研修・イベント

研修

実施報告

平成30年度「企業を成長に導く女性活躍促進セミナー」

開催期間:平成30年10月17日(水)~18日(木)1泊2日 / 定員:80名

開催場所:国立女性教育会館


企業における男女共同参画の推進、女性の活躍推進を図るため、管理職、人材育成推進者、チームリーダーを対象とした研修を実施。

1.テ ー マ

人生100年時代の働き方と組織風土改革~女性活躍とその先を見つめて~
女性活躍推進法施行から3年、「女性の雇用拡大、女性が働きやすい環境づくり」に向け、多くの企業が取り組んでいます。人生100年時代を迎えた今、さらにその先を見据え、誰もが活躍できる職場環境に向け、組織風土改革・働き方改革のあるべき姿を考えます。

2.内  容

本セミナーは、企業における女性の活躍推進を図り、男女共同参画社会の形成に資するため、企業におけるダイバーシティ(女性の活躍促進)の推進者、管理職、リーダーを対象に実施します。基調講演、パネルディスカッションやグループワークで、参加者の直面する疑問や課題に向き合い解決の方向を探ります。
情報交流会では、参加者同士による情報交換やネットワークづくりの場を提供します。

3.主  催

独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)

4.後  援

厚生労働省、経済産業省(申請中)

5.会  場

1日目:放送大学東京文京学習センター
            東京都文京区大塚3-29-1    TEL:03-5395-8688
2日目:国立女性教育会館
            埼玉県比企郡嵐山町菅谷728   TEL:0493-62-6725

6.期  日

平成30年10月17日(水)~10月18日(木)1泊2日(日帰り参加も可能)

7.参 加 者

企業におけるダイバーシティ(女性の活躍促進)の推進者、管理職及びリーダー
(※)官公庁・独立行政法人の方も参加可能です。

8.定  員

80名

9.日  程

10.内  容

第1日 10月17日(水)                   【東京・茗荷谷会場】

(1)開会                             13:00~13:05
主催者あいさつ:内海 房子  国立女性教育会館理事長  

(2)基調講演「企業の経営戦略としての女性活躍推進」        13:10~14:40
女性活躍は企業の成長戦略に極めて重要です。これまでに企業のトップとして取り組んできた女性活躍や働き方改革を踏まえながら、その進め方や社員の意識変革についてお話しします。
講 師:松本 晃  RIZAPグループ株式会社 代表取締役COO

(3)パネルディスカッション「女性活躍推進と持続可能な成長に向けた取組とは」
                                  15:00~17:00
新・ダイバーシティ経営企業100受賞企業の女性活躍推進の取組について報告をいただくとともに、人生100年時代を見据えた未来に向けてのアクションと風土づくりなど、これからの新しい働き方について議論を深めます。
パネリスト:大澤 博明 カゴメ株式会社ダイバーシティ推進室課長
パネリスト:小谷 美樹 積水ハウス株式会社CSR部長
パネリスト:今野  均 株式会社ユーメディア代表取締役社長
コーディネーター:大槻 奈巳 聖心女子大学人間関係学科教授、キャリアセンター長

(4)1日目閉会(1日目のみ参加者アンケート記入及び回収)     17:00~17:10

(5)情報交換会(希望者のみ)                   19:00~20:30
全国からの参加者と交流し、参加者同士の情報ネットワークづくりを行います。

*情報交換会及び2日目の参加者はバスで国立女性教育会館へ移動(約90分)

第2日 10月18日(木)                  【埼玉・武蔵嵐山会場】

(6)情報提供「新入社員の意識調査から」               9:00~9:50
国立女性教育会館が平成27年から行っている新入社員の追跡調査をもとに、入社3年目にかけてのキャリア意識とその変化について紹介します。
講 師:島  直子  国立女性教育会館研究国際室研究員

(7)講義「アクションラーニング」                  9:50~10:40
21世紀型のリーダーシップ育成方法として注目され、リーダーに必要なコミュニケーション力養成に効果的なアクションラーニングを学びます。業務上で抱える問題について、対話を通じて解決するとともに、活気のある風土、自律型チーム、変革を生み出すリーダー育成に有効な学習方法です。
講 師:堀本麻由子  東海大学現代教養センター准教授

(8)グループワーク1                       10:40~12:30
グループに分かれて、参加者同士の背景や問題意識を共有し、実際の業務での問題を事例に、アクションラーニングに基づいたディスカッションを行います。

(9)グループワーク2                       13:30~15:15
引き続き、グループごとにアクションラーニングに基づいたディスカッションを行い、話し合ったことを発表して全員で共有します。

(10)閉会                             15:15~15:25
アンケートの記入及び回収    

11.申込方法等について

(1)申込方法
「平成30年度企業を成長に導く女性活躍促進セミナー」申込フォームよりお申込みください。

(2)申込期限   平成30年10月9日(火)正午 ※先着順

(3)参加決定
参加申込書記載の連絡先に電子メールにて、順次お知らせします。10月12日(金)までに通知が届かない場合は、お手数ですが事業課(Tel:0493-62-6724・6725)にお問い合わせください。

12.所要経費(金額はすべて消費税込)

(1)受講料    無料

(2)情報交換会費 3,500円(希望者のみ)
1日目のプログラム終了後、無料バスで国立女性教育会館まで移動します。会館到着後、夕食を兼ねた情報交換会を立食形式で行います。
※宿泊費及び情報交換会費は当日会館フロントで集金します。

(3)宿泊費   開催期間中は1泊1,200円

(4)食 事   会館レストランを御利用ください。
(朝食バイキング:870円、昼食カフェテリア形式:550円~)

13.その他

職員が撮影した写真を、事業記録や広報のために使用することがあります。あらかじめ御了承ください。
セミナー終了後3か月後を目途にモニター調査を行う予定です。その際には御協力いただけますようお願いいたします。

企業を成長に導く女性活躍促進セミナー報告

人生100年時代の働き方と組織風土改革~女性活躍とその先を見つめて~

 平成30年10月17日(水)~18日(木)に、企業におけるダイバーシティ(女性の活躍促進)の推進者、管理職、リーダーを対象とした「企業を成長に導く女性活躍促進セミナー」を開催し、企業関係者及び独立行政法人、地方自治体の担当者など全国から100名を超える参加者を得た。

【10月17日(水) 放送大学東京文京学習センター】
●基調講演

「企業の経営戦略としての女性活躍推進」          13:10~14:15
講師:松本  晃氏 RIZAPグループ株式会社COO
 松本氏がダイバーシティを進めるきっかけは「ダイバーシティをなぜやらないのか」という上司の一言であった。「世の中の半分は女性であるのに、なぜ女性を活用しないのか。」と改めて考え、柔軟に対応し実践した結果が今につながっている。
 戦前~終戦、戦後の高度成長期という時代の流れの中で、働き方や家族構成は変わった。労働時間が生産性に直結する時代が終わり、ベルリンの壁の崩壊とともに世界のルールが変わった。しかし、日本は世界のルールが変わったことに未だに気付かずにいる。「かつて幸せになるためにつくられたルールが、今はこの国の閉塞感を生んでいる」ということを言った政治家がいるが、まさに、この言葉の中にダイバーシティや働き方改革の原点がある。カルビーの成長は女性活躍のみが理由ではなく、古い仕組みと悪しき文化を同時に変えてきた結果である。既得権を持っているものからそれを奪うダイバーシティを進めるためには、トップのマネジメントが重要であり、自分は自ら既得権を捨て、個室も、接待費も、CEOの権限も委譲した。
 松本氏は「自分は成果主義者。フェミニストではない。」という。成果を出すために必要な環境を整え、制度を変え、女性の管理職登用を積極的に進めてきた。女性活躍は業績を上げるための手段であり、そのために働き方を変えることが必要であった。
 社員の働き方が変われば、一人一人の生き方が変わる。働き方への意識が変われば組織もよい方向へ変わり、一人一人の人生が豊かになる。働き方とダイバーシティは密接な関係にある。ダイバーシティを進めることがよりよい国の未来へとつながっていく。

基調講演

質疑応答

●パネルディスカッション

 「女性活躍推進と持続可能な成長に向けた取組とは」  15:00~17:00
パネリスト:大澤 博明 カゴメ株式会社ダイバーシティ推進室課長
パネリスト:小谷 美樹 積水ハウス株式会社CSR部長
パネリスト:今野  均 株式会社ユーメディア代表取締役社長
コーディネーター:大槻 奈巳 聖心女子大学人間関係学科教授、キャリアセンター長

(1)事例報告
1)聖心女子大学人間関係学科教授、キャリアセンター長 大槻奈巳氏

 冒頭、女性管理職登用についての2つの嘘があると指摘し、一つは「管理職に足りうる人がいない」というもの、もう一つは「女性が管理職になりたがらない」というものがあると指摘した。
 男女共同参画の視点から「女性活躍推進と持続可能な成長に向けた取組」について講義する中で、日本の現状を4つの観点(①生涯未婚率、②離婚の割合、③日本的雇用システム、④平均寿命)から解説し、激動の時代をどうやって生きていくかを考え、社会の構造を知る必要性を唱えた。
 その後、①男女共同参画の基礎知識、②なぜ女性は管理職になっていないのか、③女性活躍推進のためにと話を進めた。
 最後は、「真の女性活躍は、現在の男性の基準に沿って仕事をして管理職になることではなく、なぜ女性が活躍できないのかを考えることで男性の働き方や生き方を見直す機会とし、誰もが働きやすい仕組みに変えていくことが重要だ」と締めくくった。

2)カゴメ株式会社

 カゴメは、「トマトの会社」から「野菜の会社」を目指して成長戦略を描く中で、社員から役員まで各階層で女性比率を50%まで引き上げるという長期ビジョンを掲げ、3年の期限を設けてダイバーシティ推進室を発足させ、しくみと制度との両輪で風土改革を進めてきた。女性比率50%という数値については、世の中の男女比率が50%であることやカゴメの客層や株主の構成を考えての帰結である。現在の入社希望者数は女性が半数以上となっている。
 女性活躍推進は、現社長の強いコミットメントに基づくものであり、女性活躍が経営革新、風土改革をもたらすとの理念のもとにすすめられている。
 職員の自主的な姿勢を育てるため、女性管理職勉強会、次世代リーダー自主勉強会などが行われている。女性にとって働きやすい職場環境が、すべての職員にとって働きやすい職場環境となり、女性の意欲も向上してきた。
 今後は、女性にとって、従業員にとって働きやすい会社から働きがいのある会社をどう作っていくかということに向かって取り組みを進めていきたいとの展望を語った。

3)積水ハウス株式会社

 「積水ハウスの成長には女性が欠かせない」というトップのコミットメント、経営戦略としての女性活躍について述べられた。
 女性のキャリア促進の取り組みでは、2006年から採用の拡大がなされるなか、増えない女性管理職の課題を解決するため、経営視点を身に付ける研修と現場の課題を解決するための経験学習を2年がかりで行う(管理職育成カレッジ)などの紹介があった。
 また、働き方改革・両立支援に関連し、必要なものとして①本人の自立、②上司の意識改革、③会社の制度、④社会・家族の協力という4つの軸を挙げ、具体的な取り組みとして、イクメン休業(1ヶ月)や職種による制度の充実の話があった。

4)株式会社ユーメディア

 今野氏は「なぜ女性活躍推進・働き方改革に取り組んだのか」について、広告・印刷業(受託産業)を続けていく中で、古い慣習の残った会社が生き残っていくためには、業界の常識に縛られず変わっていかなければならなかったと語った。
 事実、業態の常として社のビルが不夜城と呼ばれた頃には、優秀な女性が成果もあげて仕事が楽しくなってきた時期に、人生のステージ変化に直面し、両立できず辞めていくといったことが続き、女性の勤続年数が4年という状況だった。危機感を感じた今野氏は、制度改革とともに風土改革に3年をかけて取り組んだ。
 具体的には、実績づくり(ロールモデル)、自発的な取り組み(新しい働き方委員会)を進めた。委員会に予算をつけ、自由にアイデアを出し合う自発的な場を設け、職員一人一人の定時退所日等を社内外に対し見える化し、メッセージを送り顧客への理解を進めるための取り組みを続けた結果、顧客を巻き込み地域を巻き込みながらの働き方改革を進めている。
 最後に、女性活躍を進める上では、トップと従業員双方の思いの共有と復帰する職員に対して「期待している」という強いメッセージを送ることが必要であると述べた。

(2)ディスカッション

 大槻氏のコーディネートのもと、松本氏の基調講演と3社の報告を踏まえディスカションが行われた。主な論点は次の通りである。

①基調講演の中で、「ダイバーシティを進めるためにはトップマネジメントが重要」とあったが、トップの関心がない場合、ダイバーシティを優先させるための方策・関係づくりをどうしたらよいか。
・ダイバーシティに知見のある社外取締役に勉強会講師として話をして頂いた
・社長自身が海外勤務経験により理解があった
・海外事例など先進的な取り組みのカスタマイズと情報収集とデータを活用し説得
・同じ熱量で推進してくれるリーダーの育成、仲間づくり

②「時間ではなく成果」というが「成果と報酬」はどう結び付けるのか。
・答えは持っていないが、最終的には生産性になると思う。
・目標管理をしっかり行う。育児中でも、能力に応じた目標設定。評価に影響が出ないようにしている。

③女性のための管理職研修などを行うことが男性に対する逆差別といわれないための努力と対応。
・ポジティブアクションのポスターを活用し、国の施策であることをアピールした。
・人事部長が女性本人に「あなたに期待している」と説得し、その上司・支店長を訪問し、「彼女はわが社の未来を拓く人材である」と伝えて理解を求めるなどきめ細やかな働きかけを一人一人に行った。
・上司同席で参加する研修の形態をつくった。
・自主勉強会という形態をとっている。風土づくりと次につなげるための仕組みづくりである。

④女性活躍を進めていくと広義のダイバーシティとなるが、女性活躍推進の先にあるものをイメージして取り組んでいるか。
・ダイバーシティは女性活躍すらできなければそもそもできないと考えている。
・ダイバーシティがイノベーションにつながると業績につながる。
・女性活躍推進は女性だけのためのものではなく、今後は介護を抱える職員や体調不良により制限のある勤務が必要な職員にも応用ができる。
・事例として女性活躍の成果が上がっていくと他の事例における多様性も進むと信じて取り組んでいる。

 最後に、女性活躍はダイバーシティの試金石の1つであり出発点であること、女性が活躍できる職場環境を整えることが、女性に限らず男性のさらなる能力発揮になることが指摘され、コーディネーターからは、ダイバーシティをやり続けること言い続けることの大切さを確認し、パネリストの強い熱量を感じながらディスカッションを終えた。

パネルディスカッション

●情報交換会

 国立女性教育会館に移動し、業種を越えたネットワークの構築と情報交換が進められた。情報交換会後も、宿泊棟ラウンジで和やかな雰囲気の中、社内の課題などについて話し合われた。

【10月18日(木)国立女性教育会館】
●情報提供

「新入社員の意識調査から」       9:00~ 9:45
講師:島 直子 国立女性教育会館研究国際室研究員
 平成27年に民間企業に入社した新規学卒者を、5年間追跡するパネル調査の第三回までの調査データに基づき、新入社員の初期キャリアにおいて最初に出会う上司が大きな影響を与えることや管理職志向に影響する要因の男女のちがいなどについて解説があった。
 その中で、女性は外からの働きかけにより大きく変わる傾向にあり、会社の風土、ワーク・ライフ・バランスのほか、上司からの働きかけがより重要であることについて触れ、女性の自己評価や自尊心が低いこととの関連が述べられた。
 また、本調査では、現在の仕事の満足度と仕事の将来性や期待とは関連性がないことも明らかになってきた。
 詳しくは、以下のサイトを参照されたい。

●講義「アクションラーニング」及びグループワーク

「誰もが活躍できる職場環境構築のために-リーダーシップのあり方とは—」
9:50~12:30、13:30~15:15
講師:堀本麻由子氏 東海大学現代教養センター准教授
 リーダーに必要なコミュニケーションスキルを学びながら、各々の組織が直面する課題について共有し、解決方策を探る三部構成のプログラムである。
 初めに堀本氏が、リーダーに必要なコミュニケーションスキルとしての「アクションラーニング」について解説。
 リーダーが解決策を示すのではなく、チームのメンバーから答えを引き出す姿勢に基づく技法であると説明した。
 次いで、参加者は7つのグループに分かれた参加者が、自己紹介と各自の抱えている問題を共有した。
その後、各グループ内で、午前午後と問題提供者を変え、アクションラーニング形式での話し合いを行い、問題の解決を図った。

●参加者からの感想

 「取組に成功した企業の経営者視点での考え方がよく理解できた。」
 「時代背景を考えると、女性が働かねばならなくなったのは必然であり、これまでが異常で、それが常識だと思い込んでいたために、正常に戻ることに非常に苦労しているだけだと考えている。」
 「社内にいると、いろいろと複雑に考えてしまいがちだけど、とてもシンプルな考え方・メッセージを教えていただいて、頭がスッキリしました。」
 「企業の取組を具体的に知る事が出来たので、非常に勉強になったが、働き方改革、そして生き方改革は、女性だけでなく、働く全ての人に関わっていくということの理解が深まった。」
 「様々な分野の企業でダイバーシティが進められていることを知りました。中小や零細企業まで広がり、認知されていけばいいと感じました。」
 「パネル調査自体、初めて知り、有益な内容だと感じた。管理職への意識と転職への意識の差は参考になった。」



 女性活躍推進・ダイバーシティという言葉がさまざまな場面でみられるようになり一定の浸透が図られていように見受けられるが、参加者のアンケートからは女性活躍推進・ダイバーシティの必要性といった根本的な部分や担当者が取り組みを進めていく上での悩みや課題は変わっていないことが垣間見られる。また、新たに女性活躍推進・ダイバーシティの担当者となった方の参加も多い。参加者の皆さんが本セミナーで得た知見やネットワークを活用して、社内の女性活躍の促進に取り組まれ、誰もが働きやすい企業が増えることを期待します。

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