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実施報告

令和7年度「新たな課題に対応した課題別研修」①男女共同参画の視点による災害対応研修

開催期間:令和7年10月29日(水)〜12月3日(水) / 定員:300名

開催場所:オンライン /


研修ちらしおもて

研修ちらしうら

1趣 旨

 近年、気候変動に伴う災害は激甚化・頻発化しており、防災・災害対応の重要性はますます高まっています。災害弱者といわれる人々を取り残さず、男女共同参画の視点に立った適切な対応を行うには、平時からの多様な主体間の関係構築や防災教育による啓発等の取組が肝要です。
 本研修では、「フェーズフリー」の考え方を取り入れながら様々な事例を通して実践的に学び、男女共同参画の視点に基づく防災・災害対応に取り組める人材を育成します。

2テーマ

「気候変動と災害とジェンダー ~フェーズフリーな防災で災害リスクの増大に対応する」

3主 催

独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)

4後 援

内閣府男女共同参画局
内閣府政策統括官(防災担当)

5対象・定員

地方自治体(防災・危機管理担当部署、男女共同参画担当部署等)の管理職・担当職員
男女共同参画センター等男女共同参画施設の管理職・担当職員
地域防災関係者等 計300名

6実施期間

令和7年10月29日(水)~12月3日(水)

7方 法

オンデマンド配信動画視聴及びライブ配信

8参加費

無料(通信費は参加者負担)

9内 容

事前学習
(1)事前学習1「男女共同参画共通基礎講座」(希望者のみ・40分、15分×4)【オンデマンド】

 男女共同参画の基本的な考え方や、平時から社会的に脆弱な立場にある人々の人権を守る関連法制度について学び、災害時における対応力の強化に向けた基盤を築きます。

(2)事前学習2「災害対応力を強化する女性の視点」(70分)【オンデマンド】

 内閣府男女共同参画局が作成した「災害対応力を強化する女性の視点」実践的学習プログラムのうち、セッション1・2を視聴し、災害の各段階で男女共同参画の視点に立った支援を行う際のポイントや具体的な事例を学びます。

本研修
(3)オリエンテーション(15分)【オンデマンド】

主催者あいさつ  萩原 なつ子 独立行政法人国立女性教育会館 理事長
プログラム説明  独立行政法人国立女性教育会館事業課

(4)基調講演「気候変動による災害リスクとジェンダー課題」(60分)【オンデマンド】

 ますます激甚化する気候変動による災害リスクは、ジェンダー課題と切り離すことはできません。当事者の視点を大切にし、多機関連携を通じて男女共同参画を推進しつつ、防災・災害対応に取り組む意義を学びます。

講師 新田 英理子 一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク 理事・事務局長

(5)情報提供「男女共同参画の視点からの防災・災害対応」(20分)【オンデマンド】

 災害時に男女共同参画の視点に立った対応を行うには、平時からの備えが不可欠です。地方自治体等の防災・災害対応の取組について、「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」等を踏まえて学びます。

講師 藤田 昌子 内閣府男女共同参画局総務課 専門職

(6)講義1「災害ケースマネジメントの基礎と実践への第一歩」(30分)【オンデマンド】

 東日本大震災を契機に導入が進められてきた復興支援のあり方である「災害ケースマネジメント」について、その基本的な考え方や導入の必要性を理解し、先進的な取組事例を学びます。あわせて、導入にあたっての課題を把握し、実践への手掛かりとします。

講師 菅野 拓 大阪公立大学大学院文学研究科人間行動学専攻 准教授

(7)講義2「男女共同参画の視点による防災教育」(30分)【オンデマンド】

 学校における防災教育は、子どもたちの安全を守るだけでなく、家庭や地域の防災力向上にもつながる貴重な学びの場です。男女共同参画の視点を踏まえた防災教育の必要性や課題、展望等について理解を深め、実践に向けた足掛かりとします。

講師 諏訪 清二 兵庫県立大学 客員教授

(8)講義3「災害と多様な性」(30分)【オンデマンド】 

 従来の災害とジェンダーをめぐる議論では、性的マイノリティが災害時に直面する困難が見えづらくなっています。このような状況を踏まえ、多様な性について学んだ上で、包括的な支援のあり方について気づきを得ます。

講師 山下 梓 弘前大学男女共同参画推進室 助教
        岩手レインボー・ネットワーク 主宰

(9)事例報告「男女共同参画の視点に立った災害対応のために日頃からできる備え」(20分×2)【オンデマンド】

 災害による被害を最小限に抑え、男女共同参画の視点に立った対応を実践するためには、日頃の備えが不可欠です。発災直後からの迅速かつ適切な支援に向けて、地域で取り組むべきポイントを事例を通じて学びます。

①「防災分野への女性の参画促進」
報告者 小松 三剛 三重県四日市市危機管理統括部危機管理課 課付主幹

②「災害対応を支える関係機関の連携強化」
報告者 阿部 陽一郎 社会福祉法人中央共同募金会 参与

(10)情報交換会「災害時に困難を抱える子ども・若者・女性への対応」 (希望者のみ・90分)【ライブ】 11月11日(火)14:00~15:30

【Zoomミーティング(定員40名、希望者多数の場合は選考)】

 災害時に子どもや若者、女性が直面する困難について情報提供を受けた後、各参加者の地域における取組状況や課題等について情報交換を行い、新たな気づきを得ます。

情報提供者 千代木 ひかる 特定非営利活動法人日本NPOセンター 事務局スタッフ

10受講に必要な環境

・インターネットに接続できるパソコン(推奨)またはタブレット、スマートフォンが使用できること

[情報交換会に参加する場合]
・インターネットに接続できるパソコンまたはタブレット(スマートフォン不可)にwebカメラ・マイク機能があること(外付けも可)
・使用する端末に、最新版のZoomアプリがインストールしてあること
・通信が遅延、途切れることのない安定したネットワーク環境があること
・参加者1人につき1台端末があること
・話しやすい静かな環境があること

11申込方法等

(1)申込方法

・専用申込フォームからお申込みください。
*申込フォームの送信後、5分以内に申込完了の通知メールが届きます。届かない場合は、お手数ですが本件担当まで御連絡ください。
*同じメールアドレスで複数の参加者を登録することはできません。

(2)申込期間

令和7年9月3日(水)9:00 ~ 10月8日(水)16:00

(3)参加決定通知

・参加決定と受講案内は、申込時のメールアドレスに通知します。
・令和7年10月22日(水)を過ぎても連絡がない場合は、本件担当までお問合せください。

(4)キャンセル

・参加決定通知の送付後にキャンセルする場合は、必ず本件担当までメールにて御連絡ください。

(5)研修の流れ

12その他

(1)フォローアップ調査の実施

 令和8年3月頃に実施するフォローアップ調査に御回答ください。参加者のニーズや課題を今後の事業企画に反映するために、御協力をお願いします。

(2)広報

 ライブ配信プログラムにおいて職員が撮影した写真を、事業記録や広報(ホームページ、SNS、ちらし等)に使用することがあります。あらかじめ御了承ください。

(3)プログラムの変更・中止について

 感染症、気象状況、天災、官公庁からの指示、その他主催者が研修を安全かつ円滑に実施することが困難と判断した場合には、やむを得ずプログラム内容の変更または開催を中止する場合があります。なお、これらの情報は、随時当会館のホームページでお知らせします。

問合せ先

独立行政法人国立女性教育会館事業課
〒355−0292 埼玉県比企郡嵐山町菅谷728

電話 0493-62-6724(平日9:00~17:00)
E-mail ml.saigai@nwec.go.jp  *お問い合わせは原則としてメールでお願いします。

 令和7年10月29日〜12月3日の約1か月間、「気候変動と災害とジェンダー ~フェーズフリーな防災で災害リスクの増大に対応する」をテーマに、オンライン研修を実施し、全国の男女共同参画センター・地方自治体の職員、地域防災関係者ら500名が受講しました。
 本研修は男女共同参画の視点に基づく防災・災害対応に取り組める人材を育成することを目的としており、オンデマンド配信による事前学習や基調講演、情報提供、講義、事例報告に加え、ライブ配信での情報交換会など、多面的なプログラム構成となりました。

各プログラムの実施概要は以下のとおりです。

〈事前学習〉
①「男女共同参画共通基礎講座」(希望者のみ)

 事前学習教材として男女共同参画の基礎知識を学ぶ男女共同参画基礎講座を公開し、希望者約360名が受講しました。講座は、ジェンダー平等についての歴史的な変遷や主要なキーワードを解説する「ジェンダー平等とは」、男女共同参画社会の実現に不可欠な政治分野への女性の参画とその障壁等について解説する「政治分野における男女共同参画について」の2本、さらに、関連法令として、「刑法改正 性犯罪」「困難女性支援法」「配偶者暴力防止法」の3本を提供しました。

②「災害対応力を強化する女性の視点」

 内閣府男女共同参画局による学習プログラム「災害対応力を強化する女性の視点」を視聴して学び、「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」を参照しながら、自身の業務や活動に関連する場面での適切な対応を確認するワークを行いました。

〈本研修〉
基調講演「気候変動による災害リスクとジェンダー課題」

 一般社団法人SDGs市民社会ネットワークの理事・事務局長である新田英理子氏が、近年の気候変動による災害リスクの高まりを踏まえ、SDGsを気候変動対策や防災・災害対応にどのように活用できるかという観点から講演しました。はじめにSDGsの概要について説明があり、続いて、SDGsの視点から見た気候変動や災害リスク、さらにはジェンダー課題等について解説されました。新田氏は、SDGsの理念にもとづく市民や組織・機関等との多様な連携の促進が、円滑な災害対応に資するものになると呼びかけました。

基調講演「気候変動による災害リスクとジェンダー課題」画像

情報提供「男女共同参画の視点からの防災・災害対応」

 内閣府男女共同参画局総務課専門職の藤田昌子氏は、男女共同参画の視点を取り入れた防災・災害対応について、これまでの大規模災害時における自治体や民間団体の取組を例に、内閣府男女共同参画局作成の「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」をサブテキストとして参照しながら説明しました。藤田氏は「平時にできないことは災害時にはできない。平常時の組織体制や防災計画等に男女共同参画の視点を取り入れる必要がある」と強調し、ガイドラインの活用を呼びかけました。

情報提供「男女共同参画の視点からの防災・災害対応」画像

講義1「災害ケースマネジメントの基礎と実践への第一歩」

 大阪公立大学大学院文学研究科人間行動学専攻准教授の菅野拓氏は、東日本大震災以降に復興支援の在り方として広がっている「災害ケースマネジメント」について解説しました。現行の災害時対応では、平時に専門機関が担う業務を行政が行うことで混乱が生じていることや、支援制度の狭間で取り残される人たちが存在すること等を指摘し、被災者の個別のニーズに合わせた支援を多様な機関連携によって実現すべきであると強調しました。また、災害ケースマネジメントを機能させるには、マルチセクターでの連携を構築するとともに、平時から災害時を想定して仕組みを整えておくフェーズフリーの考え方が重要であると述べ、この点において、災害対応に男女共同参画視点を取り入れることと共通していると説明しました。

講義1「災害ケースマネジメントの基礎と実践への第一歩」画像

講義2「男女共同参画の視点による防災教育」

 兵庫県立大学客員教授の諏訪清二氏は、学校教育における現行制度上の防災教育の位置付けについて紹介した上で、防災教育は教科・領域を横断して取り込むことが可能であると述べました。さらに、防災教育に関する様々な事例を示しつつ、兵庫県明石市で自治体の男女共同参画部署と危機管理部署、教育委員会が連携し、小中学校で男女共同参画の視点を取り入れた防災教育が実施されている事例を取り上げ、関係機関それぞれが担う役割について説明しました。

講義2「男女共同参画の視点による防災教育」画像

講義3「災害と多様な性」

 弘前大学男女共同参画推進室助教の山下梓氏からは、まず多様な性に関する基礎知識が説明され、性的マイノリティの人たちの災害時の経験について、当事者の語りを通して現行制度における課題が示されました。また、性的マイノリティは自治体において要配慮者として十分に認識されていない現状が指摘され、性的マイノリティがどこにでもいる前提に立った制度設計や、誰もがアクセスしやすい支援の整備の必要性が示されました。山下氏は最後に、性的マイノリティの人たちを支援対象という視点のみでとらえることは当事者の主体性を損なうおそれがあるとし、多様な人々が支援者として地域コミュニティに参画することが、よりよい支援体制の構築につながると述べました。

講義3「災害と多様な性」画像

事例報告「男女共同参画の視点に立った災害対応のために日頃からできる備え」
①「防災分野への女性の参画促進」

 三重県四日市市危機管理統括部危機管理課付主幹の小松三剛氏は、四日市市における地域防災への女性の参画促進の取組について、「種まき・土壌づくり・開花・花を広げる」という植物の成長段階に例えながら、それぞれに対応する市の事業(人材育成、活躍の場づくり、現在の課題、今後の展望等)を紹介しました。また、四日市市では、男女共同参画計画に基づき危機管理部署と男女共同参画部署とが平時からの業務や事業での協力を通じて「顔の見える関係性」を構築していると述べ、防災・災害対応に男女共同参画の視点を取り入れるためには、平時から担当部局同士が関係性を築いておくことが重要であると強調しました。

①「防災分野への女性の参画促進」画像

②「災害対応を支える関係機関の連携強化」

 社会福祉法人中央共同募金会の阿部陽一郎氏からは、同法人が実施する災害時の被災地支援プログラムについて報告されました。募金を財源とした災害等準備金によるボランティア団体やNPOへの助成に加え、災害ボランティアセンターの運営や関係機関との連携促進を通じたネットワーク形成によって地域コミュニティの再興を支援していることが紹介されました。こうした取組により、単なる支援提供にとどまらず、被災地の自立的な復興や協働体制の強化にもつながっていることが説明され、さらに、男女共同参画の視点による支援活動を活発に行っている団体の事例が複数報告されました。

②「災害対応を支える関係機関の連携強化」画像

情報交換会「災害時に困難を抱える子ども・若者・女性への対応」

 ライブ配信で実施した情報交換会は、全国から44名が参加しました。講師の特定非営利活動法人日本NPOセンター事務局スタッフの千代木ひかる氏は、災害時には平時に行っていることしかできないと強調した上で、平時と災害時の連続性を踏まえて支援体制を検討・構築することが重要であると指摘しました。その後、千代木氏から災害時に子ども・若者・女性が抱える困難についての事例報告と問題提起を受け、参加者は小グループに分かれて意見を交わしました。勤務地域や所属、職位、年代等多様な参加者がそれぞれの立場から活発に意見を出し合い、多様な主体間の連携の必要性を再認識する場にもなりました。
 参加者からは「行政の男女共同参画部署やNPO法人の職員など、防災・危機管理部署での勤務で普段交流がない方々と意見交換ができ、知見が広がった」「子どもや若者、女性の災害時の困難はなかなか認識されにくい分野であることを再認識し、自分の立場で何ができるのかを考える機会になった」等の声が寄せられました。

情報交換会「災害時に困難を抱える子ども・若者・女性への対応」事例報告千代木氏による事例報告

情報交換会「災害時に困難を抱える子ども・若者・女性への対応」参加者の集合写真

参加者からの声

・防災には男女共同参画の視点が必要と考えてはいたものの、具体的にどのように取り組めば良いのかがわかっていなかった。多面的なテーマについて、具体的かつ実践的で幅広な知識を得られた。
・男女共同参画の基礎からきちんと学べたことは非常に有意義だった。男女共同参画セクターと防災・災害対応セクターとの連携の必要性も学べたので、今後の業務に活かしたい。
・防災・災害対応について様々な目線から知ることの重要性を再認識した。防災・災害対応は特別ではなく自分事であり、平時から災害を想定した心がけや制度設計が重要であると理解できた。

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