポートする体制が十分にないことから、男女共同参画意識や各自治体の計画・条例の有無、住民の知識・意識の啓蒙等を実施している。

(9)全国女性会館協議会提供プログラム(女性関連施設職員コース)  
 事例報告・グループワーク「Challenge to Change -コロナ禍での事業運営を考える」

 新型コロナウイルス感染拡大などの社会的危機状況において、男女共同参画センターはどのような役割を果たすべきか。制限がある中でさまざまなチャレンジをしてきたセンターの事例報告とグループワークを通じてコロナ禍での事業運営を考え、センター間の情報を共有する。
 最初に、千葉県、世田谷区、秋田県の男女共同参画センターから「コロナ禍での事業運営を考える」事例報告があり、そのあと、参加者がグループに分かれて、グループワーク1「事例報告を受けての感想」、全体共有、次にグループワーク2「コロナ禍での事業運営 ~居場所としてのセンターを考える」を行い、各班発表、全体共有を行った。その後、個人ワーク「今年度のチャレンジ」をチャットに入力、グループファシリテーターからチャットを見ての感想・まとめの報告があった。事例報告の内容は以下のとおり。

<千葉県男女共同参画センター>

 オンライン講座を企画するに当たり、まず、ワンクリックで申込サイトに誘導できるようTwitterを開設。その後、配信方式・配信ツール、広報ツールを検討・選択し、令和2年度は大学との連携事業や県医師会との連携事業を実施。センター独自のYouTubeアカウントを取得。令和3年度は男女共同参画週間行事として活動発表動画をYouTubeで配信し、「男女共同参画シンポジウム」をZoomで実施した。
 今後の課題としては、「誰も取り残さないオンライン講座」として、聴覚障害者への対応や双方向性の実現、交流事業の見直しなどがある。センターはいろいろな形態があってよい。弱いところと強いところの特徴を生かして、発信をすることが重要。

<世田谷立男女共同参画センター らぷらす>

コロナの感染防止として、2020年3月に全てのイベント事業、当面の講座事業・居場所事業の中止を決定し、「オンライン」による実施が可能なように体制を整えた。事業毎にリアルかオンラインか実施方法を検討し、居場所事業を実施した。リアルの利点は、参加者の様子がわかりやすいことであり、課題はコロナの感染防止対策の徹底。オンラインの利点は、感染リスク回避ができることであり、課題は参加者の様子がわかりにくいことやインターネット環境の整備や担当者の増員が必要となること。また、オンライン相談については、リアルで相談できないというニーズに応えるためZoom相談を実施した。
 センターは男女共同参画推進の拠点施設として、ジェンダー視点と誰をもとりこぼさないソーシャルインクルージョンの視点をもって、人とのつながりを感じ、困難を抱える人がエンパワメントできる「場」を持っている。その「場」を持つ強みを活かし、対面で実施するリアル会しあとオンラインを両立させながら、時世にあった新しい相談・居場所事業に取り組む。

<秋田県男女共同参画センター ハーモニープラザ>

 令和2年度に実施した交流事業「ハーモニーネットWeeks2020」では、トークショー、動画上映、展示、講演会を開催し、様々なSNSツールを活用して配信したり、実際に参加者に来場してもらったりした。オンラインは、日頃アクセスのない人のアクセスがあり、コロナ禍の運営の在り方にもヒントがあった。

(10)パネルディスカッション「地域課題にどう取り組むか」

 事例報告や情報提供等から明らかになった地域の男女共同参画推進における課題の解決に向けて各取組内容を報告し、参加者からの質問に答えるとともに、最後に各講師から参加者へ一言メッセージを伝えた。

 コーディネーター
  竹下隆一郎 ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社 ハフポスト日本版編集長
 パ ネ リ ス ト  
  宮崎 直子 長崎県男女共同参画推進センター センター長
  原田紀代美 豊岡市総務部ジェンダーギャップ対策室主幹
  石本めぐみ 特定非営利活動法人ウィメンズアイ代表理事

 まず、コーディネーターの竹下氏から自身の子育て体験について、地域において男性が育休をとる困難さや地域特有の慣習により男性は育児に参加すべきではないと言われた経験を語った。続いて、セミナーの成功のポイントは参加者からの質問の多さであり、質問から話題が広がって思わぬコメントをパネリストから引き出させることになり、みんなの悩みが共有されることになるとして、事例報告者の3人が報告した後、報告について竹下氏が全国の視聴者からの質問を中心に質疑応答を行った。その内容は以下のとおり。

Q1:長崎県でたいへんなことはなにか。
宮崎氏:しがらみが多いことだと思う。

Q2:(豊岡市では)意識が変わるまでたいへんだったか。
原田氏:ワークイノベーション会議を設立したため、自分たちの会社で何ができるのかということで経営者が自分で育休をとり、その会社の若い男性が育休をとるなど、広がりが出てきている。

Q3:復興と男女共同参画という2つの大きな課題がある中で、復興が先だろう、男女共同参画は後でいいという声になんと答えるか。.
石本氏:女性支援を始めたとき、そういう真っただ中にいた。男女共同参画の課題があるから女性ががまんをする、意思決定の場に
女性がいないことで、後々の復興に大きな影響を与える。決める場にいないとその人たちの声が反映されず、町の在り方が変
わってくる。被災の直後から女性も入っていることでよりよいまちづくりができると思っている。

Q4:地方で男女共同参画やジェンダー平等に取り組む際のもっとも大きな課題は何か。
宮崎氏:だれでも自分のこと、他人ごとではないのだと受け止めてもらえることだと思う。
石本氏:そもそもそこに課題があることが気づけない。知らないことは知りえないので、それをどうわかるようにしていくかが難しい。
原田氏:無意識の偏見や思い込みをみなさん気づいていないが、まずそこに気づいてもらい自分事にしてもらうこと一番大切。気づいた後に行動を変えるしくみをどうつくるかも重要。

Q5:無意識の偏見が直った事例があるか。その時にどうするか。
原田氏:地域のおまつりで男性はおみこしを担ぎ、料理を食べる。女性は待合の接待があり、性別により役割が決まっている。男性はこうあるべき、女性はこうあるべきではなく、それぞれ得意分野をやる。女性でも神輿を担ぎたければ担ぐ、男性も料理が得意な人はやる。
宮崎氏:自分の中に偏見があることに気づく。困ったときに気づくことがチャンスだと思う。
石本氏:コロナ禍、サービス業、ホテル・旅行業の女性は仕事を失っているが、IT業の女性はますます人材不足。工学系に進学する女性が15%位と低い。やること、やるべきことはたくさんあるが、かける言葉によっても変わってくるのでは。

Q6:これまで地域で活動している団体のメンバーの固定化、高齢化し、活動が低調になっている。活動を活性化するにはどうしたらよいか。
石本氏:地域の婦人会が高齢化し、人が入ってこない。婦人会の中が年功序列で若い人が入りにくい課題があるが、そこに目が向いていない。自分の団体もメンバーが固定化しているが、同じような考えの人が集まると新しい考えが入ってこない。有償のインターンやボランティアに入ってもらうことで活動を知ってもらい、より一層中に入ってもらう。外からの入り口を作り、その入り口が入りやすいことが重要。 

Q7:男女共同参画は多様な分野にまたがるため他部署の協力が必要だが、どのようにしたら協力が得られるか。
宮崎氏:防災関係だと防災担当の課長に上司から話を通してもらい、あとは担当で厚かましくやる。行政の場合、上司の理解が重要であるが、お互いにWinWinと分かれば広がる。

Q8:上司の理解を得るためにはどうしたらよいか。
宮崎氏:他の課長を説得できるくらいに男女共同参画担当の課長に理解してもらうことが大事。
原田氏:戦略をつくるときには、戦略会議には関係課に傍聴に来てもらっていた。会議の委員が案をまとめる際に、具体的な事業に落としていくときに関係課の職員に入ってもらい、戦略を作り上げた。特に市の施策にジェンダー視点を主流化していくために、庁内の推進委員会を立ち上げ、戦略をどう推進していくのか、ジェンダー統計をとり、ニーズの違いや差があるのはなぜなのかを詰めてくために取り組みたい。

Q9:コロナ禍の経験をチャンスととらえて、オンラインを例外ではなく原則とすることが鍵になると考えたがどうか。
宮崎氏:4月に2回オンラインを実施。好評である一方で、対面でないとお互いの話しが進まないという声もあった。今後は、それぞれのいいところを見ながら、並立をしてやっていくことを考えたい。

Q10:対面のよいところはどこか。
宮崎氏:やはりお互いに本音トークができることや、言葉以外のことが伝わることが大事と思う。
竹下氏:知識だけでなく、文化とか考えを変える必要もあるから。

Q11:原田氏も石本氏も若年女性を対象としているが、長く活躍が期待される若年女性は何を課題としているのか。
石本氏:少子高齢化の地域社会で、いざ仕事を始めようとしたら、子供は何人か、病気になったらどうするのかなど、まるで子供がいることがすごくハンデのように面接で聞かれる。子供を大切に育てている自分と自分のキャリアを持ちたい自分が、なぜ両立できないのかということはよく聞く話。次の子供はいつ生まれるのかとか、もっと男の子を生んだらいいよとかいわれるのは、世代間ギャップかもしれないが、そういうことが傷つくが、どうしたらよいのかという話し合いまではまだいっていない。
原田氏:働いている人は両立への不安があり、小さい会社はロールモデルがいないので不安があった。男性と比べて職務が限られている、補助的な仕事であることから不安や不満があり、キャリアが描きにくい。高校生から20代前半の女性は、子育てしながら働けるのかが不安との意見があった。

Q12:「地域研修」とあるが、地域住民を対象に男女共同参画に関心をもってもらうのは難しいのではないか。
宮崎氏:昨年度実施した研修「もやっと研修」を実施した。自分の中の「もやっと」を洗い出してみて、みなさんが、何に困っているのか、どういうことで悩んでいるのかを押し出すキャッチというのも工夫次第である。

Q13:豊岡市のように男女共同参画がたくさんある施策の1つではなく、重要な施策であるとするにはどうすればよいか。
原田氏:豊岡市は、まず地方創生から入っていて、人口減少にまずジェンダーギャップがあるのではないかという視点で取組を進めている。大規模災害、デジタル技術の発展、グローバル化の中で、今、ジェンダーギャップをなくしていくことは不可欠であると理念だけでなく、リアルな課題として伝えていく。企業の経営者などのトップに意識してもらうことが重要。内部向けにも無意識の偏見の研修もしている。キャリアデザインアクションプランという制度を作っていて、女性活躍から入ったが男女ともに必要ということで、演劇的手法を用いて他者理解・自己理解、ジェンダーバイアスに気づく研修を行っている。

Q14:不平も不満も言わない人の意見をどのように掘り起こしているか。
石本氏:避難所でなかなか声が聞こえてこない中で、なぜ女性の声をきいたかというと公の場では話ができない。1対1の場で話を聞く目的や使用について丁寧に説明した結果、話し始めるとどんどの出てくる。地域の女性たちの中では、だれがいるかわからないと何も言えない。回を重ねて、信頼できる仲間という意識ができてくると言えないことがでてくるので、場をつくることが大事と思う。

Q15:地元出身でない市民も多く、地域社会への参加も高くない。市民を巻き込んで男女共同参画を推進する場合、いかに巻き込むのかが悩み。
石本氏:東北は移住者が多く、活動が活発なのは移住者だったりする。その人たちにとって大事な話、興味のある話について、外からきた人を対象に情報交換する場をつくるとネットワークがだんだん広がっていくというのはあった。

Q16:社会教育分野の担当として男女共同参画の視点を生かしたまちづくりに関わる人材育成が大事だが、どのように“学び”をすればよいか。
宮崎氏:地方にいると学びたいけど学べないことが多い。NWECのYouTube動画などが専門的な話になる。インターネットを駆使して、
動画により学ぶ。

Q17:豊岡市は高校生にどのような呼びかけをしてワークショップが実施できたのか。
原田氏:高校生は、学校を回り、若い人が「未来のシナリオを描こう」というお願いをして、各学校から手を挙げてくれた人。20代の人は市内の学生や働いている人から希望を募った。

Q18:男性職員に育休を推奨しているが、男女共同参画室の目標のために取り組んでいると考えられている。どのように伝えれば、すばらしい取組ということを伝えられるか。
宮崎氏:身近で育休をとった男性がいれば、その効果を話してもらうことに効果がある。

Q:19:高齢世代の男女共同参画意識が低いが、どのような工夫をしているか。
石本氏:コロナ前は、「防災と女性」、「防災と人権と女性」の話をした。ストーリーだけではなく、グラフや数値で比べてみてどうかをはっきり見せると高齢男性などの納得材料になる。

<参加者へのメッセージ>

宮崎氏:【弱みを強みに】
 地域の津々浦々に男女共同参画のインフルエンサーを増やし、つながれば広がる。うちはだめなんだ、これができないだと嘆いてもしょうがない。弱い点は気づく点なので、前向きにとらえて進めていく。

原田氏:【ジェンダーギャップの解消は文化を時代に適 応させる未来に向けた取組】
 過去の地域社会のありようや人々の生活を否定するものではない。次世代によりよい未来を引き継ぐために、今までの価値観や固定観念を性別役割分担意識、暮らし方、働き方の文化を時代に合わせていく、アップデートしていく取組であると一人でも多く(の住民)が自分ごととしてとらえてほしい。

石本氏:【見える化と共有】
 男女共同参画も持続可能かどうかの視点はすごく大事である。今の女性が我慢する、意思決定に女性がいないなどのジェンダーギャップの問題は、次世代に渡していいのかという視点で(考えてみて)、そのまま渡してはいけないと思うのであれば何が課題かを可視化し、みんながわかるように見える化し、地域の人とどう共有していくかを考えることで、小さな一歩であっても数年後には大きな変化となる。長崎や豊岡のような取組をしていけば日本全国どんどん変わっていくと思う。

竹下氏:【まずは会話をしてみる。】
 今日の質問だけで全国の地域の課題が可視化されて、見えやすくなった。部署だけでなく、地域を飛び越えて横の連携もできるのではないか。

(11)参加者同士の意見交換(希望者のみ)

 トピックごとのグループディスカッションにより、参加者同士の情報交換をオンラインにより実施した。
1回目は「地域で根強く残る固定的性別役割分担意識の解消に向けての対応策」、2回目は「若年層への働きかけを進めるための対応策」についてグループで討議を行い、3回目は「地域における女性の意思決定への参画を進めるための対応策」について参加者全体で意見交換を行った。
 参加者からは、意見交換の機会が貴重であり、他の自治体やセンターの取組を知ることができて、大変参考になりよかったとの意見が多かった。

参加者からの感想

 参加者からは、「第5次基本計画、各省の最新の動向、ジェンダー×コロナの詳細な分析をとおして新たな知見を得ることができた」「世界や日本といった大きな単位から、各都道府県、市町村といった小さな単位まで、現状や課題を知ることができ、とても参考になった」「男女共同参画について、今知りたいと考えていた内容が全て網羅されており、PCを使用して職場で自分の都合に合わせて受講でき、繰り返し視聴ができる点がとても良かったと感じた。特に、一度の視聴でわからなかった部分を、繰り返し視聴して確認できる点と、視聴スピードを変更できる点が良かった」などの感想が寄せられた。

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