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研修

実施報告

平成28年度「地域における男女共同参画推進リーダー研修<女性関連施設・地方自治体・団体>」

開催期間:平成28年5月25日(水) ~27日(金) <2泊3日> / 定員:120名


事業内容

地域の男女共同参画を積極的に推進するリーダーとして必要な専門的知識、マネジメント能力、ネットワークの活用等、高度で専門的な研修を実施。

1.テーマ

一人ひとりの女性が活躍できる社会を目指して~女性活躍推進と男性中心型労働慣行の変革~ 
                               
女性活躍推進のためには男性の働き方・暮らし方の見直しが欠かせないことから、第4次男女共同参画基本計画の柱として挙げられた「男性中心型労働慣行」について様々な角度から掘り下げ、働き方を変えていくために地域の男女共同参画リーダーがどのような取組を行ったら良いのか考えます。

2.本研修のねらい

  • 男女共同参画の視点を持ち、実態把握・課題分析を行い、実践に結びつけます。
  • 男女共同参画の中核となるリーダーの関係力・連携力の向上を図ります。
  • 実践事例を重視し、課題解決につなげます。
  • 研修の成果を地域に持ち帰って実践し、振り返り、さらなる事業や活動へ活かします。

3.主  催 

独立行政法人国立女性教育会館

4.共  催

NPO法人全国女性会館協議会(女性関連施設管理職コース)

5.期  日

平成28年5月25日(水)~5月27日(金) 〔2泊3日〕

6.定員

120名

7.参加対象者

地域の女性関連施設、地方自治体、団体等で男女共同参画推進リーダーとして実践的な取組を行っている方で、研修終了直後のアンケートと6か月後に実施するフォローアップ調査の両方を提出していただける方

(1)女性関連施設管理職コース:(50名)
公私立女性会館・女性センター、男女共同参画センター等、男女共同参画社会の形成に向けた拠点としての施設の管理職

(2)地方自治体職員コース:(40名)
都道府県・市区町村の男女共同参画推進責任者

(3)団体リーダーコース:(30名)
地域で男女共同参画を推進する団体等のリーダー

8.日程

9.内容

第1日 5月25日(水)

(希望者のみ参加)                       
プレ講義「男女共同参画の基礎知識」                (50分) 11:00~11:50
 主に初任者を対象として、日本における男女共同参画推進の歴史的背景など基礎知識を学びます。
 講 師:石崎 裕子   跡見学園女子大学観光コミュニティ学部准教授
             
1 開会                             (15分) 13:10~13:25
①主催者あいさつ  内海 房子   国立女性教育会館理事長
②共催者あいさつ  納米恵美子   全国女性会館協議会代表理事
③趣旨説明     中光 理惠   国立女性教育会館事業課専門職員       

2 基調講演「一人ひとりの女性が活躍できる社会を目指して~女性活躍推進と男性中心型労働慣行の変革~」
                                 (90分) 13:30~15:00
 平成27年12月に策定された第4次男女共同参画基本計画について、第3次計画までの振り返りを踏まえて学びます。中でも、第4次計画の第1項に挙げられている「男性中心型労働慣行の変革と女性の活躍」についてのポイントと今後の方向性を知り、男女共同参画を推進するための方策について考えます。
 講 師:鹿嶋 敬   一般財団法人女性労働協会会長
            内閣府男女共同参画社会計画策定専門調査会会長

3 報告「男女共同参画社会に向けた今日の政策課題」         (90分) 15:20~16:50 
 男女共同参画や女性活躍の促進に向けた施策についての説明と今後の方向性について理解を深めます。
 講 師: 岡田 恵子   内閣府男女共同参画局総務課課長
 講 師: 高橋 雅之   文部科学省生涯学習政策局男女共同参画学習課課長
 講 師: 阿部 知康   農林水産省経営局就農・女性課女性活躍推進室環境整備班課長補佐
 講 師: 岸田 京子   厚生労働省雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課課長補佐

4 報告「CSW60(第60回国連婦人の地位委員会)参加報告    (30分) 17:00~17:30
 3月にニューヨークの国連本部で開催された、第60回CSWでの議論や合意結論について報告します。
 報告者: 越智 方美   国立女性教育会館研究国際室専門職員
      中光 理惠   国立女性教育会館事業課専門職員
  
5 情報交換会(希望者のみ参加)(有料1,000円)           (60分)  19:30~20:30
 全国からの参加者と交流し、情報交換やネットワークづくり等、今後の活動に役立てます。

第2日 5月26日(木)

6 情報提供「NWECの事業展開について」               (40分)   9:00~9:40
①情報事業について  
 女性アーカイブ展示や女性デジタルアーカイブシステムなど、NWECの情報事業や機能について詳しく説明します。
 説 明: 山崎 裕子   国立女性教育会館情報課係長(併)専門職員
②調査研究事業について
 地方自治体や女性関連施設が実施する女性の活躍支援についての調査研究結果を報告します。
 説 明: 飯島 絵理   国立女性教育会館研究国際室研究員
③研修事業について
 平成28年度の研修事業計画について説明します。
 説 明: 櫻田今日子   国立女性教育会館事業課課長
 
7 座談会「男女共同参画の視点から働き方改革について考える」    (120分) 10:00~12:00
 女性が活躍できる社会を実現するためには、「男性の暮らし方・働き方」の見直しが欠かせません。男女共同参画の視点から、「働くこと」について考え、男女ともに働きやすく暮らしやすい社会にするためにはどのようなことが必要か、理解を深め合います。
 講 師: 安齋 徹    群馬県立女子大学国際コミュニケーション学部教授
              キャリア支援センター副センター長
 講 師: 関根 紀子   サイボウズ株式会社執行役員カスタマー本部長
 進 行: 内海 房子   国立女性教育会館理事長

8 分科会Ⅰ(テーマ別)                      (150分) 13:30~16:00
 「働くことをめぐる課題に迫る」
 参加者が関心のあるテーマ別に集まり、「働く」をキーワードにそれぞれのテーマにおける課題や連携の仕方について考えます。

A 「男性中心型労働慣行の改革とワークライフバランス」
 男女共同参画の推進には、働き方、暮らし方の見直しが不可欠です。第4次男女共同参画基本計画でも重要とされている男性中心型労働の改革に向けて積極的な事業を展開されている21世紀職業財団の取組から考えます。
     講 師 : 髙松 和子   公益財団法人21世紀職業財団理事・事務局長
 ファシリテーター: 佐伯加寿美   国立女性教育会館事業課専門職員

B 「学校教育と連携して実施する若年層へのキャリア教育」
 男女共同参画の視点は、子どもの頃から培っていくことが重要です。そのための学校教育と連携した男女相互の理解や生涯を見通したキャリア教育について内容や連携の仕方などについて考えます。
      講 師: 真下 峯子   大妻嵐山中学校・高等学校校長
 ファシリテーター: 小井川 聡   国立女性教育会館事業課専門職員

C 「女性の働き方と非正規労働をめぐって」
 女性の活躍を阻む男性中心型の働き方の問題と女性の非正規雇用の問題は表裏一体です。非正規雇用で働く女性への支援について、女性関連施設、地方自治体、団体それぞれの立場から考えます。
      講 師: 藤原 千沙   法政大学大原社会問題研究所教授
      報 告: 植野 ルナ   男女共同参画センター横浜事業課課長
 ファシリテーター: 岸上 真巳   一般財団法人大阪市男女共同参画のまち創生協会
                   企画調整課チーフ                

9 全体会Ⅰ                             (40分) 16:20~17:00
 分科会Ⅰで話し合われたテーマごとの報告をいただき、全体で共有します。
     A 報告者: 髙松 和子  公益財団法人21世紀職業財団理事・事務局長
     B 報告者: 真下 峯子   大妻嵐山中学校・高等学校校長
     C 報告者: 植野 ルナ  男女共同参画センター横浜事業課課長
 コーディネーター: 西山恵美子  国立女性教育会館事業課客員研究員

(希望者のみ参加)                          (30分) 17:20~17:50
 女性教育情報センター見学
 男女共同参画及び、女性・家庭・家族に関する国内外の広域的、専門的な資料・情報を有する女性教育情報センターを見学し、その活用法を詳しく説明します。
 案内: 国立女性教育会館情報課

10 自由交流(希望者のみ参加)                    (90分) 19:30~21:00
 参加者がテーマごとに集い、情報交換や交流を行います。
(このプログラムを希望する方は参加申込書の所定欄に希望テーマを選択し、記入してください。)
〔テーマ〕「意思決定の場における女性の参画」「女性に対する暴力」「女性と防災」「男性視点から見た男女共同参画」「多様な分野との連携」

第3日 5月27日(金)

11 分科会Ⅱ(コース別)                     (150分) 9:00~11:30
 「働くことをめぐる課題の解決方法を探る」  
 分科会Ⅰを踏まえ、コースごとに事例報告に基づくグループワークを行い、実践に役立つ力を身につけながら、支援や解決の方法を考えます。

 A 女性関連施設管理職コース 「女性活躍推進と第4次男女共同参画基本計画」
 第4次男女共同参画基本計画では、男女共同参画センターに対して、地域における女性の活躍推進の人材発掘・育成の拠点としての役割を果たすことを要請しています。事例報告を参考に、これまでの枠にとらわれない新たな事業展開について考えます。
      報告者: 牛井渕展子   仙台市男女共同参画推進センターエル・ソーラ仙台
                   管理事業課管理事業係長
      報告者: 松谷 順子   神奈川県立かながわ男女共同参画センター参画推進課課長
 ファシリテーター: 今井まゆり   公益財団法人京都市男女共同参画推進協会事業企画課課長
   
 B 地方自治体職員コース 「女性活躍推進に向けた横断的な連携」
 地域における男女共同参画を戦略的に推進するためには庁内外での横断的な計画や取組が不可欠です。庁内の他部署や外部組織との有効的な連携について考えます。
      報告者: 吉武 和子   山口県農林水産部審議監 農山漁村・女性対策推進室長
      報告者: 光藤 伸史   岡山市市民協働局女性が輝くまちづくり推進課課長
 ファシリテーター: 萩原なつ子   立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授
   
 C 団体リーダーコース「地域がもたらす組織の活性化」
 組織の基盤として重要な人材養成や外部との連携について、社会貢献、キャリア、職場などのさまざまな団体の側面に焦点を当てながら考えます。
      報告者: 森 豊吉    一般社団法人参画社会地域フォーラム代表理事
           鈴木多美江   一般社団法人参画社会地域フォーラム参与
      報告者: 伊藤 友江   NPO食と農のまちづくりネットワーク理事長
           久保田美栄子  NPO食と農のまちづくりネットワーク副理事長
 ファシリテーター: 引間 紀江   国立女性教育会館事業課専門職員
 
12 全体会Ⅱ                            (35分)  11:50~12:25
 分科会の報告内容や、話し合われた課題や解決法についてファシリテーターから発表し、全体で共有します。
     A 報告者: 今井まゆり  公益財団法人京都市男女共同参画推進協会事業企画課課長
     B 報告者: 萩原なつ子  立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授
     C 報告者: 引間 紀江  国立女性教育会館事業課専門職員
 コーディネーター: 西山恵美子  国立女性教育会館事業課客員研究員

13 閉会                             (10分) 12:25~12:35
 アンケート記入

10.申込方法・期限

(1)方  法  
 ①電子メール:国立女性教育会館事業課(progdiv@nwec.jp)へ、参加申込書と実情・工夫等を添付してお申し込みください。
 ②郵送:国立女性教育会館事業課までお申し込みください。

(2)申込期限  平成28年5月11日(水)(先着順)

(3)提出書類  「参加申込書」(別紙1)、「実情・工夫等」(別紙2)

(4)参加通知  別紙1記載の連絡先に文書によりお知らせします。
 5月18日(水)までに連絡が来ない場合は、お手数ですが、事業課(電話:0493-62-6725)までお問い合わせください。

11.所要経費

(1)参 加 費  無料

(2)宿 泊 費  研修期間中は1泊1,200円(前・後泊も1泊1,200円)

(3)食  費  1日3食 2,500円程度

(4)情報交換会費 1,000円(1日目の夕食後に行います。飲み物、お菓子、消費税を含みます。)

12.その他

(1)研修期間中に職員が撮影した写真を、事業記録や広報のために使用することがあります。あらかじめご了承ください。

(2)研修期間中、参加者の所属する施設や団体、地方自治体等のパンフレットやチラシなどを自由に交換できる情報交換コーナーを設置します。お持ちになった資料を自分で所定の場所に並べ、参加者の方に資料を自由にお持ち帰りいただけるコーナーです。

(3)研修終了6か月後を目途にフォローアップ調査を実施いたしますので、ご提出ください。

5月25日(水)~27日(金)に、「一人ひとりの女性が活躍する社会を目指して~女性活躍推進と男性中心型労働慣行の変革~」をテーマに、女性関連施設の管理職、地方自治体の男女共同参画推進責任者、地域で男女共同参画を推進する団体リーダーを対象とした研修を開催し、全国から159名の参加を得た。

主催者挨拶 内海房子NWEC理事長主催者挨拶 内海房子NWEC理事長

共催者挨拶 納米恵美子全国女性会館協議会代表理事共催者挨拶 納米恵美子全国女性会館協議会代表理事

1日目の基調講演は、鹿嶋敬氏(女性労働協会会長)から、第3次計画までの振り返りを踏まえ、第4次計画の重要点についてお話をうかがった。

鹿嶋氏

「男女共同参画の視点」」が、女性活躍推進法や地方創生など他の政策にも盛り込まれるようになったことは、男女共同参画行政にとって大きな進歩であること、「男性中心型社会の変革」を全分野全施策に横断的に盛り込んだことが第4次計画の特徴であること、「男性中心型労働慣行」の根底には「固定的性別役割分担意識」があることなどが解説された。第4次計画では、「固定的性別役割分担意識のない社会」を「男女が自らの意思に基づき、個性と能力を十分に発揮できる社会」と表記し、自分で判断するという部分を強調。また、「女性活躍推進」は男女共同参画社会を形成するための大変有効な手段ではあるが、その位置づけとしては、あくまでも「男女共同参画」が上位に来ることが確認された。他に、「同一価値労働同一賃金と同一労働同一賃金」や「ワークライフバランス」「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」などについても言及され、育児や介護をしながらキャリア形成していくための就業継続や人材育成の支援の重要性についても述べられた。最後に、これからは自らの意思を持って生きること、働くことが重要であり、そのためには「自らの意思をもつための教育」こそが大切であるとの言葉で講演を結ばれた。

 続いて関係府省の施策説明。内閣府からは、今年度の重要方針として、多様な働き方・女性起業の支援強化・地域での活躍などの解説や概算要求について、文部科学省からは「学び」を通じた社会参画、特に若い世代向けのワールドカフェやワークショップの資料を用いた取組について、農林水産省からは第4次計画の農山漁村分野と女性の参画による利益率の上昇などの解説と、家族経営協定や農業女子プロジェクトについて、厚生労働省からは「女性活躍推進法」の各企業の計画策定状況や、情報公開の場としての企業データベースや認定制度「えるぼし認定」についての説明があった。

1日目の最後は、NWECからの「CSW60参加報告」。3月にニューヨーク国連本部において行われた「国連婦人の地位委員会(CSW)」での優先テーマや合意結論、「持続可能な開発目標(SDGs)」、サイドイベントなどについて報告があり、国際的な動向と日本での取組は関連していること、国の政策だけでなく市民活動とも大きくつながっていることを確認した。

 夕食後の情報交換会は、参加者、講師、職員が一堂に会し、地域や所属を超えた様々な情報交換がなされ、新たなネットワークを築く場となった。



 2日目の冒頭はNWECからの情報提供として、情報課から女性情報センターやアーカイブセンターの利用の仕方について、研究国際室から女性の活動支援に関する調査研究について、事業課からは今年度の事業計画の概要が伝えられた。

座談会

続いて、「男女共同参画の視点から働き方改革について考える」と題して、多様な働き方に向けた取組を積極的に行っている企業から、関根紀子氏(サイボウズ株式会社カスタマー本部長)と、ワークライフバランスや社会デザインを研究されている安齋徹氏(群馬県立女子大学教授)を迎え、内海房子NWEC理事長のコーディネートで座談会を行った。
 お二方自身のキャリアについてのお話に続き、安齋氏は、仕事、個人、社会のバランスをとっていくこと、またその3つが影響しあい、重なり合う部分が大きくなっていくことが「働き方改革」であると伝えた。一方、関根氏は、「チームワーク」をキーワードに、社員からの意見に耳を傾け、新しい制度を試験運用しながら良いものは残していくようにしてきたことなどを語った。そして、育児だけでなく介護のためにも、風土、制度、ツールすべての面からの働き方改革と、多様性を認める社会、長時間労働のない社会を創ることが必要との認識がパネリストと参加者の間で共有された。

高松氏

2日目午後と3日目にかけては、実践力を高めることを目的とした分科会が行われた。分科会Ⅰでは、3つのコースに分かれ、事例報告を基にしたグループワークを通じ、様々な立場から意見交換や課題の共有を行った。
 分科会ⅠAは、「男性中心型労働慣行の改革とワークライフバランス」。髙松和子氏(21世紀職業財団事務局長)が講義とグループワークを進めた。高松氏からは最近の企業の取組傾向として、柔軟な働き方の導入、業務改革、職場風土の改革が挙げられるが、地道に続けていかなければ働き方を変えることは難しいこと、ワークライフバランスの意味を誤解すると職場が崩壊する危険があること、ワークライフバランスの好循環が生産性をもたらすことなどが解説された。グループワークでは、情報共有のための工夫やコミュニケーションを重視した職場の風土づくり、休暇の計画取得とそのマニュアル作り、研修機会の平等化、業務の見える化、他社データを見える化し、上司の意識改革、などの方策が出された。

分科会ⅠBは、「学校教育と連携して実施する若年層へのキャリア教育」。講師の真下峯子氏(大妻嵐山中学校・高等学校校長)が、これまでの教員としての経験をもとに、世界とつながる科学する力・表現する力といった子どもたちが持つべき力とそれを身につけるための方法、学校としての課題を解説した。グループワークでは、教員の資質向上やアプローチの仕方、PTAや自治体、地域を巻き込んだ取組、そのためのキーパーソンの発掘、学校側の窓口の明確化、教員対象の男女共同参画研修の必要性、キャリア教育は職業教育のみでなく生きる力として消費者教育、食育・防災教育・平和教育も含めて取り組んでいくべき、などの意見が出された。

藤原千沙氏

分科会ⅠCは、「女性の働き方と非正規労働をめぐって」。植野ルナ氏(男女共同参画センター横浜事業課長)からの非正規シングル女性を対象にした調査報告の続き、藤原千沙氏(法政大学大原社会問題研究所教授)が、「不本意非正規」についてなどの講義を行った。グループワークでは、岸上真巳氏(大阪市男女共同参画のまち創生協会企画調整課チーフ)のファシリテートで、ハローワークへつなげるケア、土日に行政の窓口対応、企業経営者へのアプローチ、シングル壮年女性向け講座の工夫など、のキーワードが提示された。

その後の全体会Ⅰでは、それぞれの分科会の内容が共有され、髙松氏からは、「働き方改革は個人ではなく組織で取り組まなくては解決しない。経営陣への外圧も必要。」真下氏からは、「女子中高生が理系のスキルを身につけることは職業選択の幅を広げる。勤労意識の醸成など学校以外の場でも力をつけさせ、失敗経験から学ぶことも伝えていきたい。」植野氏からは、「働いても貧困から抜け出せないことは個人の問題ではなく、構造的な問題がある。労働問題として捉え、社会的包摂、サステナブル社会の意識も必要。」とのコメントが出された。

牛井渕・松谷氏3日目は、コース別の分科会Ⅱ。女性関連施設管理職コースのテーマは「女性活躍推進と第4次男女共同参画基本計画」。牛井渕展子氏(仙台市男女共同参画推進センター管理事業課係長)から、東日本大震災の経験と反省から設立された事業である「女性リーダートレーニングプログラム」についての報告があった。松谷順子氏(かながわ男女共同参画センター参画推進課長)からは、県知事と県内企業のトップが女性活躍のための応援団を組織し、冊子、CMなどのPR活動を展開する「Women Act.」について報告がなされた。

地方自治体管理職コースのテーマは「女性活躍推進に向けた横断的な連携について」。吉武和子氏(山口県農林水産部審議監)から、県の男女共同参画推進本部の存在の意義と、農林水産部独自でビジョンの策定や農山漁村女性の起業支援として県が商標登録しブランド化することなどで地域の活性化にもつながった取組について報告された。<写真左下>光藤伸史氏(岡山市市民協働局女性が輝くまちづくり推進課長)からは、市長が「輝く女性の活躍を加速するリーダーの会」最初の首長として加入するなど、トップの本気度、教育委員会との連携により義務教育への男女平等教育指導が行われたこと、審議会のクオータ制が導入されたことなどが報告された。<写真右下>

団体リーダーコースのテーマは「地域がもたらす組織の活性化」。埼玉県川越市の参画社会地域フォーラムの森豊吉氏と鈴木多美江氏から、自治体への持ち込み講座や次世代メンバーの育成や団体内の人材育成などを主体的に実施し、県のセンターで新しいプログラムを発表した取組が報告された。<写真左下>長野県上田市の食と農のまちづくりネットワークからは伊藤友江氏と久保田美栄子氏が、小規模農家と共に生きる地域づくりのテーマで、ファーマーズマーケットやコミュニティレストランを作りたいという思いから「コラボ食堂」を運営しており、日替わりシェフとして女性の起業にもつながる活動をしているとの報告がされた。<写真右下>グループワークでは人材育成、新事業展開、他との連携、組織の基盤強化などに分かれて活発に話し合いを行った。

最後の全体会Ⅱでは、3つのコースのファシリテーターから各分科会の報告と解説があった。女性関連施設管理職コースの今井まゆり氏(京都市男女共同参画推進協会企画課長)から、グループワークで、人材育成の取組を考え、商工会議所との協働、センター主体のメンター育成、地元で活躍する女性の発掘などが挙げられたとの報告があった。地方自治体コースの萩原なつ子氏(立教大学大学院教授)からは、庁内外での連携・協働をテーマに、ワールドカフェ形式でグループワークを実施し、他との連携以前に今の部署での連携が大切であること、情報発信は積極的に行い、自ら他部署へ出向くことなどコミュニケーションの重要性が挙げられたとの報告があった。団体リーダーコースの引間紀江(NWEC事業課専門職員)からは、団体内での人材育成に悩むケースが多く、問題を課題に変えて、解決策を模索し、課題解決には、周りを巻き込む覚悟が必要であり、自分から一歩踏み出す、社会とつながることが大切との報告があった。最後に総括として、コーディネーターである西山恵美子(NWEC事業課客員研究員)から、3つの分科会での共通点として、「人材育成」「人材発掘」「連携・協働」が見えてきた。つながりをどう作っていくのかということに関して、異業種と連携することによって新たな気づきや相乗効果が期待できること、女性活躍の波が来ているので、質と量が高い連携を作り上げること、情報発信、情報共有の仕方、相互理解が大切であり、まず「連携・協働」ありきではなく、「男女共同参画推進の大変有効な手段としての認識を持って進めていこう」との言葉で3日間の研修を締めくくった。

参加者からは、「改めて第4次計画を学び、取り組むべき方向性が見えた」「過去からの流れと現在の女性活躍との関連性を系統立てて学ぶことができた」「施策の動向から具体的事例まで総合的に理解を進められた」「基本的事項から現状の課題まで、幅広く習得することができ大変有意義だった」などの感想が寄せられた。

4府省の施策説明資料は以下からダウンロードできます。

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